総合マーケティングビジネスの株式会社富士経済が、コロナ禍に医療機関の受診控えなどを経験したことで、自身の健康を自分でケアする意識が浸透しつつあることから拡大する、セルフヘルスケアの関連市場を調査した。その結果を「2023 セルフヘルスケア市場の有望コンセプト最新トレンドデータ」にまとめた。この調査では、ヘルスケアを目的とした一般用医薬品・医薬部外品、健康・機能食品 、化粧品、生活用品、機器・その他用品、サービスなどの市場を、肌ケアや疲労回復など20のコンセプト別に分析した。
<調査結果の概要>
コロナ禍に、医療機関の受診を控えざるを得なかったことなどで、ちょっとした不調であれば自分自身でケアをするセルフヘルスケアの意識が浸透しつつある。また、高齢化や医療の進歩などにより医療費が増加しており、医療機関での治療からセルフヘルスケアへのシフトも求められている。
2023年のセルフヘルスケア市場は6兆8,930億円が見込まれる。コンセプト別には、肌ケア、疲労回復関連が1兆円を超えており、次いで、ダイエットや生活習慣病対策などの規模が大きい。睡眠関連、メンタルヘルスケアはコロナ禍の影響で大きく拡大しており、高齢化の影響などから尿トラブル対策、認知機能サポートなども伸びている。
セルフヘルスケア4の浸透が進展することで今後も市場は拡大していくと予想される。また、現状では健康状態を分析し、その結果を活用する製品・サービスなどの認知度が低いが、フェムテックやスリープテックなど、X-Tech(クロステック)による可視化とそれに紐づくサービスの提供などを進める企業が増えており、将来的な市場拡大への寄与が期待される。
疲労とは心身に過度な負担がかかり、身体が休息を求めている状態であり、心身の回復を訴求した食品やサプリメント、ドリンク剤(一般用医薬品・医薬部外品)、マッサージ器などの家電や回復グッズ、マッサージサービス、温浴施設を対象とした。
セルフヘルスケアを実施している人が多く、市場は1兆円を超えている。2020年は新型コロナウイルス感染症による外出自粛の影響により大きく縮小したが、2021年、2022年と復調しており、2023年の市場は1兆1,771億円が見込まれ、コロナ前の水準まで戻るとみられる。
マッサージサービスや温浴施設などといったサービスの比率が高く、手軽に利用できる疲労対策として定着している。
食品やサプリメント、ドリンク剤の規模も大きく、エナジードリンクが堅調である。滋養強壮訴求のサプリメントは需要開拓が一巡し、ユーザーの高齢化が進んでいることから、若年層の開拓に向けた取組みが必要となっている。
生活用品は自宅で利用しやすい温熱シート・パッド、足用シート、冷却関連用品などシート系の製品が充実している。マッサージ器、フットマッサージャーなどの機器は市場が成熟しているが、コロナ禍で部屋の中での利用ニーズが拡大したことを背景に市場は拡大している。
睡眠の質の向上を訴求した製品やサービスを対象とした。不眠の症状に効果のある催眠鎮静剤、睡眠のサポートを訴求したサプリメント・食品・ドリンク類のほか、温熱シート・パッド、鼻腔拡張テープ、マットレスや枕など寝具類、スマホアプリを用いた睡眠改善支援サービスなどを含む。
2015年に機能性表示食品制度が開始され、“睡眠の質を高める”というヘルスクレームの表示が可能となったことで市場が活性化し、コロナ禍でストレスや睡眠に関する悩みの増加に合わせて、ヤクルト本社「Yakult1000」が爆発的にヒットした。睡眠関連市場は2022年に入ってさらに注目度が高まり、食品メーカーをはじめさまざまな企業が参入し、新規ユーザーを獲得していることから市場は大きく伸びている。
機器・その他用品に含まれる寝具では、コロナ禍によるイエナカ時間の増加でこだわる人が増え、単価の高い機能性マットレスや枕の需要が増加している。マットレスは製品機能の科学的な裏付けや有名スポーツ選手を起用したことによって成長しており、枕は個人の寝る姿勢に応じて材質、形状、高さなどが選択できる機能性枕が人気となっている。
サービスについては、睡眠改善支援サービスに加え、ITやAI技術を活用し、センサーやアプリで生体活動データの収集や睡眠状態を分析し、睡眠の質の改善を目指すスリープテックの活用が期待される。寝具、空調、家具、照明、オーディオなどと連携し、光・温度・音を調整することで睡眠の質を改善する製品・サービスなども登場しており、今後技術の進歩とともに成長が加速することが期待される。