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おやつの価値と可能性を世界に発信〜おやつカンパニーの挑戦

国内では「健康スナック」カテゴリーの育成目指す

 株式会社おやつカンパニー(手島文雄社長)は、「BODY STARプロテインスナック」を昨年3月に発売したのを機に、「食と健康」カテゴリーの創造を担う商品の開発を進めている。今年9月から一部ドラッグストアでテスト販売している「おやつサプリ」シリーズは、来年に全国販売を開始する計画だ。このほど同社を取材し、「食と健康」市場に対する期待と、当面の事業戦略について話を聞いた。基幹商品の「ベビースターラーメン」がアジア各国でも高い認知度を得ている同社は今、「おやつ」の価値と可能性を世界に発信しながら、新たな成長軌道を描いている。(取材・構成=八島充)

取材に応じてくれた(左から)坂本氏、香川氏、柳氏

もったいない精神から生まれた「ベビースターラーメン」

3代目キャラクター「ホシオくん」を配した現在の「ベビースターラーメン」(2017年〜)
1959年、10円で販売された初代「ベビースターラーメン」

 おやつカンパニーの前身である松田産業は1948年に三重県で創業し、麺類製造を営んでいた。戦後の食糧難の中で、学校給食等に即席麺を提供し、国民の栄養摂取を支えてきた会社だ。

 当時のオーナーは、即席麺の製造工程で生じた“かけら”を、「もったいない」という思いでアレンジし、従業員の家族や近隣住民に配っていた。それが「おいしい」と評判になり、1959年に商品化したのが、現在の「ベビースターラーメン」となる。

 評判を聞きつけた名古屋の卸売業が流通を支援すると、「ベビースターラーメン」の人気に火が点き、瞬く間に全国に広がっていく。今や老若男女に愛される国民食の1つと言っても過言ではない。

 現在の商号「おやつカンパニー」となったのは1993年で、商号変更とともに新CIを導入している。その経営ビジョンは『たっぷり、たのしい、「おやつ」と「夢」の創造』である。

「『たっぷり』はお腹を満たすという意味だけではなく、心も満たしてもらいたい…そんな願いが経営ビジョンに込められています」(マーケティング本部マーケティング戦略2部次長・坂本茂樹氏)

市場性×自社の強み=健康系スナック

坂本 茂樹 氏

 コロナ禍で盛り返した菓子市場だが、直近10年間は微増か横ばいで推移している。人口減に伴う胃袋の数の減少にどう挑むかは、食品業界全体の課題である。当のおやつカンパニーも、現在好調な「ベビースターラーメン」や「ブタメン」に次ぐ、新たな柱の育成というミッションを抱えていた。

 このミッションを解決するため、2017年に外部から要職を招きマーケティング本部を設置した。「消費者第一主義」を合言葉に市場の推移を分析し、今の消費者が何を求めているかを追求し現在に至る。

 横ばいの菓子市場をカテゴリー別に見ると、乳酸菌入りや高カカオ成分のチョコレート、あるいは素焼きのナッツ類などは確実に成長している。これを受け同社は、新たな柱となる商品の照準を、「食と健康」の領域に定めることにした。

 「菓子のみならず、あらゆる市場でヘルスケア関連の商品が伸びていますが、当社の強みを活かせるスナック菓子の領域には、確立されたブランドがまだ少なく、ここに勝機があると考えました」(前出の坂本氏)

ターゲットを絞りリピーターを得る

「BODY STARプロテインスナック」

 そうして誕生したのが、「BODY STARプロテインスナック」である。「高タンパク大豆スナック」というサブタイトルをつけ、1袋にタンパク質20g、食物繊維4.8g、鉄2.7mg、亜鉛1.4mgを含ませ、カロリーは163kcalに抑えた(共にバーベキュー味の表記)。

 開発にあたっては、大手ドラッグストアから様々な助言をもらったという。パッケージデザインも、同社で支持される「かわいらしさ」をあえて封印し、体作りに関心の高い層にターゲットを絞り込んでいる。

 しかし当初は、思うように配荷が進まなかった。「ベビースターラーメン」のブランドを活かせない商品ラインのために、同社の営業担当も積極的に売り出せずにいた。

 そうした中、あるデータがマーケティング本部に届く。「BODY STARプロテインスナック」が、ネット通販で何度もリピートされているというのだ。

香川 玲子 氏

 「トライアルさえしてもらえれば、リピーターを獲得できると知ったことは自信になりました。この事実を営業担当に説明し、配荷店舗を増やすことが売上につながり、最終的にドラッグストアの顧客創造にも貢献することを理解してもらいました」(マーケティング戦略2部部長・香川玲子氏)

 現在はドラッグストアを中心にじわじわと配荷店舗を増やし、商品設計を助言した先の大手ドラッグストアでは、同タイプの商品をPBとしても販売を始めている。

 最近では「高タンパク大豆スナック」という新たなカテゴリーも認知されつつあり、その期待感から同商品は、日本チェーンドラッグストア協会が8月に開催した「食と健康アワード2022」で優秀賞を受賞している。

DgSに「新たなカテゴリー育てる」気運

 ドラッグストアの期待に応えるべく今年9月から、「小腹がすいたら栄養補給」というキャッチコピーを用いた「おやつサプリ」シリーズ3品を、同チャネルの一部チェーンでテスト販売している。食事だけでは補いきれない栄養成分を配合した、ひとくちサイズのスナック菓子である。

ドラッグストアでテスト販売している「おやつサプリ」シリーズ3品

 ドラッグストアでテスト販売をする理由について香川氏は、「新商品が市場に根付くには、ある程度の時間が必要です。しかし競争の激しい菓子業界では一般的に、新商品でも発売後の店頭回転の状況で判断されることが多く、新たなカテゴリーが育ちにくいのが実情です。ただ近年、一部のドラッグストアでは、『新たなカテゴリーを育てたい』という気運が高まっており、弊社の挑戦を受け入れてくれる土壌が整い始めていることを感じています。当商品の購入をきっかけに、サプリメントの未購入層に対し、サプリメントへの興味を抱いてくれるきっかけになれば、という期待もあるようです」という。

 テスト販売の結果が見えてくるのはこれからだが、栄養士や専門家の方々からの期待は大きいという。現在は、「おやつサプリ」のラインで機能性表示食品の届出をおこなっており、受理されればドラッグストアとの協業に弾みがつく。おやつカンパニーの取り組みが、「食と健康」の市場創造の起爆剤になる可能性を秘めている。

海外でコミュニケーションを強化

 停滞気味の国内菓子市場に対し、生活水準が向上するアジア市場の開拓は、各メーカーが注力している部分である。

 おやつカンパニーもアジア進出にいち早く名乗りを挙げた企業の1つで、83年に香港、86年に台湾へ「ベビースターラーメン」の輸出を開始している。2017年には台湾工場も竣工し、直近では31の国と地域で展開している(2022年5月時点)。

柳 友彦 氏

 今年1月、他社で海外戦略を歴任した柳友彦氏を、常務執行役員海外ビジネス推進部長(おやつインターナショナル総経理)として招き、アジア圏でのさらなる飛躍を目指している。

 柳氏にmade in Japanの菓子が海外で成功する秘訣について聞くと、「食べた時の満足感に加え、また食べたくなる動機づけ、つまりユーザーに愛され続ける関係づくりが重要です。『ベビースターラーメン』のブランドアンバサダーであるホシオくんを用い、現地の消費者と密なコミュニケーションを取りながら市場を開拓したいと考えています」と語っている。

 ベビースターラーメン3代目キャラクター「ホシオくん」

 また、アジア圏では日本以上に健康志向が強まっており、今回紹介した「BODY STARプロテインスナック」に興味を持つ国も現れている。異なるレギュレーションの壁を越えられれば、国内で培ったノウハウが、各国で花開くことになる。

 「健康を考えてお菓子を我慢したり、罪悪感を抱きながらおやつを食べるのでは “心の健康”は満たされません。当社が掲げる『たっぷり、たのしい、「おやつ」と「夢」の創造』は、国内外を問わず共通化かつ永遠のビジョンです。世界中の方々に、弊社商品を食べて身体も心も健康になってもらいたいと考えています!」(柳氏)という。

「おやつ」の可能性広げる「カンパニー」

 創業から75年が経ち、来年は おやつカンパニーに商号変更してから30年の節目を迎える。

 「おやつ」そのものを社名に掲げる同社の活動は図らずも、世界の潮流とリンクして、「おやつ」の持つ新たな可能性を広げているように思う。「おやつ」と「夢」の創造を目指す同社に、今後も注目したい。(了)