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地域創生医 桐村里紗のプラネタリーヘルス 第15回
ネイチャーポジティブのカギ「プラネタリーヘルス」


明けましておめでとうございます。

「甲辰(きのえたつ)」の今年は、物事のはじまりの意味を持つ「甲」に、「振・震」に含まれる「辰」。大きく震える一年になると言われていましたが、年初からの能登地震と、続く支援航空機の事故と、心震える幕開けとなりました。

被災された皆様に心よりお見舞い申し上げますと共に、事故の犠牲者の方々に心よりお悔やみ申し上げます。

「伸」の意味も含む、「辰」。古きを壊しながら、新しい理想に向かって伸びていくことも意味しており、奮闘しながらも未来を描き、そこに向かっていくことを諦めず、邁進したい一年です。

昨年からプラネタリーヘルスについての連載をスタートしましたが、昨年10月には東京大学とJR東日本が高輪ゲートウェイを拠点にプラネタリーヘルスの実証を進めることがリリースされるなど、プラネタリーヘルスが日本でも花開き始めていると感じられる一年でした。

今年は、ローカルとシティをつなぎながら、プラネタリーヘルスが龍のように日本各地を飛び回る年になればと思います。


企業の経済活動においても、サスティナビリティ経営が求められる今、カーボンニュートラルに加えて、自然資本を維持し、生物多様性に貢献するネイチャーポジティブな経営姿勢が求められるようになりました。

人類のあらゆる経済活動が、ネイチャーネガティブであり、さまざまな社会課題や地球課題を生み出し、人類社会の基盤を支えてきた自然資本の劣化が止まらなくなっている今。

このような社会システムの中で、このままの生き方を人類が続けることができないほどに事態が極まっていることを踏まえて、2022年12月開催のCOP15において、2030年までに、陸域と水域のそれぞれ30%以上を保護する国際目標である30by30(サーティ・バイ・サーティ)の達成が掲げられました。それを踏まえて、日本でも、2023年3月、「生物多様性国家戦略2023―2030」が閣議決定され、国や地域、事業者そして一人ひとりの力を結集して、ネイチャーポジティブな自然共生社会を実現することが求められています。

特に、人の健康や日常生活に関わるヘルスケア産業、食品産業は、その原料を自然資本に由来する生態系サービスに大きく依存しています。

農作物を原料とする場合、農法によって生態系への負荷が大きく違います。

農薬や化学肥料を使用する慣行農法は、農地の生物多様性の減少を招いており、環境省によると、日本においては、絶滅危惧種が最も多いエリアは、水田や畑などの農耕地となっています。

人の健康に関わるヘルスケア産業、食品産業が、ネイチャーポジティブにシフトすることは大きなインパクトとなります。

「生物多様性国家戦略2023―2030」では、基本戦略の1つに「生活・消費活動における生物多様性の価値の認識と行動」が掲げられ、消費者の行動変容を求めていることが特徴的です。

でも、どうでしょう。

日本人は、特に環境意識が低いと言われる国民です。

「生物多様性のために」と言っても、生活者を動かすことは難しいでしょう。

だからこそ、プラネタリーヘルスです。

プラネタリーヘルス=地球の健康という考えの真ん中には、人の健康やウェルビーイングがあります。

「環境のために」という利他的な欲求ではなく、自分の健康やウェルビーイングを実現する「自分のために」という利己的な欲求が、地球全体の健康につながる。システム論的には人はより大きなシステムと一体なので、利他は自分のためでもあり、利己は全体のためでもあると言えます。

これを実現するためのキーワードは、「再生(リジェネレーション)」です。

ネイチャーネガティブな社会システムであったこれまでは、自然を守るためには、ネガティブな人間の活動・経済を抑制し、環境を「保全」する必要がありました。
こうなると、人の関わりしろがありませんし、人の存在が否定されます。


しかし、ネイチャーポジティブな社会システムを構築すれば、自然を再生するためには、ネイチャーポジティブな人間の活動・経済をより発展させることが良しとなります。

人の関わりしろがあり、かつ、人の存在が肯定されます。

そして、生物多様性に配慮した生産は、微生物の多様性や野菜の健康などを通じて、人にもポジティブな影響を与えます。

ネイチャーポジティブなマーケットが拡大すると、バリューチェーンを通じて、環境はより豊かに、生活者は健康になり、プラネタリーヘルスが実現していく。

人類がこれから地球と共存共栄していくためには、この未来を分野を超えた連携で実現していくことだと思います。

ここに向かって、邁進したい一年です。

本年もどうぞ宜しくお願いいたします。


https://planetaryhealth-initiative.peatix.com/?fbclid=IwAR3QP5UzeRCoi0Ys8mBCkZybfGp4uc7qlxLxQsxY1nbb-rrYOPjnU8AUPkg

第1部:基調講演 桐村里紗(PHI代表)
   「プラネタリーヘルスと世界における日本の役割」
    〜人口最少県人口最少町から世界へ〜

特別演奏:横山和成(立正大学地球環境科学部特任教授)
    「微生物が奏でるシンフォニー」

第2部:パネルディスカッション「医食農源〜微生物がつなぐ人と地球」
    プラネタリーヘルス・アクション宣言
  <パネリスト>
  ・プラネタリーヘルス:桐村里紗
  ・医:田中善(医療法人仁善会理事長)
  ・農:横山和成
  ・食:丹羽真清(一社:食と農の生命科学研究会代表理事)
  ・ファシリテーター:佐藤洋一郎(ふじのくに地球環境史ミュージアム館長)

第3部:交流・懇親会(会費制・名刺交換会)

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申し込み:peatix

https://planetaryhealth-initiative.peatix.com/

日 時:2024年3月3日(日) 13:00~16:30 (開場:12:30)
会 場:日比谷図書文化館(大ホール)zoomウェビナーオンライン同時配信
定 員:180名(会場出席:定員になり次第締め切り)WEB参加(500名)
主 催:公益財団法人日本ヘルスケア協会プラネタリーヘルスイニシアティブ(PHI)
後 援:(一社)日本オーソモレキュラー医学会、(一社)日本健康食育協会、(一社)次世代FVC研究所
参加費:会場参加 5000円(資料代含む)オンライン参加 3000円
  *参加登録いただいた方には、後日アーカイブ配信もいたします。