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特集 ヘルスケア企業レポート①
ドラッグストア業界・売上高トップのウエルシアHD

21年前と比較し売上高53倍!
1兆円企業として市場占有率12%

8兆5,000億円を超した2021年度のドラッグストア市場。売り上げランキング上位3社は、3年連続でトップに年商1兆円を突破したウエルシアホールディングス(HD)、2位にツルハHD、3位がコスモス薬品と続き、統合したマツキヨとココカラファイン連合軍のマツキヨココカラ&カンパニーが4位にランクされるなど、上位10社の総年商は5兆7,860億円が見込まれドラッグストア市場の68%を占有している。なかでも注目されるべきは、ドラッグストア運営に乗り出してから21年後の今、53倍の成長率を達成しているウエルシアだ。売上げ規模もさることながら社旗貢献度も高い同社をレポートした。
記事=ヘルスケアジャーナリスト:瀬戸寛(せとかん)

■5兆7,860億円に達したランキング上位10社
JACDS(日本チェーンドラッグストア協会)の主導で2000年に始まったドラッグストア経営実態調査は、21年後の今、3倍の8兆5,400億円に市場を拡大し、最近、3年間における売上高の平均伸長率5.5%増から推定すれば、ドラッグストア業界が目指す3年後の2025年に10兆円産業化の達成は当確となった。(DATA1=JACDS調査)

コロナ禍が続き、CVS微増、スーパーマーケット、家電量販店、DIY(DO IT YOURSELF)・ホームセンター業界がマイナス状態のなか、成長を続けるドラッグストア業界の“牽引役”は、直近の総年商5兆7,860億円、ドラッグストア市場の68%を占めるランキング上位10社の存在だ。
10社の3年間における実績は、2019年度:5兆4,379億円(前年度比8.2%増)→2020年度:5兆6,848億円(同4.5%増)→5兆7860億円(同6.4%増)と推移しており、ちなみに2021年度の実績ではランキング上位6社で4兆6,956億円、実に10社の8割を占めている。(DATA2、新たなタブで画像を開くと拡大表示されます)

3年連続トップのウエルシアは、ドラッグストア業界で初の1兆円企業となり、成長率は2019年度:8,682億円(前年度比11%増)、2020年度:9,497億円(同9.4%増)、2021年度:1兆259億円(同8%増)と推移し、この3年間の伸び率は18%アップした。
上位3社(ウエルシアHD、ツルハHD、コスモス薬品)の順位は不変だが、ツルハHDのみが減収(マイナス0.4%)となった。その要因は、「既存店の売上げ、客数ともに前年割れだが、処方箋調剤とPB商品の拡充で粗利益は改善した(同社)。
2021年10月の経営統合し「1兆円企業誕生」と思われたが、結局はマツキヨとココカラの連合は7,299億円となり4位にランクされた。同社は、これからアジアNo.1のドラッグストアとなり、美と健康の分野でのリーディングポジションを確立すべく2026年3月期に グループ売上高1.5兆円、営業利益率7%を目指す。
ランキング6位のスギ薬局の成長率も、2019年度:前年比11%増、2020年度:同11%増、2021年度:同7.3%増と、3年間の成長率はウエルシアの18%に次いで15%だ。

■トップを続けるウエルシアHD躍進の秘訣
ランキングトップのウエルシアHDが、なぜ躍進を続けるのだろうか。その動向は見逃せない。同社の前身は1965年に誕生した20㎡の一ノ割薬局。創業者の鈴木孝之氏が、2000年にジャスコ(現在のイオングループ)と資本提携。本格的にドラッグストアの運営に乗り出した当初の年商は193億円(55店舗)だった。
2年後に店名をウエルシアに統一し21年後の現在、ドラッグストア業界でトップの座を守り続け、店舗数は55軒から2,457軒へ、そして売上高は53倍もの躍進を続けている。
経営を支えてきているのは、処方箋調剤部門だ。受け皿となる調剤併設店が1,437店→1,638店→1,839店とアップし、部門別で最も貢献した処方箋調剤部門は、最近3年間で975億円から1,992億円と倍増している。
その背景には、コロナ禍にあって受診抑制にブレーキがかかるなか、ウエルシアが応需した処方箋枚数は2019年度:1,578万9,000枚、2020年度:1,610万200枚、2021年度:1,889万5,000枚と上昇気流に乗って2割の増収。ウエルシア経営の太い柱となっている。
加えて時代の流れを踏まえ店舗面積を拡大し食品部門、とくに生鮮部門を拡充する一方、ショッピングセンターと融合し医療機関も導入した新しい業態を開発するなど、ワンストップショッピング機能を活用し来店頻度を増やしたからだ。(DATA3)

■躍進の背景に社会貢献度の高い二つの事業
<オストメイト対応トイレ>
同社躍進の秘訣には、売上げ規模の拡大もさることながら社会貢献に造詣の深い企業として知られるようになったことも挙げられる。例えば、その一つに人工肛門を造設したオストメイト患者のための対応トイレがある。
「なんでトイレなの?」と聞かれそうだが、実はオストメイト患者数は20万人。この数値が多いか少ないかはともかく、小売業や公共トイレの対応機種は健常者ばかりで、オストメイト対応のトイレは極めて少ない。オストメイト患者は、腹部に汚物をためるパウチを装着しているが、健常者のトイレでは汚物の処理は難しい。
「業界トップのウエルシアで導入されてはどうでしょうか?」
「そうだよね。考えてみればドラッグストアのトイレは、そうした方々のトイレは導入されていない」
そんな会話が、ヘルスケアの専門記者とウエルシア代表取締役会長の池野隆光氏と交わされたのがきっかけで、その後、当時、対応トイレを普及していた片倉工業の竹内彰雄会長との話し合いが始まり、やがて東京・日本橋に開局する24時間営業の”旗艦店“のビビオンをはじめ全国に展開する店舗へ、次々とオストメイトのためのトイレ『前廣便座』が導入されていった。
「私は、薬を買うときには、極力、ウエルシア薬局を使うようにしているし、ここを全力で応援している。それは人工肛門のある方に対応したトイレ(1店舗当たり20万円もコストがかかる)を多くの店舗に作っているからだ。私の親類縁者はおろか友達にもウエルシア薬局の関係者はいない。株も持っていない(株やってない)。 ただ、こういう企業の心意気に強く感動するし、こんな会社で働いている人は羨ましいと思うんだ」
ある日、こんな文章が人工肛門の造設手術をしてきた外科医で小説家の中山裕次郎氏のツイッターに掲載された。このことが大きな反響を呼んだ。たくさんの人々が反応したなかに、ウエルシアに勤務するスタッフから、「当社がこのようなトイレを設置していることは知りませんでした。改めてウエルシアに勤務する意義を知りました」といった声も、同社に届けられたという。
中山医師のツイッターは、「人工肛門がどれほど生活の質を下げ、社会活動を阻害するか、身をもって知っているが、「救命のため」と自分に言い聞かせてきた。 対応トイレが増えれば、もっと外出しやすくなる。ウエルシアみたいな企業が「対応トイレを作ることで評判が上がり、儲かる」社会を作りたい。私の罪悪感を減らすために」と結んでいる。

<心臓停止状態の人の命を救うAED>
もう一つは、心臓停止状態の人の命を救うAED(自動体外式除細胞器)の設置だ。日本ACLS協会の調べによれば、急に心臓停止して倒れる心肺機能停止患者は年間約2万5千人。一般市民が心肺蘇生を実施した場合の救命率は15.2%。そのうちAEDを実施したケースは1,092人で救命率は53.2%。心肺蘇生を実施しなかった場合に比べ、1か月どの生存者数は1.9倍、社会復帰者数では2.7倍にのぼるという。
店頭で突然倒れた人に対しては、まず110番通報とともにCPR(胸骨圧迫)とAEDを使用して除細動をいかに早い段階で行えるかにかかっているだけに、ウエルシアでは処方箋調剤室や無菌調剤設店へ、地域住民が安心して来店できるように、AEDの全店舗設置を目標に順次導入が進められてきた。
緊急事態に備え、AEDを使えるように社員教育を行い、すべての店舗で来店者や地域住民のための緊急事態に対応しているが、全店舗での使用率は少ないものの、いつ、いかなる時でも助かるべき命を、店舗に設置したAEDが役立つことを願ってのことだ。
「たとえ全店舗での使用件数は少なくても、ドラッグストアには必需品」と池野会長は話している。

■創業者の企業哲学が代々の経営者に受け継がれている

ウエルシアHD創業者の鈴木孝之氏(故人)
代表取締役会長の池野隆光氏

「先用後利」―先に相手に利益を与えて後で利益を得ることである。配置販売業を営む人たちに伝わる商法の一つだ。毎年1回、先祖代々から受け継いできた、得意先の住所、氏名、配置した薬の銘柄、数量、前回までの使用料などが記載された懸場帳(固定客名簿)を持ち得意先周りをしてきた。
訪問先では、専用の薬箱を渡して家族の健康状態を聞きながら必要な薬を選んでももらうが、代金は翌年再び得意先を訪れた際に使用した分を受け取る仕組みだ。薬の知識、健康法や各地を訪れた話など、コミュニケーション能力に優れたスタッフが笑顔と心を提供してきた素晴らしい商法だ。
ウエルシアが注目されることは、利益の追求だけでなく社会への貢献活動に積極的に取り組んできたことが挙げられる。この方法は、まさに”先用後利“そのままだと思う。どんなに企業の規模が大きくなり、売上げも拡大しても、最前線に立つスタッフの笑顔と心がなければ、ただの利益追求型企業になってしまう。
「またあのドラッグストアに行こう」-そんな店づくりで地域住民に信頼され愛され日本一となったウエルシアの企業哲学は、創業者の鈴木孝之氏から、池野隆光氏、そして松本忠久氏へと受け継がれている。