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イオン×ツルハ×ウエルシア記者会見詳報

ツルハウエルシアの舵取り「統合時のツルハ社長が判断」

 2月28日、ツルハHDとウエルシアHDの経営統合、その後のツルハHDのイオンの連結子会社化が3社の代表が揃う記者会見で明らかになった。既報の通り、イオン社長の吉田昭夫氏はツルハHDとウエルシアHD統合による2兆円規模のドラッグストア連合体の誕生についての見解を語った。記者会見は、北海道札幌市の会見会場と東京都のサテライト会場で繋がれ、緊急開催にも関わらず多くの記者が駆け付けた。ツルハとウエルシアの連合の舵取りはいずれ親会社となるツルハに委ねられるが、質疑応答で鶴羽社長は「統合時のツルハ社長が判断すること」とトップ名の明言を避けた。巨大ドラッグストア連合体を形成するツルハHDの鶴羽順社長とウエルシアHDの松本忠久社長は何を語ったのか。イオンの吉田社長と3社で臨んだ質疑応答を含めお伝えする。(レポート=中西陽治)

会見で撮影に応じる(左より)イオン吉田社長、ツルハ鶴羽社長、ウエルシア松本社長
鶴羽社長

ツルハHD鶴羽順社長(以下・鶴羽氏):本日、イオンとウエルシアとの資本提携を締結した。この後、ウエルシアとの経営統合を結ぶ。これまでツルハはイオンと良好な関係を築きつつ、連携の方向性を模索してきた。この度イオングループへの参入と、グループ内でのヘルスケア分野の役割を担うべくウエルシアを子会社化する。

 事業を取り巻く状況は変化し、企業価値を高めるためには事業基盤を強化し、新たな事業、人材、店舗、商品を積極的に生み出していくことが必要不可欠だ。

 今後3社は経営統合で尊敬と信頼によるパートナーシップを結び、日本最大のドラッグストア連合体になる。2兆円を超え、調剤事業においても業界トップとなる。

 統合後は5,000を超える国内店舗となるが、目標はその先にあるアジア市場であり、中長期的に3兆円をターゲットとして成長を果たしていく。

ウエルシアHD松本忠久社長(以下・松本氏):ウエルシアは2000年にイオンと資本業務提携し、日本一のドラッグストアチェーン実現のため、イオンの子会社となった。その後、ドラッグストア企業初の売上1兆円を突破した。

松本社長

ウエルシアは企業理念のもと、調剤併設、カウンセリング、深夜営業、介護を武器に「ウエルシアモデル」を推進し積極的な出店とパートナー企業と連携を図ってきた。

 これからも地域ナンバーワンの健康ステーション構想を掲げ、治療・未病・介護をフォローしていくことに変わりはない。

 近年では地域社会をささえるインフラとして、誰一人取り残されないドラッグストアとして、移動販売車の「うえたん号」を導入し、先ごろの能登半島地震でも被災地を臨時で巡回し活躍している。

 調剤事業においては、薬剤師が自宅や介護施設に訪問して患者に服薬指導する「在宅調剤」に対応する店舗を2024年3月までに1,200店にまで広げる計画だ。

 ドラッグストアはこれまでの成長期を経てこれから成熟期に突入する。既存ドラッグチェーンのみならず異業態の参入により競争環境はさらに厳しくなるだろう。

 共通の理念を有する、イオンとツルハが相互の企業価値を図るべくドラッグストア連合体を構築する。

 両社の経営資源を最大限活用すべくシナジー創出していく。国内エリアではウエルシアとツルハは相互補完関係にあり、海外では両社の海外事業とイオンが持つインフラを利用して、グローバル企業に成長できると確信している。

 事業規模の拡大に加え、3社連合によるシナジー効果に大きな可能性を感じており、真の国内・アジアナンバ―ワンのドラッグストア企業への1日も早い実現のため、職を果たしていく。

東京のサテライト会場で繋がった緊急記者会見

質疑応答

――アジアにおけるビジネス構想について。

イオン吉田昭夫社長(以下・吉田氏):イオンはすでにASEANにショッピングモールを展開している。アジアにおいてヘルス&ウェルネスはこれから需要があり、民間サービスの担い手が大きく成長するだろう。

吉田社長

鶴羽氏:ツルハは10年前にタイに出店し、先般ベトナムに合弁会社を設立しベトナムへと進出している。ウエルシアとエリア補完関係にあるのは海外進出拠点も同じだと考えている。

松本氏:ウエルシアは2010年に一度中国に出店、その後シンガポールに出店した。シンガポールの基盤は整いつつある。

――経営統合に至るまでの経緯

吉田氏:ツルハとは28年前から協力関係にあったが、去年(2023年)の夏ごろから関係を深化させないか、と協議をスタートした。

――統合スキームについて、ツルハが舵取りをするのか

鶴羽氏:スキームに上下の定めはあるが、精神は対等でどちらが上ということはない。相互のシナジーを生んでいくつもりだ。役員人事についても3社協議で決めていくことになるだろう。その後については27年の経営統合後のツルハのその時の社長が決める。

松本氏:現状のドラッグストア業界を鑑みると、目指す姿を実現するため3社が協力して日本最大のドラッグストア、アジアナンバーワンの構想を共有しなければならない。

――経営統合後の売上3兆円達成目標について

吉田氏:現状、アジア首位のドラッグは香港のワトソンズの約3兆円規模だが、統合後5年で超えることも可能だと考えている。

鶴羽氏:3兆円突破へのプロセスはこれから考えるものだが、両社の現在の規模で2兆2,000億円。可能な限り、統合後5年で実現したい。

――ドラッグストア業界のおけるオーバーストア状態について

吉田氏:今後ラインロビングをどう行えるか。イオンの持つ他業態のノウハウを生かして、ドラッグストアにない機能をプラスしていける。

鶴羽氏:来店目的をいかに増やしていけるかがカギ。調剤併設はもちろん、ラインロビングが重要だ。今までドラッグが持ち得なかった業態から来店頻度を上げるリソースを共有していく。

松本氏:郊外型店舗を例にすると、ツルハの家庭雑貨商品の豊富さは我々が持ちえないノウハウであり、私たちがしっかり吸収することで店舗機能を強化できる。さらにウエルシアの調剤の強みを共有でき、得意とする分野を相互で補完し、ドラッグストアの価値を高めていけるだろう。また、PBなど商品開発の分野でも幅広く提供できる。

――オアシス・マネジメントの株主提案に端を発した統合に見えるが、ツルハの今後の体制は

鶴羽氏:統合後はツルハが親会社になり、その時のツルハ社長が舵取りを行うことになるだろう。株主提案に対しては語る立場にないので差し控える。

――経営統合で調剤薬局チェーンを抜いて調剤売上トップになる

松本氏:我々は調剤売上だけを意識していたわけではない。ドラッグストアで調剤が受け取れることが当たり前の姿を目指してやってきた。だからドラッグストアとして調剤売上トップになることに特別な感慨はない。

鶴羽氏:ツルハも経営計画で調剤併設を強化している。薬剤師の強化など人材の面でもウエルシアと協力して、調剤をより加速させていく考えだ。

――統合後の経営体質の改善について

吉田氏:特に物流コストの改善は大きい。統合で物流は早期に対応可能でき、収益性が改善できる。

鶴羽氏:調剤はウエルシア、雑貨はツルハといった強みがあるものの、サービスの部分ではかぶる部分があるかと思う。物流コストも含め、改善することで収益性を上げていける。

松本氏:何よりプラスなのはエリアシェアが大きくなること。シェアを高めていくことが大きなメリットだと考えている。