「国民の健康づくりのための商品を開発し、すべての会員企業が全力で売る“共同販売機構”でなければならない」――今日のドラッグストア業界の基礎を作り上げた協業グループのAJDが1970年に設立されてから9年間、初代本部長として錚々たるメンバーを率いたのは、石橋幸路さん。兵庫県尼崎市に本部を構えるマルゼンの創設者としても活躍された。
各地で激戦を繰り広げていた大型店を一本化して、AJDという協業グループのトップとして創成期から共同仕入れをした商品を、会員企業で販売する共同販売機構を誕生させた“立役者”でもある。
「これからの医薬品小売業は、セルフメディケーション(自己治療)のための医薬品販売=病気産業から、健康を中心とした健康産業を目指さなければならない」と語ると共に、「人は、どんなに立派であっても努力しなければ、その経験はストップしてしまう。そのためにも自己研鑽を忘れずに…。小売業にとって一番大事なことは取引先、地域住民から“信用”されることである」
石橋さんは、「経営者は、先を見る目をお持ちなさい。そして友を愛し、家族を愛し、共に生き抜いてきた仲間を愛し、取引先を愛しなさい」と言い続けてきた。医薬品小売業界の行末について、「将来、繁盛する医薬品小売業は?」との質問に対して、石橋さんはドラッグストア、スーパー・ドラッグストア、コンビニエンス・ドラッグ、処方箋調剤機能を持つドラッグストア、健康をメインとした品揃えの薬局を挙げられていた。
そして石橋さんは多くの語録を残された。次世代経営者たちが率先して学ばなければならないことばかりだ。「経営者にとって必要なのは、金品、財産よりも大事なものは、“良き師”“良き友”“良き本”である、経営者の孤独感を和らげてくれるのは、これら三つの取り合わせであり、特に素晴らしい人生を送るときには、“良き友”が欲しい」とも話されていた。
その友とは、1970年に旗揚げしたAJDの仲間たちであり、心を許し常に手を携えて競合の荒波を共に泳いできた“良き同志”でもあった。「働く中で、自分は今、何をしなければならないかをいち早く見出して、即実行することである。このことが、仕事がうまくいくかどうかの分かれ道になる」として、一例として到来する高齢社会下で取り組むべきことを指摘し、「わが国は間違いなく高齢社会になるから、“健康長寿”が大きくクローズ・アップされる。そうした時代に対応した商品は、薬に限らずに様々な分野の商品が主役になるだろう。早急に到来する高齢化時代の店づくり」を呼びかけられていたことを思い出す。