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DgSの将来展望 JACDSの「健活ステーション化構想」始動!
健活St.推進委員会 塚本厚志委員長

「生活者の健康と美に奉仕する小売業」――読者が抱くドラッグストアのイメージはこんなところだろうか。こと健康は「人生100年時代」の重要なテーマであり、実現の鍵を握る業態の1つがドラッグストアと言って良い。一般社団法人日本チェーンドラッグストア協会(JACDS、池野隆光会長)は昨年10月に「健康生活拠点化推進計画」を発表し、2030年を1つの目途とした計画を、各委員会の活動に落とし込んでいる。このほど、その中核を担う「健活ステーション推進委員会」の取り組みについて、JACDS理事で同委員会委員長の塚本厚志氏(マツキヨココカラ&カンパニー副社長)と、JACDS事務総長の田中浩幸氏に話を聞いた。(取材と文=八島 充)

社会が真に求めるドラッグストア像を追求

= 序文 =

今から6年前の2017年、まだ見做し団体だった日本チェーンドラッグストア協会(JACDS)が一冊のテキストを公表した。

その名は「街の健康ハブステーション構想の全て」。地域生活者に支持される業態の姿を、詳細な基準を設けて組み立てた指南書である。ただ、当時はドラッグストアが未来の展望より目の前の成長を優先した時代で、テキストが活かされることはついぞなかった。

その後、ウィズコロナの暮らしが生活者の行動変容を促し、自身の健康を自身で守るセルフケアの意識が高まっていく。しかし情報が氾濫する時世にあって、個人がヘルスケアに関する正しい知識を得るのは、一層容易でないのも事実だ。

コロナ禍に突入した2020年に、JACDSは一般社団法人となり第2のスタートを切った。「尊敬される企業集団になる」というビジョンのもとに、生活者の健康な暮らしの窓口となる機能の装備を、全国の正会員・賛助会員らと議論してきた。

そうして2022年10月、JACDSにより発表されたのが、「健康生活拠点化推進計画」である。

同計画は「ドラッグストアは身近な健康の相談窓口」を合言葉に、既存職能者の育成のほか、「受診勧奨スタッフの育成」「食と健康アドバイザーの育成」「食と健康売場の強化」「ヘルスチェックサービス対応」「プラ容器回収プラットフォームづくり」といった、次代の業態の目指すべき姿を示している。

現在JACDSは、この「健康生活拠点化推進計画」に「健活ステーション化構想」という旗を立て、2030年を1つのゴールとする活動を各委員会に落とし込んでいる。2017年に設置した「街の健康ハブステーション推進委員会」は「健活ステーション推進委員会」に名称変更して構想の中核を担い、前委員会から引き続き、塚本厚志氏(マツキヨココカラ&カンパニー副社長)が委員長として指揮をとる。

「健活ステーション化構想」は、6年前の「街の健康ハブステーション構想」の生まれ変わりというだけでなく、今を生きる生活者や社会に真に求められるドラッグストア像を追求した構想と認識している。当記事は、その実現に向けて動き出したJACDSと「健活ステーション推進委員会」を応援するものである。

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健活St.構想は協会の総意

――2017年の「街の健康ハブステーション構想」が進まなかった理由をどうお考えですか?

田中事務総長

田中氏 構想の適用基準に施設構造や取扱い品目をきめ細かく設定したことが障壁となったほか、コンシェルジュの育成を委託した外部組織が機能しなかったことも原因の1つです。コロナ前の生活者が求めるドラッグストアの機能と乖離があったことも遠因だったと思います。

それがコロナ禍を経てドラッグストアの機能が改めて注目されるようになり、生活者ニーズの変化、また今後求められるであろうシーズが見えてきました。「健活ステーション化構想」は、そうした流れの中でつくられました。

――「街の健康ハブステーション推進委員会」改め、「健活ステーション推進委員会」の役割は何ですか?

田中氏 これまで「食と健康」マーケットの拡大に向けた環境整備を進めてきましたが、これからは、その延長線上にある「食と健康売場の強化」「食と健康アドバイザーの育成」および「ヘルスチェックサービス対応」に取り組んでいきます。

なお「健活ステーション化構想」の推進は健活ステーション推進委員会のほか、学術調査研究委員会が「受診勧奨スタッフの育成」を、SDGs推進委員会が「プラ容器回収プラットフォームづくり」を、それぞれ担当します。

行政からの期待も大きくなっている

――「健活ステーション推進委員会」が構想の中核を担うという訳ですね。

塚本委員長

塚本氏 これからのドラッグストアは、予防・未病・治療をトータルで提案することが、生活者に支持される要件になります。特に予防・未病の領域は「食」が関わるウェイトが大きく、私たちの店舗でその情報を提供する体制を整える必要がありました。

なんとなく不調を訴える方々に、食生活や運動や睡眠等のアドバイスをおこなうとともに、売場にある保健機能食品(特定保健用食品、機能性表示食品、栄養機能食品)などの商品群を、自信を持って提案する人材の育成が課題になってきます。これらを議論し現場に落とし込むことが、当委員会の役割となります。

――JAPANドラッグストアショーの「食と健康ゾーン」や「食と健康アワード」の開催(2019年〜)、さらに昨年のショーで発表した「食と健康の実証実験」も、保健機能食品群の周知と販売の促進に役立っていますね。(関連記事@Hoitto!:https://hoitto-hc.com/1296/ 「食と健康アワード2022」受賞商品が決定!)

塚本氏 保健機能食品などの商品群も、ただ売れれば良いというものではありません。一部ネット通販で健康食品による健康被害の報道が見られましたが、国民の健康を預かるドラッグストアに、そのようなことがあっては絶対にいけません。

お客様が迷い戸惑うことがないよう、エビデンスのしっかりした商品を、正しい使用方法などの情報と一緒に提供することが重要です。この部分で生活者からの期待、あるいは行政からの期待も、どんどん大きくなっていると感じます。

コロナ禍を経てセルフケアの機運が高まる中、ドラッグストアに足を運んでくださるお客様が、自身の健康を守るのにふさわしい、確度の高い情報が得られる環境づくりが、これからの業態に必須となっていくでしょう。

――「疑わしき商品は扱わない」という姿勢を貫くために、ドラッグストアも景品表示法などの法律を勉強する必要がありますね。

実証実験の成果をドラッグストアショーの中で発表している

田中氏 協会は昨年の「食と健康の実証実験」に先立って、店舗販売にふさわしい保健機能食品カテゴリーの選定や、事実誤認を防ぐ表示のあり方等を定めた自主基準を策定しています。
 
自主基準の策定にあたっては、監督官庁とも協議を重ね、双方に納得のいく内容になったと自負しています。今後は会員各社にも、自主基準の意義や実証実験で得たメリットを理解してもらえるよう、繰り返し説明し、本格的な実装に向けて準備していきます。

昨年の実証実験の売場展開事例

メーカーの想いを正しく伝える店頭活動を

――参画メーカーの輪を広げることも大切ですね。

塚本氏 コロナ禍で「免疫」を切り口とした食品の新たな市場が形成されましたが、これはメーカー様が健康領域の商品開発に注力し、生活者の皆さんにセルフケアの概念を根付かせたことが理由です。

健康領域の商品開発を強化している食品メーカー様が増えていることは、「食と健康」の売場づくりを進めているドラッグストアにとって大変ありがたいことです。

毎日の食生活にセルフケアを取り入れようとする動きは、これからもっと活発になるでしょう。私たちも商品の価値を正しく伝える店頭活動を通じ、サプライヤーの皆さんの期待に応えていかねばなりません。

――「食と健康」の市場創造が医療費の抑制につながるという期待もあります。

塚本氏 昨今の医療費の多くのウエイトを占めるのが生活習慣病であり、それが原因でお亡くなりになる方も少なくありません。その課題に向き合うことは当然、ドラッグストアの重要な使命です。

ドラッグストアに来店されるお客様は日々、健康の維持増進や未病・予防に役立つ商品を探しています。その店頭で「免疫サポート」や「血圧サポート」といったコーナーを作り、実際の商品に直に触れていただくことが、国民の健康意識を高め、かつ行動変容を促すきっかけになると考えます。

そこに健康アドバイザーが関与することで、食事や運動、睡眠といった日常生活の助言をおこない、各々が抱える不安の程度に合った商品を提供することが可能になります。場合によっては受診勧奨をおこない、医療機関への橋渡し役も担っていきます。

ウェルビーイング社会の実現に向けて

――食と健康アドバイザーは、2030年までに10万人を育てるという目標を掲げています。

田中氏 薬剤師や医薬品登録販売者、管理栄養士など幅広い方の受講を想定しています。管理栄養士については、能力にふさわしい仕事を確立するという狙いもあります。カリキュラムは販売に役立つ商品知識の習得を軸に、コミュニケーションスキルの向上につながる内容になると思います。

また、この研修制度は協会内に留めず、サプライヤー、あるいは一般の生活者にも広く開放していく計画です。有益な情報を相互に共有することで、健康に対するリテラシーを高め合い、より専門的なアドバイスが生活者に響くような世界をつくっていきます。

――「健活ステーション化構想」の着手しかり、一般社団法人の取得を機に協会の正・賛助会員が1つの目標に向かって進み始めた印象があります。

塚本氏 「お客様との接点」の数と質を上げるために何ができるかを皆で考え、知恵を結集した結果だと思います。ドラッグストアの事業者、あるいはドラッグストアと協業するサプライヤー様の志が1つになった時、生活者に一層の信頼を寄せていただける業態に進化できると信じています。引き続きWell-being(ウェルビーイング)社会の実現に向けて突き進んでまいります。

ーーありがとうございました。