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【新連載】矢澤一良博士が行く!ウェルネスフード・キャラバン【対談】

≪第一回≫おやつカンパニー専務執行役員 稲垣庄平氏

 長年、ヘルスフードの推進および健康長寿に資する食品原料の研究を行ってきた矢澤一良博士(早稲田大学 ナノ・ライフ創新研究機構 規範科学総合研究所ヘルスフード科学部門 部門長)が「ヘルスフードのこれから」を探る対談企画「矢澤一良博士が行く!ウェルネスフード・キャラバン」が新たにスタート。企業が取り組むヘルスケア産業への思いと商品・サービスを通じたウェルネスライフの実現について、矢澤博士が聞き手となり、紡いでいく。記念すべき第一回はおやつカンパニー専務執行役員の稲垣庄平氏。象徴的な社名に込められた思いから「ベビースター」誕生秘話、「おやつサプリ」「Body Star」などドラッグストア店頭でも販売が加速する健康軸の商品の狙いについて、矢澤博士が聞いた。

矢澤一良博士(以下・矢澤氏):健康食品を始めとした食品、素材、技術を追い、私のライフワークである「食による予防医学」に一脈通じる方々に突撃インタビューをさせていただく「ウェルネスフード・キャラバン」がスタートしました。記念すべき第一回は私も懇意にさせていただいておりますおやつカンパニーさんです。

矢澤一良博士

私は機能性おやつプロジェクトや国際おやつプロジェクトをおこなっており、「おやつ」という言葉は大変思い入れがあります。ですから記念すべき第一回目がおやつカンパニーさんであることに喜びを感じています。

おやつは間食・補食として食分野で大事な位置づけであることが徐々にわかってきています。日本では江戸時代から「やつどき」(午後2時~4時)に食べる間食、を起源とする「おやつ」ですが、なぜその言葉を社名に掲げていらっしゃるのでしょうか。

稲垣庄平専務(以下・稲垣氏):おやつカンパニーの創業は1948年です。伺うと偶然にも矢澤博士と同い年の75歳になりますね。1959年に「ベビースターラーメン」の販売を始め、ロングセラー商品としてご愛顧いただいている企業です。

私は1980年に当時は創業家の名前を冠した松田食品という企業名の時に入社いたしました。

2代目社長である松田好旦(現・会長)の元でCI(コーポレート・アイデンティティ)を実行し、1993年に「おやつカンパニー」という会社に改めました。

稲垣庄平専務

当時は創業者も存命でしたが松田好旦社長は父親である創業者の理解を得たうえで「創業家の名前を残す必要はない。松田食品が何を作っている会社なのか、はっきりわかる会社名にしよう」と示し、会社名の社内応募キャンペーンをし、ずばり体を表す名としてCIプロジェクトのリーダーでもあった松田好旦が「おやつカンパニー」という会社名に決定したのです。

矢澤氏:社名候補には「ベビースターカンパニー」も挙がったそうですね。それほどのインパクトを持った「ベビースター」はどのように誕生したのでしょうか。

稲垣氏:松田産業(松田食品の前身)の時代に即席麺を作っていました。即席麺は製造工程で麺の欠片が必ず出てしまいます。

 その麺の欠片に味付けして油で揚げてみたところ、すごく美味しく仕上がったので、従業員に配ってみんなで喜んで食べていたそうです。麺の欠片があまりに美味しいので、問屋さんにもっていったところ「これは絶対に売れます。これをお菓子として売りましょう」との提案を受けました。その後問屋さんが全国に広めてくださり、販路が拡大して今に至ります。お子さんの数は減っているのですが、「ベビースター」の売上は現在も右肩上がりでして本当にありがたい商品だと思っています。

麺の欠片から始まった商品で、1950年代ごろですが、当時から当社には「もったいない」という考え方があったのです。

矢澤氏:まさにSDGsに通じる商品ですね。現在問題になっているフードロスにも対応する開発視点だと思います。

形の曲がったキュウリや茎の部分をカットしてしまう野菜、そこに健康にかかわる栄養素がある。私もフードロスに関心を深めて活動を行っていますが、まさに食品の在り方、フードロスに早くから対応してきた「ベビースター」の開発視点に感銘を受けました。

稲垣氏:おやつカンパニーの理念は〝たっぷりたのしい おやつと夢の創造〟です。つい近年まで、日本の食事は1日2食でした。矢澤博士がおっしゃるように「やつどき」の空腹を満たすのが、「おやつ」のルーツです。現代は、朝食・昼食・おやつ・夕食・夜食の「5食時代」といわれ、食事と「おやつ」のボーダーレス化も進んでいます。いつの時代も、空腹を満たすことが「おやつ」の本質だと考えています。

矢澤氏:おやつカンパニーさんが今やっていること、やろうとしている未来をはっきりと現わしていますね。

〝楽しい〟は言葉だけにとどまらない、精神(心)と脳の健康、そして社会性を満たすウェルビーイングの本質です。この精神と脳と社会性の健康が満たされてこそ〝幸せ感〟につながり、ウェルビーイングが実現できると考えています。

 そう考えるとおやつカンパニーのお考えの中に、幸せ感の象徴的な感情〝楽しい〟がたっぷり詰まっていますね。

 その楽しさはおやつが好きだから、体が必要としているから、ということだと思うのです。〝おやつと夢〟もとても素晴らしい理念だと感じます。楽しくなければ夢は描けないし、夢を描くことで幸せ感が生まれる。これを創造していく企業であり、おやつカンパニーさんが抱く哲学なのですね。

稲垣氏:我々のフィールドはおやつカテゴリーの中でもどちらかというとスナック菓子の範疇です。親御さんがお子さんに与えるときもそうですがスナック菓子を食べるときの罪悪感に向き合ってきました。しかし「おやつは美味しいし、やめられない」、食べたい欲求にこたえられるのがおやつの良いところだとも思います。

 罪悪感があったとしても、今に至るまで数多くのお客様に愛されてきたおやつ文化です。美味しさと楽しさを感じていただけるおやつだからこそ、罪悪感以上の幸せという価値をご提供できると思います。

矢澤氏:なるほど。今は「おやつは補食」と捉える時代ですね。赤ちゃんもミルクを飲むのは1日3回ではないですし、胃が小さい・消化機能が弱い時は回数を分けた方が良い、という補食の考え方です。

また、食べられるものが限定される人に栄養成分を補う補食があります。ライフステージに合わせて特殊な栄養成分をとる、サプリメント的な意味合いとしての補食の重要性も科学的に証明されています。

おやつを補食と捉えるならば、罪悪感なく〝食べてもいい〟あるいは〝食べたほうがいい〟食だと考えられるのです。

おやつを食べる罪悪感がまだ少し残っているとしたら、〝食べ過ぎてしまう〟という点があるのではないでしょうか。おやつの美味しさを感じて味わうのではなく、例えばテレビを見ながら横になって惰性で食べきってしまうような食習慣が、食べ過ぎや太りすぎといった罪悪感の元になっていると思います。

今やそういった食習慣を避けるべく比較的カロリーを考えた商品仕様が増えてきていますよね。

稲垣氏:そうですね。お客様の中に気にする方もいらっしゃいますのでカロリーを抑えた商品もラインアップ拡充を検討しています。

 塩分に関しては、「ベビースターラーメン」も発売当時と比べて1/2に抑えています。日本人にとって塩味は非常になじみがあり、一方でシビアな味覚です。ですから「ベビースターラーメン」のおいしさの決め手〝押し味〟にはこだわっています。口に入れて感じる最初の味から、中味、そして美味しさが続く最後の〝押し味〟はあと引く味として非常に重要です。

また「ベビースターラーメン」はカルシウムを含んでいるなど、健康の面でも進化しつづけているおやつなのです。

矢澤氏:「ベビースター」の歴史と変遷を感じるお話ですね。陰で工夫して塩分を抑えつつ塩味からくる美味しさはしっかりと保っている。食べ続けられるおやつとしての健康も考えつつ、味わいも維持している、ということですね。

矢澤氏:おやつカンパニーさんは近年、健康軸の商品に力を入れていらっしゃいます。中でも私は「おやつサプリ」の登場に驚きました。商品を通じた国民の健康増進、ひいては社会貢献についてどのように考えていますか。

「おやつサプリ」

稲垣氏:食べて幸せ、はもちろんですが、おやつを食べて健康になるという目標は、私たちにとって一つの願いでもあります。

 体が喜ぶような栄養成分を気軽に「おやつ」で取っていただける形を大きなテーマとして掲げて、3年前にプロジェクトをスタートさせました。

 「おやつサプリ」の形状は「ベビースターラーメン丸」と同じなのですが、このラーメン丸のような一口サイズにおいしさと栄養成分を封じ込め、おやつ感覚でサプリメントを摂取していただきたい、と考えて開発を進めていきました。

矢澤氏:「おいしい」商品はおやつを作る会社であれば、様々な技術をもって実現できることだと思います。

一方で機能性成分のような栄養素は、有用でありながら〝えぐい〟〝にがい〟〝すっぱい〟と人には違和感のあるような味を呈する場合が多いですよね。それが結局、サプリメント形状やカプセル形状が採用される要素でもあると思います。

ですが、おいしいものを食べると気持ちが前向きになります。

おやつカンパニーさんのように〝おいしい〟〝たのしい〟コンセプトお持ちですと、ある意味、栄養素主体の食品とは別の方向性。つまり「おいしいおやつ」を主体としてそこに栄養成分を加えていくような製品開発をされているように感じました。これは単に栄養摂取のために売れればよい、という考え方から一線を画す発想だと思うのです。これは食を通じた社会貢献ですね。

矢澤氏:通常サプリメントは錠剤やカプセル形状で、本来は味わうものではなく、栄養成分を効率よく補充する形です。しかしそのイメージの強いサプリメントに対し、私は「もっとおいしくてもいいんじゃないの?」と思い〝機能性のあるおやつ〟の創造に取り組んできました。

単なるおやつではない、機能を持ったおやつです。これをもっと増やしていくべきと言い続けてきました。正に「おやつサプリ」に通じるところがあると思います。

率直にお伺いしますが、「おやつサプリ」は〝おやつ〟と〝サプリ〟のどちらですか。

稲垣氏:おやつ7割・サプリ3割でしょうか。おやつだけれどもサプリの面も持った食品、というコンセプトですね。

矢澤氏:おいしさ、を第一に考える哲学につながるバランスですね。サプリメントとおやつを俯瞰で見ると、おやつカンパニーさんはその両方から歩み寄る形で商品を作っているように感じました。

矢澤氏:健康軸の商品についてもう少しお伺いします。

 機能性表示食品の届出受理は7000件を超えました(2024年2月の対談時点)。ドラッグストアは機能性表示食品が集まる棚がありますが、スーパーやコンビニなど一般流通のお話を聞きますと、機能性表示食品を始めとした健康食品の展開場所に困っているところもあるようです。

 やはり人が一番行きかう売場は食品コーナー、特にお菓子のコーナーですよね。そこに「おやつサプリ」のようなおやつとサプリの良いところを持った商品が活躍できるのではないでしょうか。

 「おやつサプリ」は3種類。オリゴ糖、食物繊維も入った腸活イメージの商品、ビタミンB1、B6、モリンガを含んだ代謝促進型の商品、マグネシウム、GABAを含む商品があります。

 機能性表示食品の関与成分に多く用いられ一般的にもメジャーになりつつあるGABAや、モリンガといったややマニアックな栄養素が採用されています。今後どのようにラインアップ拡充していかれますか。

「Body Star」

稲垣氏:「おやつサプリ」の3つが機能性表示食品の届出受理となりました。そこに今春、機能性表示食品の商品を追加する予定です。「おやつサプリ」の商標登録も昨年に果たしました。

 さらに高タンパク質スナックの「Body Star」のラインアップ拡充をしていきます。

 また「素材市場いわしのスナック」「素材市場さばのスナック」などの「おやつのチカラ」シリーズにも力を入れていきます。イワシやサバのすり身を練りこんだスナックで、サプリではないのですが、結果的にDHAやEPAを含んだお菓子です。好評のシリーズからタンパク質に特化した商品を今秋に追加する予定です。

「おやつのチカラ」シリーズ」

 この3つの健康系食品を当社の成長エンジンの柱として育てていきます。

矢澤氏:ご存じのように〝たんぱく質クライシス〟という、世界中の需要に対するたんぱく質の供給危機が叫ばれています。

 たんぱく質をとるため肉を食べると、動物性たんぱく質と一緒に脂も多く摂取してしまいがちですね。ですがイワシやサバといった魚であるならばオメガ3やDHA・EPAも同時に摂取できます。日本人はお魚好きですから「おやつのチカラ」のようなスナック菓子は受け入れられやすいのではないでしょうか。

「Body Star」はたんぱく質20gも含まれていますね。通常、たんぱく質の一日当たりの摂取基準は体重1kgあたり1gが推奨されています。高齢者などはさらに必要となりますが、基準に沿うと「Body Star」で一日の約1/3が賄えます。3食の食事でたんぱく質をとりつつ、不足分を「Body Star」でカバーする、つまり補食に適した商品だと思います。

稲垣氏:「おやつサプリ」「おやつのチカラ」「Body Star」は新たな成長エンジンの柱ですので辛抱強く取り組んでいきたいと思います。これは社内の活性化にもなります。

 「ベビースター」は昔、どうしてもお母さんがたにはお子さんの体に良くないお菓子のようなイメージを抱かれていましたが、商品開発でカルシウムを加えるなどの努力の末、今は払しょくされています。

当時のお子さんが今、親になってまた自分のお子さんと一緒に「ベビースター」を召し上がっていただいています。こういった伝承のされ方を聞くと「ベビースター」は本当にありがたい商品だと感じます。

 今や「ベビースター」が健康に悪い、というようなご意見はゼロになりました。地道にやってきたことが「ベビースター」ひいてはおやつのイメージを変えたのかな、と感慨深いものがありますね。

矢澤氏:企業の発展から、フラッグシップ商品の登場の流れの中で、新たな成長エンジンの誕生までお伺いして感じたことは「〝おいしい〟〝たのしい〟おやつ」がどれだけ人を笑顔にしてウェルビーイングにつながるかということでした。

健康に役立つ商品としてできるだけ多くの生活者に食べてもらえるようになってほしいですし、薬にはできないことを「〝おいしい〟〝たのしい〟おやつ」で伝えて、ウェルビーイングな世界を創り上げていただきたいと思います。

稲垣氏:お菓子棚を同じくしている菓子メーカーさんはじめ健康系商品メーカーさんに学ぶことも多いですし、おやつカンパニーとしてできるだけ早く大きなボリュームを形成してウェルビーイングを意識した健康系おやつのカテゴリーを創出していきたいと思います。

――ありがとうございました。


株式会社おやつカンパニー専務執行役員 開発・品証本部長

稲垣庄平 氏

(プロフィール)

1980年 松田産業株式会社(現 おやつカンパニー)入社

1993年 研究開発室長

2001年 井関工場長

2006年 開発部長

2014年 常務執行役員 開発本部長

2019年より現職


早稲田大学ナノ・ライフ創新研究機構 規範科学総合研究所 ヘルスフード科学部門 部門長

矢澤一良 氏

(プロフィール)

1973年 株式会社ヤクルト本社・中央研究所入社、微生物生態研究室勤務

1986年  (財)相模中央化学研究所入所(主席研究員)

2000年  湘南予防医科学研究所 設立(主宰)

2002年  東京水産大学大学院(現東京海洋大学大学院) 水産学研究科 ヘルスフード科学(中島董一郎記念)寄附講座 (客員教授)

2012年  東京海洋大学 特定事業「食の安全と機能(ヘルスフード科学)に関する研究」プロジェクト(特任教授)

2014年  早稲田大学ナノ理工学研究機構 規範科学総合研究所 ヘルスフード科学部門 研究院教授

2019年より現職