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厚労省「敷地内薬局に係る調剤基本料」に対し意見書を提出/JACDS

チェーン事業者抜きの議論「合理性欠き懲罰的」

 一般社団法人日本チェーンドラッグストア協会(JACDS)は12月8日(金)に定例合同記者会を開催した。JACDSを通じて厚生労働省に「特別調剤基本料の薬局を有する開設者の体制評価(イメージ)」に対する意見書を提出することを決議した。(取材=中西陽治)

 11月29日開催の中央社会保険医療協議会において、厚生労働省より「敷地内薬局がひとつでもあれば開設者(グループ)に属する薬局全ての調剤基本料を一律に引き下げる」とのイメージ案(※画①②参考)が示された。そのイメージ案に対しJACDSは意見書を通じ、強く反対する姿勢を示した。

会見で意見書提出について語るJACDS会長の池野隆光氏

意見書抜粋

(薬局評価の本来のあり方)

1.薬局は本来、個別にその果たしている機能に基づき評価されるべきであり、開設者の属性により評価に差を設けるべきではない。しかしながら、前回の診療報酬改定では、300薬局以上を有するグループの薬局全てに対して薬局機能とは無関係に一律の減額措置と地域支援体制加算要件の厳格化が導入され、今日に至っている。

 とりわけ地域支援体制加算については、「一定の機能を有する薬局の体制の評価」と定義されているにもかかわらず、その算定要件に調剤基本料が紐づけられ、機能や実績に応じた評価がなされていない状況について、今般の中央社会保険医療協議会ではこれを解消するための議論が全くなされていないことは誠に遺憾である。

(合理性のない懲罰的な措置)

2. これに加えて、今回の提案は、グループ内に敷地内薬局がひとつでもあればそれを理由に、当該グループの薬局全ての調剤基本料が大幅に引き下げられることが予想され、グループ全体の損益率に着目した前回の措置と比べても、何の合理性もない単なる懲罰的な措置と言わざるを得ない。

(行政の継続性・信頼性の毀損)

3. 敷地内薬局は、規制改革に関する閣議決定を受けて厚生労働省保険局が患者の利便のために導入した制度であり、それ自体合法的な薬局展開の一形態にすぎない。このような厚生労働省の施策に基づく敷地内薬局であるにもかかわらず、その存在を理由とするグループ全体の調剤基本料の引き下げは行政の継続性や信頼性を損なう施策であると言わざるを得ない。

(不適切・不透明な政策決定プロセス)

4. 調剤報酬は中央社会保険医療協議会が事実上決定するが、チェーン展開する事業者の代表はメンバーになっていない。チェーン事業者にとって死活的に重要な政策がチェーン事業者不在の場で十分な議論もないまま決定されることは政策決定プロセスとしても著しく妥当性を欠き、到底納得できない。

(医療経済実態調査に統計的なバイアス)

5. 調査対象薬局は1/25の無作為抽出中で行われる一方で、専門医療機関連携薬局は全数(137薬局)が調査対象となっているにもかかわらず、集計分析においては補正されたという形跡がない。このため、平均値等においてバイアスのある集計結果となっていることが懸念される。医療経済実態調査とその集計分析診療報酬議論の前提となるものであり、その非科学的で恣意的な取扱いは全く認めがたい自体と言わざるを得ない。

画① ※クリックで拡大
画②  ※クリックで拡大

直ちに意見書を厚労省に提出する意向

専務理事の中澤一隆氏

 意見書の内容について、JACDS専務理事の中澤一隆氏は「チェーン展開している店舗のうち、敷地内に一つでもあれば調剤基本料を引き下げる、と。もともと薬局の評価は、店舗ごとの評価であるべきで、〝一つでもあれば〟という点に合理性があるのか」と憤り、厚生労働省に意見書を直ちに提出する意向を示した。

会長の池野隆光氏(ウエルシアHD会長)は、「実はウエルシアにも敷地内薬局が存在する。例えば、後に出店周囲の土地が売却され、結果として敷地内薬局になったケースもある。どのような感覚で進めているのか疑問だ」と話した。