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大麦摂取による耐糖能改善効果と腸内細菌叢の関連を解明

株式会社はくばくが、株式会社メタジェンと共同研究を行い、大麦摂取による耐糖能*改善効果が個々人の腸内環境に影響されることを明らかにしました。その研究成果が科学雑誌「Nutrients」に2022年8月24日付で掲載されました。

<研究の背景>
 大麦は、世界で最も古くから栽培されてきた穀物の一つです。これまで血中コレステロールや耐糖能の改善効果などが報告されており、健康効果が注目されている食材の一つです。大麦に含まれる有効成分の一つとして水溶性食物繊維の一種であるβ-グルカンが挙げられます。β-グルカンは腸管内で食事由来の糖質や脂質と結合することで消化吸収を遅らせ、急激な血糖値の上昇を抑制するほか、腸内細菌のエサとなり腸内環境に影響を与えることで耐糖能を改善すると考えられています。しかし、食生活や人種の違いなど、複数の交絡因子が存在するため、日本人において大麦の摂取と耐糖能改善効果をつなぐ詳細なメカニズムは十分に明らかになっていませんでした。そこで、大麦が日本人の腸内環境および耐糖能に与える影響を定量的に評価することを目的に、本共同研究を実施しました。
*耐糖能:血液中の血糖値が高くなったときに、それを正常値まで下げる能力。

<研究成果の概要>
 日本人成人24名を対象に、試験品(大麦30%配合の雑穀ご飯)とプラセボ(大麦を含まない雑穀ご飯)をそれぞれ4週間摂取しました。プラセボあるいは試験品摂取前後で経口ブドウ糖負荷試験による耐糖能の測定、および便から腸内細菌叢や腸内代謝物質の測定を行い、これらのデータを統合解析しました。結果として以下の3点が得られました。

●大麦摂取により内臓脂肪面積と負の相関があることが知られているBlautiaや酪酸産生菌の一種であるAgathobacterが増加したほか、血糖値改善効果が報告されているアゼライン酸などの代謝物質が増加しました。
●大麦摂取前に耐糖能が低かった被験者において、大麦摂取により耐糖能が改善しました。
●耐糖能が改善した人ほど、大麦摂取によって酪酸産生菌の一種であるAnaerostipesが増加しました。

<今後の展開>
 本共同研究により、大麦が日本人の腸内環境に対して与える影響、および耐糖能改善効果における腸内環境との関連性が明らかになりました。
 今後、本研究をさらに進めることで、腸内環境の制御を介した血糖値の制御方法の開発が期待されます。また、腸内環境の個人差に着目した研究データが蓄積されることで、腸内環境パターンの層別化に基づいて健康を促進する商品開発につながることが期待されます。
 今後も株式会社はくばくは、大麦・雑穀の研究に積極的に取り組み、穀物を通して人々の健康と豊かな食生活を実現します。

<文献情報>
【論文タイトル】
Metabologenomic Approach Reveals Intestinal Environmental Features Associated with Barley-Induced Glucose Tolerance Improvements in Japanese: A Randomized Controlled Trial
(メタボロゲノミクスにより、日本人における大麦の摂取による耐糖能改善と関連する腸内環境の特徴を明らかにしました:ランダム化比較試験)
【著者】
後藤優佳1、西本 悠一郎2、村上 慎之介2,3、野間口 達洋2、 森 友花2、伊藤 正樹2、中畔 稜平2、工藤 徹2、松岡 翼1、山田 拓司2,4、小林 敏樹1、福田 真嗣2,3,5,6
【所属】
1株式会社はくばく
2株式会社メタジェン
3慶應義塾大学
4東京工業大学
5神奈川県立産業技術総合研究所
6筑波大学
【掲載誌】
Nutrients
【掲載日】
2022年8月24日
【DOI】
10.3390/nu14173468
【リンク先】
https://www.mdpi.com/2072-6643/14/17/3468