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【連載】薬剤師・紗耶華の奮闘記⑤「知らない」ことの代償【公益財団法人 日本アイバンク協会】


本連載の筆者・三浦紗耶華さん


【連載】薬剤師・紗耶華の奮闘記⑤
「知らない」ことの代償【公益財団法人 日本アイバンク協会】


今年になって、私は「日本アイバンク協会」という団体の存在を知りました。その時、私は涙があふれてきました。「どうして、もっと早く知ることができなかったのだろう」そんな後悔に襲われ、自分を責めました。

母は、最期を私の自宅で迎えました。

血圧が下がり、心拍数も下がっていく中、ずっと避けていたかった「お別れ」がすぐそこに迫っていると感じたとき、私は祖母が角膜を提供したことを思い出しました。母は、自身が今まで受けてきた治療や検査結果のデータを保管し、公開してもよいという研究の同意書にサインをし、今後の医療に役立ててほしいと願っていました。母はいつも「人の役に立つこと」を考えて生きてきたのです。亡くなった後も、きっと誰かの役に立ちたいはずです。なぜなら、母自身、かつて自分の母(私の祖母)の角膜提供に同意した当事者なのですから…。

あと数時間、もしかすると数分で消えてしまうかもしれない母の命を前に、「何かできることはないか」「祖母のように、母の角膜を提供することは出来ないか」と、私は在宅医と訪問看護師にそれぞれ連絡をしましたが、有力な情報は得られず、「今はママの最期のぬくもりを感じていよう」と、角膜提供をすぐに諦めてしまいました。

そして、母が亡くなり4カ月が過ぎた頃、角膜提供について調べていた時に発見したのが日本アイバンク協会です。この協会は、亡くなってから該当する担当のアイバンク協会に連絡をすることで、在宅による看取りでも、角膜を提供することができると知りました。

祖母が亡くなってから、「おばあちゃんの角膜を通してモノを見ている人が2人いるかもしれないね。桜を、見ているかもしれないね」「雪を、見ているかもしれないね」と、移り行く季節の中で、母と私は何度もそんな会話をしてきました。祖母がどこかでこの景色を見ているのではないかと感じることができたのです。

母が生きている時、事前にしっかり調べておけば、今、母の角膜を通して光を感じている方がいるかもしれないという希望を抱けたのでしょう。でも、私は怖かったのです。「死ぬ準備」をしているようで、母が生きている時に臓器移植について調べることを避けていました。

祖母が亡くなった時、私はまだ高校生でした。角膜提供は、祖母の死後、ほんの数分で行われました。そのあまりの速さに、当時の私はまるで祖母の死を待っていたかのように感じてしまったことを今でも覚えています。

【臓器移植(提供)=死を受け入れる】

臓器提供は、家族が家族の死を受け入れてこそ成立するものだと、考えてみれば当たり前のことなのに、その事実にとても衝撃を受けました。

(今回わかったことですが、祖母が亡くなった病院はアイバンク協会に登録されていました)

家族の死を頭では理解していても、気持ちが追いつかず、移植という選択に迷うご家族もいらっしゃるでしょう。その迷いは、とても自然なものだと思います。

移植は決して強制されるものではありません。

私自身、もし事前にアイバンク協会を知っていたとしても、実際にその場で母の角膜提供を決断できたかは、正直わかりません。なぜなら、「ママが生き返った時に目がなかったら困るから…」止まった心臓が動き出すことは、もうないとわかっていても、心が、気持ちがついていけないと、痛いほどわかっているから。もう戻ることはないと理解していても、どこかで「もしも…」を願う気持ちがあることを知っているからです。

在宅で最期を迎えても、アイバンク協会の力を借りれば角膜提供を行うことができるということを知ったうえで、移植をするかしないかをご家族で検討してほしいのです。「知らなかった」と、私のように後悔する方が少しでも減りますように…。

知らないままでいることが、大切な選択を遠ざけてしまうことがあります。

私は今、「日本アイバンク協会」を一人でも多くの方に知っていただきたいと心から願っています。


母として薬剤師としての堀美智子



みなさんは、何色が好きですか?

母は、明るい色が好きでした。授業参観、後ろを振り返ると派手な色の洋服を着る母がいました。「この人派手だな」と思ったこと、数えきれず(笑)

かつて恐竜の色は未知であり、グレーや茶色など、想像で復元されることが一般的でした。しかし近年、化石に残る「メラノソーム」という構造を分析することで、一部の色や模様が推定できるようになったそうです。つまり、恐竜の色は「完全な想像」ではなくなってきているようです。

これから先、今までは「常識」とされていた事実が、実は違っていたということがあるでしょう。新しい発見が、まだまだたくさんあると思います。母は、新発見が大好きでした。何かを知ると「知ってるぅ~?」と目を輝かせ興奮しながら教えてくれました。また、こちらから新しい情報を伝えると「えぇ~!知らなかったぁ!」と喜んで話を聞いてくれました。

ママ、季節は変わるのに、時代も変わっていくのに、ママの新しい発見は止まったままなの?私が新しく知ったこと、今すぐママに伝えたいよ。

大好きなママへ愛を込めて…
三浦 紗耶華