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生物由来有用成分・素材35品目の国内市場、14.7%増で2,961億円【富士経済】

マーケット調査会社・富士経済が、複雑な現代社会を背景にメンタルケアや睡眠の質改善、脳機能改善、フェムケアなど、様々な機能訴求のエビデンス研究やヘルスクレームを活用した製品提案が活発化する生物由来の有用成分・素材の国内市場を調査した。この調査では動物系15品目、植物系14品目、合成系6品目の合計35品目の機能性成分・素材について市場の現状を捉え、将来を予想するとともに、今後需要の増加が期待される注目素材15品目の動向についても取り上げた。さらに機能性素材100種類についての認知度や使用経験、効能の実感について消費者アンケートを行った。

富士経済グループ公式サイト:https://www.fuji-keizai.co.jp

<注目市場>

整腸作用や血糖値上昇抑制、血中中性脂肪低減などの訴求機能を有する水溶性食物繊維であり、2017年頃から機能性関与成分への採用が進み市場が拡大してきた。消費者の健康志向の高まりが追い風となり、2020年以降も毎年二桁増が続いている。2022年も“コロナ太り”を気にする消費者の増加で糖質オフニーズがより高まっていることや、便通改善や感染症への備えとして腸活への関心が高いことを受けて機能性表示食品の届出が大幅に増加しており、市場は拡大が続くとみられる。
一般加工食品への採用が多いが、近年はイヌリンの粉末をリパックした商品も好調であり、健康意識の高い消費者のニーズを獲得している。
参入メーカーがイヌリンの普及に向けて啓発活動を行っていることや世界的な需要増加を受けて生産能力を増強するケースがみられることから今後大幅な伸びが期待される。

乳酸菌やビフィズス菌、納豆菌、酪酸菌など、生理機能が確認され機能性素材として展開されているものを対象とする。機能として便通・便性改善や腸内環境改善による免疫機能調整・向上、アレルギー症状改善、メンタルケア、歯周病予防、口臭ケアなどが確認されている。
既に健康素材としての地位は確立されているが、新型コロナウイルス感染症の流行により体調・免疫サポート機能が大きく注目された。キリンホールディングスが「プラズマ乳酸菌」の外販を本格的に開始しており、大手菓子メーカーなどが採用していることで今後の市場拡大に貢献すると期待される。近年はうつ病の改善に関する研究が進んでいるほか、認知機能への影響や抗ストレス効果など、時代のニーズにあった新たな機能性に関するエビデンスが充実している。用途が広がることにより市場はさらに拡大していくと予想される。

●エクオール【植物系】
 スーパーイソフラボンとも呼ばれる大豆イソフラボンに由来する成分である。女性ホルモンに似た働きを持ち更年期症状の改善や骨粗しょう症の予防などが主な機能である。近年フェムケア(女性の体や健康のケアに関連する商品やサービス)のニーズが高まり市場拡大の追い風となっている。更年期でも働き続けるライフスタイルが定着し、こうした女性の生活をケアする素材として注目度が高い。多くの女性が直面する悩みに訴求する素材であるため、認知が進むことにより安定した需要を獲得すると期待される。

●乳タンパク 【動物系】
 主体のスポーツニュートリション用途に加え、加工食品の物性改良やタンパク高配合用途の乳タンパクを対象としている。近年は健康維持に欠かせない栄養素としてタンパク質への注目度が高まっている。
 プロテインパウダー向けはトップアスリートの需要開拓が進んでおり今後成長は鈍化するとみられるが、新型コロナ流行の影響で外出機会が減り、自宅でのトレーニングが広がったことでボディメイク目的での需要が増加している。また一般加工食品でもタンパク質高配合の商品が増加している。
 大半を輸入品に依存しているため、2020年頃から物流遅延や原油価格の高騰、円安の影響を大きく受けて価格が高騰している。2022年の市場は数量ベースでは前年比5%程度の伸びであるのに対し、金額ベースでは前年比35%以上の伸びが見込まれる。販売価格の引き上げによる採用減や他素材への切り替えが懸念材料である。
 今後、原料価格が下がることで市場は短期的には微減に転じると予想される。しかし、スポーツニュートリション用途で安定した需要があることやボディメイク目的での需要増加が期待されるため、数量ベースでは微増が続き、2029年に向けて市場は再び伸びるとみられる。

<注目訴求機能> 
■メンタルケア・睡眠
 ストレス緩和や睡眠の質改善・向上、リラックス作用などを訴求できる成分・素材を含む。睡眠に関する訴求機能を持つ有用微生物(乳酸菌、ビフィズス菌、他)やラクトフェリンの規模が大きく、ストレスケアでは多数の機能性表示食品で受理されているGABAが全体をリードする。これらの他にもL-オルニチン、プラズマローゲン、ラフマなどがある。
かつては競合が少ない市場であったが、近年は睡眠に関する機能研究やエビデンスの蓄積に取り組む素材メーカーが増加しているため、成分・素材間の差別化の必要性が高まっている。一例として、EOD-1株由来パラミロンは、機能性表示食品で身体的疲労感と精神的疲労感軽減のダブルヘルスクレームが可能であり、差別化に繋がっている。

■フェムケア関連
 女性の体や健康をケアする商品やサービスを表し、これらに関連するテクノロジーやプロダクトを指すフェムテックとともに認知度が増している。更年期症状やPMSの悩みは顕在化しにくかったが、フェムケアの認知が広がるとともに社会的な課題として取り上げられ、市場が形成されつつある。2019年に経済産業省が月経随伴症状による労働損失を年間4,911億円と試算したことも産業界に影響を与えた。
対象となる成分・素材はプラセンタやラクトフェリン、エクオール、ラフマなどがある。機能としてはPMSや更年期症状の緩和・改善が主であるが、妊活につながる子宮内細菌叢の改善など機能が広がりつつあり、今後さらなるエビデンスの蓄積が予想される。

男女ともに乳酸菌とビフィズス菌の出現率が最も高く、約60%となり、認知度の高さや身近さが表れる結果となった。3位以降の結果は男女で大きく別れる。
男性はDHA(脳機能の維持、中性脂肪の低下)、プロテイン(筋肉合成の活性化)、ローヤルゼリー(中性脂肪など)が上位となり体の健康保持効果などへの期待がみられる。女性はコラーゲン(肌の弾力保持)、ヒアルロン酸(肌のハリ、シワ改善)、大豆イソフラボン(更年期サポート、骨の健康維持)がランクインし、肌に対する美容効果への期待値が特に高いことがうかがえる。また、全体的に女性は男性に比べて出現率が高く、ヘルスケアへの関心度が高いと見られる。

2022年の市場は前年比14.7%増の2,961億円が見込まれ、全カテゴリーが前年を上回るとみられる。
動物系は、2022年に主体である乳タンパクをはじめ、エラスチン、コラーゲン、有用微生物などが大きく伸びるとみられる。対象品目のうち、ラクトフェリンは前年をわずかに下回るが、その他の品目は伸びるため、市場は前年比17.4%増が見込まれる。乳タンパクは海上輸送費の高騰や円安により価格が高騰しており金額ベースの伸びに大きく影響しているが、タンパク質摂取のニーズが旺盛で数量ベースも伸びている。
植物系は、2022年は大麦若葉が堅調であることに加え、食物繊維の一種であるイヌリンやプロテインパウダー向けを主体とする大豆・エンドウタンパクが伸びることから市場は前年比4.2%増が見込まれる。特にイヌリンは腸活や糖質オフといった消費者ニーズと合致しており、参入各社が積極的に啓発活動を進めていることで認知度が向上し、今後の成長が期待される。
合成系は2020年に新型コロナ流行の影響で苦戦した品目が多く市場は前年を下回ったが、2021年には回復した。BCAAは価格が上昇していることもあり2021年、2022年ともに二桁増になるとみられるほか、GABAは睡眠系サプリメントの採用により好調に推移している。また抗老化成分として注目されるNMN(ニコチンアミドモノヌクレオチド)の市場が形成されつつあり、今後の伸びが期待される。
<調査方法>
富士経済専門調査員による参入企業および関連企業・団体などへのヒアリングおよび関連文献調査、社内データベースを併用
<調査期間>
2022年5月~7月
■消費者アンケート概要
<調査対象>
・18歳以上の男女10,000名(スクリーニング調査:Q1~Q4)
・スクリーニング調査の結果、調査対象100素材の使用経験があり、使用素材数の多い者順に抽出した18歳~69歳の男女1,040名(本調査:Q5~Q6)
<調査方法>
インターネット調査
<調査期間>
2022年6月6日~10日