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「フェムテック、女性ヘルスケア市場」でディスカッション

日本ヘルスケア協会(JAHI)4月定期記者会見より

今ほど、ヘルスケアに関わる新しいトレンドが次々と生まれる時代の流れは過去にないだろう。その背景には治療から予防へと、健康に対する意識が変わってきたことと、国の施策でもある健康寿命の延伸の認識が個々のレベルでも広がってきていることが挙げられよう。そして、その概念を市場に落とし込むための、製品やサービスの開発に必要な最新テクノロジーが取り入れられ、信頼性と利便性が相まって消費者に支持されてきているのが、今のヘルスケア市場の成長の要因と言える。

女性のライフステージにおける健康課題を解決する「フェムテック」もその1つだ。

ただ、往々にして生理やPMS、セクシャルなどSRHR(性と生殖に関する健康と権利)領域にフォーカスされがちなのは否めない。マスメディアなどで取り上げられるフェムテックも、比較的若い女性の健康問題で、女性ヘルスケアという意味では偏っている。

エビデンスを基にした正しい情報を啓発し、健全な市場を形成するうえでは、一大トレンドといえども「フェムテック」は、女性ヘルスケア市場の一部分であり、市場形成への第一歩を踏み出したところと言えるだろう。

「フェムテック」をテーマに、ウーマンズの阿部代表を迎えて行われたJAHI定期記者会見の模様

このほど開催された、公益財団法人日本ヘルスケア協会(JAHI)の4月次定期記者会見では、「フェムテックの一大トレンドで変化した女性ヘルスケア産業 ~全員で女性ヘルスケア市場に関してディスカッション」と題し、スピーカーにはウーマンズの阿部エリナ代表が登壇。阿部代表は先の「第4回日本ヘルスケア学会年次大会・JAHI活動発表会」での教育講演にも登壇し、好評を得ている。本記者会見では、題名にあるように30分程度のワークショップ形式で、フェムテックについての参加者(記者)の認識を浮き彫りにしながら、阿部代表が知見を述べるかたちで進行した。

阿部代表から記者に対する質問

・フェムテックとは何ですか?
・フェムテックにはどんな商品・サービスがありますか?
・女性特有の健康問題といえば何?
・企業各社のマネタイズ・参入状況について、日々の取材を通じて、どのように感じていらっしゃいますか?
・女性ヘルスケア市場の拡大・定着のために必要なことは何だと思いますか?

企業側が思う女性の健康問題と消費者が抱える健康問題に乖離
大丸梅田店でのコンシューマー向けイベントで人気ダントツだったのは?

そもそも「フェムテック」とは何だろうか。

阿部代表は冒頭「1/3」という数字を示した。4月に徳島県庁主催の女性の健康、フェムテックを学ぶ企業セミナーで講演した際、「フェムテックを知っている」と手を挙げたのは3分の1程度で、都市圏と地方ではヘルスケアトレンドには差があることを実感したという。矢野経済研究所の調査でも、生活者のフェムテックの認知度は低く、「知らない」という人の方が圧倒的に多いという結果になっているようだ。同じく矢野経済研究所によると、女性が抱く健康の悩みは、王道の月経痛やPMSなどよりも、肩こり、ストレス、髪の毛、目、体重、肌、睡眠などが上位にランクされているという。

これらの実態や調査結果から阿部代表は、企業側が思っている女性の健康問題と、消費者が抱えている健康問題にはまだまだ乖離があるとの見解を述べた。

「へバーデン結節」をケアする商品(指輪)がダントツの人気
女性用プロテイン、妊婦でも安心して飲めるビールなどの食品も

女性ヘルスケア領域に特化したイベントの企画で、実際どんな商品が人気なのかについても言及した。例えば、昨年、大丸松坂屋百貨店 大丸梅田店で行ったコンシューマー向けイベントでは、睡眠ケア、ホットフラッシュ対策インナー、歩行器などの関心の高さもさることながら、人気、売り上げともにダントツでナンバーワンだったのは「へバーデン結節」をケアする商品=おしゃれな指輪だったという。食品も人気が高かったようで、女性用プロテイン、PMSケアサプリ、妊婦でも安心して飲めるビール、妊娠をサポートするサプリメントなどに注目が集まっていたようだ。

フェムテックのブームをハイプ・サイクルで見ると、「過度な期待のピーク期」から「幻滅期」へ移ってきたという見方もあり、今後、社会実装を果たし市場として定着するのかどうか、期待と懸念がある。

阿部代表は女性ヘルスケア市場の拡大・定着のために必要なことは、1つは企業がマーケティングをしっかり学ぶことと強調する。特にフェムテック領域では新規参入、ベンチャー企業が多い。エンパワーメントだけで製品開発をしてしまって、ヘルスケアマーケットの基本を見落としているところが少なくないと言う。そして2つ目として、メディアの力は大きいとし、正しい理解のうえで情報を発信してほしい、一過性でなく継続的に発信してほしいと訴えた。

今後も人材不足を課題とする産業界だけでなく、あらゆる分野で女性の活躍が不可欠となる日本。女性ヘルスケア市場の拡大が日本を強くすることにもつながる。ちょうどウーマンズでは、毎年恒例の業界人向け女性ヘルスケア市場の予測レポート「女性ヘルスケア白書 市場動向予測レポート」を配信したところだ。事業開発、PR戦略、広告販売施策の指針として、参考にしてみてはいかがだろう。(石川 良昭)

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