
9月10日は世界自殺予防デーでした。WHO(世界保健機関)によると、世界では年間72万人以上が自殺によって命を落としており、単純計算すると、約44秒に1人が世界のどこかで自殺により亡くなっていることになります。さらにWHOは、自殺で亡くなる人1人に対して、20人を超える人が自殺を試みている可能性があるとしています。
日本では、2025年の自殺者数は19,188人となり、統計開始以降、初めて2万人を下回りました。自殺者数は減少傾向にあるものの、日本の自殺死亡率は先進国の中でも依然として高い水準にあり、さらに深刻なのが、子どもたちの自殺です。2025年の小中高生の自殺者数は538人となり、統計開始以降、過去最多となりました。(厚生労働省・警察庁「自殺の状況」より)
自殺を考えている方は、必ずしも「死ぬこと」だけを望んでいるわけではなく、「生きたい」という思いと「死にたい」という思いの間で、心が揺れ動いていることが多いとされています。
店頭に立っていると「家族もいないし、いつ死んでもいい」「生きているだけでつらい」という方や、リストカットの跡が残る方とお話しする機会があります。傷を見るたびに「私は死にたくなるほどつらいんだ」と叫んでいるように感じます。「死にたい」という言葉や自傷行為など、自殺の危険を示すサインに気づいたときは、軽く受け流さず、真剣に受け止める必要があります。
私が大学生の頃、先生から「患者さんが最後に会う医療従事者は薬剤師です。薬剤師は最後に患者さんの声を聞くことができる職業です。」と習いました。
私たちは、最後に患者さんの言葉を聴き取ることができます。薬剤師をしていると「先生には聞けなくて…」と言われる経験をされている薬剤師も多いはずです。「先生ではなく、私に聞いてくれてありがとう。」と思いたいのに…。「先生には聞けなくて…」の一言を聞いた瞬間、何を聞かれるのかと緊張が走り、身構えてしまう時もありますが…(笑)
話すことで気持ちが落ち着く方もいれば、悩み事を口にすることでさらに不安が大きく膨らんでしまう方もいらっしゃるので、対応は一人ひとり異なると思いますが、生きることへの執着が薄れてしまっていると感じた方にはあえて、「あなたが死んだら、私が悲しいです。また、来週(来月)必ず私に会いに来てくださいね。私に会うまでは、死なないでね。」と、伝えることがあります。必要に応じて医療機関や専門家、相談窓口など、適切な支援につなげることも薬剤師の仕事です。
正解は、正直わかりません。でも私たち薬剤師は、命の重さ、儚さ、そして尊さを知っているはずです。最後に会う医療従事者として、患者さんのSOSを絶対に見逃さないようにしたいものです。
一人の命を救うことが、今までつながれてきた命、そしてこれから先へとつながっていく命…。たくさんの命を救うことになるはずです
私自身、目の前が見えなくなり、「消えてしまいたい」と思ったことがあります。そんな私に、母は危うさを感じたのでしょう。その頃「死ぬときは一緒よ。絶対に一人で死なないでね。もし死にたくなったら、ママに話してね。一緒に死んであげるから、一人は絶対にダメよ。」と話してきました。私はその時、「わかったよ」とだけ母に伝えました。
それから時は流れ、私は薬剤師になり、結婚し、娘を出産しました。そして、母とのお別れが近いと感じた時、「ママと、『死ぬときは一緒』って約束したのに、今、ママと一緒に死ねない。〇〇(娘)を残して死ねないよ。ママを一人にしちゃう。ごめんね。」と伝えると、母は「何を言っているの!それでいいのよ!」と笑っていました。
母は昔、教え子を自殺で亡くしています。困ったときには、時間なんて気にすることもなく、いつも母に連絡をしてきた方でした。今のように携帯電話もない時代、自宅の電話が鳴り、夜中に母が呼び出されたことも…。私も何度かお会いし、一緒によく遊んでもらいました。その方が、自ら命を絶ったのです。「あんなに連絡してきたくせに、なんでこんな大事なことを一人で決断したの。そんなに私は頼りなかった?」と、母はずっと自分を責め、泣いていました。大切な教え子の死は、母にとって、とても大きな悲しみだったのだと思います。
それから母は、「私と関わる人は、もう絶対に自殺では死なせない。」と心に決めていたような気がします。
「私は一人じゃない」その想いが、人を支え、人を強くします。
母は私に「優しいだけでは、それは本当の優しさではないの。人に優しくしたいなら、強くなりなさい。紗耶華、強くならなきゃダメよ。」とよく言っていました。もしかすると、守りたい人がいるから、人は強くなれるのかもしれません。
「強くなんてなれない。まだまだママに守っていて欲しいよ。」そんなことを言ったら「甘えんじゃないわよ!しっかりしなさい。」ってママはきっと怒るだろうね。
大好きなママへ愛を込めて…
三浦 紗耶華