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日本のウェルビーイング経営は〝健幸〟にあり/SHD

 公益財団法人日本ヘルスケア協会(JAHI)は、令和6年1月次の定期記者会見を開催し、Social Healthcare Design社 代表取締役CEOの亀ヶ谷正信氏が「ウェルビーイング経営」について講演を行った。亀ヶ谷氏は「ウェルビーイング経営は健康経営の先にある。心(ココロ)と体(カラダ)の健康に、絆(キズナ)の健康という視点を加え、その3つが満たされた〝健幸〟な姿を創り上げる」と示した。

 

亀ヶ谷正信氏

 Social Healthcare Design(SHD)は、一人ひとりに最適なヘルスケアを提供するためのマッチングプラットフォームの提供と、人材育成としてのウェルビーイング研修を通じ、「ウェルビーイング経営」の実現を図る。

 SHDの掲げる「ウェルビーイング経営」は、1946年にWHOが憲章に掲げた健康定義「健康とは、病気ではないとか、弱っていないということではなく、肉体的にも、精神的にも、そして社会的にも、すべてが 満たされた状態にあること」に基づく。

 同社ではカラダ(肉体的)・ココロ(精神的)・キズナ(社会的)の3つの健康の充足度をデータにより補正し、客観的なウェルビーイングの度合を「健幸度」として定義し、活用している。

 これまで日本ではココロとカラダを満たすことが「健康」として扱われてきた。SHDはそこにキズナの満足度を加えることで「健幸」(=ウェルビーイング)へと昇華していく。

自助・公助から〝互助〟へ

 「ウェルビーイング経営」は、健康経営の発展型で、〝会社のため〟から〝私達のため〟へ、〝ひとり〟から〝みんな〟へ、〝頑張る健康〟から〝楽しむ健幸〟へと対象を拡大する。亀ヶ谷氏は「社会性を帯びたヘルスケア活動は自助や公助から〝互助〟へと変化している」と指摘している。

 少子高齢化による生産年齢人口の減少により、人手不足はますます加速し、企業にとっては人材の定着と離職を防ぐことが経営上の課題となる。また、人手不足により一人あたりの業務量が増え、うつや心の病を起こすと療養に長い時間がかかることも経営上のリスクとして挙げられる。さらに、これらのリスクに応じた離職対策やストレスチェック強化、生産性の維持および向上など、個別の対策を講じることで、かえって企業全体の仕事が増え、悪循環に陥ることも懸念される。

 亀ヶ谷氏は「特に人手不足やそれによる業務過多で、働く人の心身の疲弊は更なる業務効率の低下を招く社会問題だ。その原因は企業と従業員のコミュニケーション不足であり、各企業も働きやすい環境を作りに注力している。しかし原因と対策を一対一と考えるのではなく、健幸度の低下が根本原因として解決しなければならない」とウェルビーイングの意義を語る。

 SHDは課題の解消に至らない原因を、企業による従業員への対策が、本音を正しく把握できない「現状把握」と、傾聴と対話がない「実行計画」と、実行が不十分な「実践行動」で回っている、と指摘。そこでSHDは企業と従業員の仲立ちとなり、両方のメリットである「ウェルビーイング」を指向することで、働き方のギャップを埋め、お互いをつなげていくサービスを展開した。


 SHDの提供サービス

①ヒューンマンスキル(協働能力)育成プログラム

 脳のメカニズムを通し、深い自己理解ができる。これは同時に他者理解にもつながるため、仕事、プライベート双方で良い変化が起きる。SHDの考える研修は点ではなく、線であり、その出発点に深い自己理解が必要となる。目指す方向は、自律型人材へとつながっていく。

 「医療目的ではないが、ココロとカラダとキズナの全体を統合して可視化していく。脳科学をベースにし、人と人とが関わる上で欠かせない協働能力(ヒューマンスキル)を育成するプログラム」亀ヶ谷氏は語り、統合医療の医師からも指示を集めているという。

 

②健幸度測定アプリ「Happiness Book」

 92問のアンケートに回答することで、主観と客観のウェルビーイング度、ココロ・カラダ・キズナの健康度、ライフステージやパーソナリティ、行動変容ステージ、1週間の平均歩数などが全て取得できる。組織ごとに自由にアンケートを追加することも可能。


 亀ヶ谷氏は講演でキズナに関わる意識のメカニズムを錯視を用いて説明。

「左図のような図形を見た際、人間の脳はある一点しか認識できない。自分が意識の焦点を当てた点以外は、補正されて視界から消失するからだ。これを日常的に脳は〝見えている〟と処理しているが、一点を見ている一方で見えていない点が生まれている。自分(主観)で見ている意識のスポットライトと他人(客観)の意識のスポットライトは違う。この錯視のような意識外で生まれる齟齬を、客観的な補正を行って、主観による〝まさか〟という気づきを与えて、歪みのない人間関係の構築に結びつけることができる」

 


日本独自のWB=「健幸」を創出

 ウェルビーイングはWHOが掲げたテーマであり、日本のみならず世界に共通する指針でもある。亀ヶ谷氏は「日本は東洋的と西洋的な観点を持ち合わせている。例えば禅が海外で浸透・評価され、日本に逆輸入されたように日本独自のウェルビーイング=〝健幸〟が生み出せると考えている。日本の足元にイノベーションの素地があり、健幸という新しい幸福の指標の確立のため、プラットフォームを構築していきたい」と語った。

 オンラインも含め多くの記者が参加し、時間いっぱい質問が及んだ記者会見で、JAHIの今西信幸会長は「ヘルスケアは対象が個人だが、ウェルビーイングは企業も含めた大きなテーマだ。今後ウェルビーイング市場は非常に大きな役割を果たしていくだろう」と、亀ヶ谷氏の活動に大きなエールを送った。

握手を交わす今西会長と亀ヶ谷氏