
「正しいこと」を伝えることは、薬剤師の大切な役割の1つです。しかし、真面目な薬剤師ほど、正しい考えを押し付け、人を傷付けてしまうことがあります。
例えば、喫煙者に対しての声掛け。たばこは身体に悪い、周りにも良くない。今や常識でしょう。たばこの健康被害は、多くの方々が知っている事実であり正しい情報です。だからといって、たばこをやめられない方に向かって、「煙草は身体に悪いから早くやめたほうがいいですよ」と、何度も繰り返し伝えることは、本当に相手のためになっているのでしょうか?
もちろん薬剤師には正しい情報を伝える責任、義務があります。なので、喫煙のリスクを伝え禁煙の大切さを伝えなくてはいけません。しかし、たばこを吸っている方には、その方なりの事情があります。たばこをやめられないのは健康被害があることを知らないからではなく、ニコチン依存や生活背景、長年の習慣など様々な理由があるのかもしれません。
正しいことを伝えることは、悪いことではありません。しかし、相手の背景を知らずに、その正しさだけを伝え続けることが、本当にその方のためになると言い切れるのかは疑問です。「一緒に禁煙しませんか?」の声掛け。その言葉を繰り返すことは、相手を励ますどころか、追い込んでしまうこともあると、私たちは忘れてはいけません。
私たちは「自分が正しい」と思っている時ほど、正しさを振りかざしてしまいます。「あなたに健康でいて欲しいから…」その思いはとても大切で決して間違ってはいませんが、本当に大切なのは、正しいことを伝える際、「この人はなぜそうしているのだろう」とその方の背景を想像することです。正しさだけでは、人の心、行動は変わりません。
「たばこが身体に悪いのはもうご存じですよね。今は肩身が狭いでしょ?やめられない理由がおありですか?禁煙したご経験は?」などと尋ねてみると「たばこはこれから先もやめるつもりはない!」とはっきり答える方も…。「おう、そういう考えか…」と思いながらも、そんな方に、やめないと言う理由を聞いてみると色々な意見が聞けます。
私が聞いたおじいちゃん、たばこをやめない理由は「亡くなった親父が吸っていたから、たばこを吸うと一緒に吸っている気分になるんだよね。親父が亡くなった年はもう越えたけどね」と教えてくれました。「そっか。じゃあ私は『これからも禁煙しませんか?』って、時々聞くから、やめてもいいかなって思った時はすぐ教えてくださいね!」と伝えると「わかったよ」と笑っていました。「正しさ」とは、相手を理解しようとする姿勢や、寄り添う気持ちがあって初めて、誰かを支える力になるのだと思います。
「お野菜を食べましょう!」「塩分を控えましょう!」「運動しましょう!」どれも正しいことです。でも、人は「正しいことを知らない」から行動出来ていない訳ではありません。実際、分かっていても行動出来ない理由があるのです。その理由に耳を傾け、その人その人に寄り添ったうえで、どうした良いかを一緒に考えられる薬剤師になりたいと思っています。
正しさは、人を変える力を持っています。でも、その力が発揮されるのは、相手を理解しようとする姿勢があってこそだと思います。正しい言葉は、人を救う薬にもなれば、人を傷つけるナイフにもなりかねないということを私たちは忘れてはいけません。
母は「ママはダイエットの知識はたくさんあるのよ。食事も運動も何をやればいいのかは、わかっているの。行動できないだけなのよ」となぜが偉そうによく言っていました。「痩せる薬はありますか?」「痩せるサプリメントはありますか?」薬局に立っていると、特に春から夏にかけてはそんな質問をされることが多々あります。そんな時「私を見て、あると思いますか?」と患者さんに伝える母。すごい説得力だな…(笑)
今話題のやせ薬。医師の診断のもと、適応のある方が使用すればよいのでしょうが、美容目的のやせ薬として安易に使われることには問題があります。薬剤師として、安易に使用することがないように伝えなくてはいけません。若い方は特に「自分は太っている」と思っている方が多いのでしょう。
BMI=22(適正体重)といわれる15~19歳の女性のうち、70%以上が「自分は太っている」と感じていることが、厚生労働省の調査結果でもわかっています。私の娘は「ばあば、だぁーい好き」といつも言っていました。ある日「ばあばのどこが好き?」と母が聞くと「丸くて可愛いところ!ばあば、コロコロで可愛いもん!」と笑顔で答え、母に抱き着く娘に対し「ありがとう」と、ひきつりながら笑う母の顔…。ママ、ドンマイ(笑)
大好きなママへ愛を込めて…
三浦 紗耶華