ヘルスケア情報サイト「Hoitto! ヘルスケアビジネス」(ヘルスケアワークスデザイン株式会社)

ウエルシア薬局×明治 対談企画
店頭からフェムケア情報を発信し
消費者のリテラシー向上に貢献

ここ数年、「フェムテック」「フェムケア」などの呼称の元で、女性のライフステージにおける様々な課題解決を目指す動きが活発だが、小売業の多くは「興味はあるが、領域が広範で売場づくりの正解を見出せない」と悩んでいる。ただ、小売業の中でもドラッグストアは、女性客を対象としたビジネスで成功しており、700億円とも言われるフェムケア市場にもっとも近い業態だと思う。そこで今回、カウンセリング販売に定評のあるウエルシア薬局と、昨年にフェムケア領域の新商品を発売した明治を引き合わせ、これからのフェムケア市場を考える対談を企画した。(インタビューと文=八島 充)

ウエルシア薬局 
 商品本部 ヘルスケア商品部長 土山雄平(どやま ゆうへい)氏 /画像左
 商品本部 商品企画部 古田 愛香(こだ あいか) 氏 /画像中央

明      治
 グローバルニュートリション事業本部 乳幼児・フェムニケアマーケティング部 
 吉田 菜々絵(よしだ ななえ) 氏 /画像右


美と健康の様々な相談に応える

――女性の支持率が高いウエルシアですが、お客様とどのように向き合ってきたのか教えてください。

ウエルシア・土山氏

ウエルシア・土山氏 ウエルシア薬局は、「お客様の豊かな社会生活と健康な暮らしを提供します」という企業理念のもと、調剤併設、カウンセリング販売、深夜営業といった、いわゆる「ウエルシアモデル」によって、あらゆるお客様の要望をワンストップで提供することに努めてきました。

カウンセリング販売では、薬剤師・登録販売者・ビューティアドバイザー・管理栄養士などの資格者による健康や美容に関するカウンセリングサービスを提供しております。

また女性のお客様と言っても、学生からお勤めの方、妊娠中・育児中の方、ご高齢の方と様々です。ライフスタイルに合わせた商品やサービスの提供も当社の使命と心得て、鋭意強化しているところです。

食品の強化もその一つです。当初は利便性の一環で始めたものですが、「食生活で健康になりたい」「美しくなりたい」というニーズに応えた商品群を充実させています。これらのニーズを網羅したPB「からだウエルシア」も、直近では200アイテムを数えるまでになりました。


ニーズはあるのに手が届き難い

――フェムケアやフェムテックの言葉が流行っている状況を、メーカー・小売業それぞれの立場でどうお考えですか?

明治・吉田氏

明治・吉田氏 のヘルスケアに関する商品は以前からありますが、フェムケアの言葉が流行り出した3年ほど前から、様々な業種業態が新たな商品やサービスを開発しています。そうした中で吸水ショーツや月経カップが誕生しましたが、店頭では未だ、「月経カップはありますか?」と気軽に尋ねられる環境ではありません。女性の生理に対する閉鎖性が、「ニーズはあるのに手が届き難い」状況をもたらしていると感じます。

ウエルシア・古田氏

ウエルシア・古田氏 私も一消費者としてフェムケア関連商品を探していますが、目的の商品が見つからないことは少なからずあります。一般の消費者にとって売場は情報を収集する場なので、売場でフェムケア商品が手軽に買えるようになれば、日本人の(フェムケアに対する)リテラシーがもっと高まると考えています。

明治・吉田氏 誤った情報が横行していることも残念です。正しい情報をどう伝えていくのかは、私どもメーカーに課せられた課題でもあります。

ウエルシア・土山氏 ビジネスの観点で言うと、市場ができていない商品を陳列することはリスクとなります。その一方で、新たな市場をつくるには、店頭で商品を陳列し、消費者に気づきを与えることが重要です。当社も、注力するカテゴリーや商品の売場を広くとり、認知度を高める努力をしていますが、フェムケアの領域はまだこれからという認識です。


デリケートゾーンのケアにニーズ

――それぞれに課題が出てきました。解決のために何をすべきでしょうか?

ウエルシア・古田氏 先ほどは店頭起点でお話ししましたが、例えば吸水ショーツの性能を店頭で実演することは物理的に難しい面があります。使用感に対する不安や疑問に答えるツールとして、SNSを活用した情報発信はかなり有効だと考えます。

――売場づくりはどこから着手すべきでしょうか?

ウエルシア・古田氏 分かりやすいのは「生理用品」周りのラインロビングでしょう。近年は働く女性の増加や更年期の若年化などで、デリケートゾーンのにおいを気にする方が増えています。

におい対策にボディソープの使用はお勧めできないのですが、それを知らない方も多いのです。例えば生理用品の近くに におい対策商品を並べ、正しい洗浄や保湿の仕方などの情報と共に提供することは、それほど高いハードルではないと思います。

明治・吉田氏 デリケートゾーンのケアに対するニーズは確実にあると思います。例えば、加齢に伴う女性ホルモン(エストロゲン)の減少により、おりものの量が減り膣の乾燥による痛みで歩くのも辛いという更年期の方は少なくないそうです。そもそもデリケートゾーンは悩みを相談しにくい領域ですが、店頭に商品が並ぶことで、相談しやすい環境も作れるのではないでしょうか。


女性の6割が「対策せず」

――食の領域で健康に貢献してきた明治さんが女性特有の健康課題にスポットを当てた商品を上市した背景を教えてください。

明治が発売したフェムニケアフード「アルファルナ」

明治・吉田氏 今から6年前、美容ドリンクの開発に携わっていた頃に遡ります。私自身女性特有の健康課題に悩む一人で、美容に留まらない商品開発に興味がありました。ある日、女性特有の健康課題の悩みについて当社の開発担当に相談したところ、「実は私も悩んでいる」と返ってきたのがヒントになりました。

その後社内の女性にヒアリングし、各々が異なる悩みを抱え、かつその改善策を見出せていないことが判りました。ビッグデータの調査でも、日本人女性の約6割が女性特有の健康課題に対し「対策をしていない」という結果が出ました。「病院に行きたくない」「お薬に頼りたくない」「金銭的な理由」などの理由で、我慢している女性が多かったのです。

この問題に対して、「食品メーカーにもできることがあるはず」と考え上司に相談しましたが、初めはなかなか理解を得られませんでした。そこでライフステージ毎に生じる女性の悩みが社会的経済損失に繋がっている事を訴え、徐々に問題の重要性に気付いてもらうようになりました。

ここから、具体的に何ができるのかの研究が始まります。そうして誕生したのが、女性特有の健康課題に着目したフェムニケアフード「アルファルナ」です。


さまざまな選択肢がある!

――明治さんとしては結構尖った商品ですよね。ウエルシアさんから見た「アルファルナ」の印象をお聞かせください。

ウエルシア・古田氏 私は鎮痛剤を用いますが、これはあくまで対処療法です。対して「アルファルナ」は、「日々の生活習慣の中で手軽に食べる」という点が新しいと思いました。「様々な選択肢がある」という気づきを与え、能動的にケアをしていこうというポジティブな発想も気に入りました。

――昨秋からウエルシアも同商品を販売していますが、具体的にどのような展開をおこなっているのでしょう?

ウエルシア薬局での「アルファルナ」陳列事例(左が定番、右がエンドプロモーション)

ウエルシア・土山氏 幅広い女性が気軽に買いやすい環境づくりを念頭に、比較的立ち寄り率が高いサプリメント売場と美容関連の健康食品売場で展開しました。このほか、まだ実施には至っていませんが、生理用品のクロスMDなども検討の余地があると考えています。

ただ、画期的な商品でも、カテゴリー内に1ブランドだけでは訴求力が足りません。ブランドのシリーズ化などを通じラインアップが充実すれば売場での認知度が高まり、売上増につながると考えています。

プレーヤーの新規参入に期待

――この言葉を明治さんはどう受け止めますか?

明治・吉田氏 おっしゃる通りです。そのために私どもも努力をしていますが、このカテゴリーに様々なメーカー様が参入してくださることも期待しています。 

昨秋の発売来、「アルファルナ」は続々とラインアップを増やしている

現在は、普及促進向けた情報発信に力を入れています。「アルファルナ」の販促資料の充実はもちろん、ライフステージで変わる女性の体の仕組みを解説するセミナーなども催しています。販売店から消費者に至る全ての方に理解を深めてもらえるよう、引き続き努力して参ります。

ウエルカフェでの相談会の風景

――明治さんのセミナーは、ウエルカフェで実施している健康相談会にも応用できそうですね。

ウエルシア・古田氏 そうですね。「悩んでいるけどケアの方法が分からない」という、多くの女性から良い反応があると思います。

明治・吉田氏 機会をいただければ、全力で協力させていただきます!


性差の壁超えた共通認識を醸成

――もっと男性の理解を促す必要もありますよね?

ウエルシア・古田氏 働く女性の中には、生理の不快な症状が出た際に出社すべきか、休暇を取るべきかを迷う方がまだまだいると思います。そのジレンマを解消するために、男女間で情報を共有することは大切だと思います。

明治・吉田氏 当商品を販売するにあたり、男性を含めた営業の勉強会を開きました。初めは男性からネガティブな意見も出ましたが、勉強会を重ねるにつれて、「家族のことを知るきっかけになった」「娘のために何かしてあげたくなった」というポジティブな意見が目に見えて増えました。

男女の性差は確実にありますが、正しい情報を真摯に伝えることで、性差の壁を越えた共通認識が生まれることを実感しています。

ウエルシア・古田氏 とても参考になるエピソードですね。

他方、フェムケアがあれば当然、メンズケアも存在します。性差の相互理解が進むことで、それぞれの商品やサービスが充実し、消費者の課題解決に一層お役に立てる環境が整うことを期待しています。そうした良い流れを、メーカーさんと一緒につくっていきたいですね!

――性差の問題、それに伴う性差別の問題は根が深く議論に終わりがないのも事実です。この対談が川上(メーカー)から川下(小売業)そして、消費者の行動変容を起こす一助になることを願っています。本日はありがとうございました!