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記者歴54年・山本武道の視点
ツルハHDとウエルシアHDの経営統合

記者歴54年・山本武道の視点
ツルハHDとウエルシアHDの経営統合
地域生活者の健康寿命延伸に貢献し
“ヘルス&ウエルネス・ステーション”実現へ



「地域住民の健康づくりに貢献したい」――こんな思いで1925年5月に誕生した鶴羽薬師堂(北海道旭川市)を源流とするツルハHD、1965年開業の一ノ割薬局(埼玉県草加市)を源流とするウエルシアHDが、3年後の2027年の経営統合へ向けて始動した。ドラッグストア市場の7割を占めるランキング上位10社のうち1位と2位が2027年に統合し、3兆円企業となるシナリオだ。

1990年6月、経済産業省から産業化が認められJACDS(日本チェーンドラッグストア協会)が設立されてから今年で25年目。設立時、2兆6600億円(2000年)だったドラッグストア市場は、22年後の2022年度には3.3倍の8兆7000億円に拡大した。2025年に10兆円産業化を目指すドラッグストア業界において、ウエルシアHDとツルハHDの統合は、2兆2000億円企業が誕生し、市場の25%を占有することになる。

今回の“統合劇”の主役であるウエルシアHDとツルハHD。以前から「経営統合するのでは」との声も聞こえていた。両社ともに、“ヘルス&ウエルネス”を理念に掲げるイオンとの協業があり、今後3社で、日本国内にとどまらずASEANをはじめとするグローバル規模で、人々の未病・予防・治療に従事し健康寿命の延伸に貢献し地域生活者の、より高次なヘルス&ウエルネスの実現へ、経営統合の協議を開始するという。

顧みれば、ツルハが旭川に本部を構えていた頃、社長として活躍されていた鶴羽肇さん(夫人の弘子さんは化粧品販売で全国NO.1だった)を訪ね支店化ついてお聞きし、そして埼玉県草加市内では、適配条例の最中に2店舗を開設した直後の鈴木孝之さん(一ノ割薬局を経営していた)にもお会いした。お二人とも共通していたことは、「お客が、また来たくなる店を作りたい」だった。

どんなに企業規模が拡大しても、お二人の共通点は、ともに「生活者の健康をひたすら願っていた」ことだ。お会いした際のお二人は笑顔を絶やさずに、波瀾万丈に富んだストーリーをお聞かせいただいたことが思いだされる。

経営する地や経営方針は異なってはいても、いつも願うことは「ドラッグストアという業態が生活者のためにあること」を追い求めてきた二人の経営者の心は、“統合”という形で結ばれたと思う。

両社は、売上げ規模の拡大もさることながら、生活者の“未病・予防”に対する意識の高揚に伴い、イオンの“ヘルス・ウエルネス”路線を共に走り、ウエルシア+ツルハ連合ドラッグストアと3社のシナジー効果によって、これまで以上に地域住民の健康と美、高齢者のケアづくりに貢献することを期待したい。

2030年に13兆円市場の形成を目標にしているドラッグストア業界。長い間に培った多くの人財と商品との出会いにカウンセリングを添え、さらに地域住民の健康を創造し、“ヘルス&ウエルネス・ステーションとしての機能を生活者に提供するためにも、ドラッグストアの“真価”が求められる時代が到来したのだ。

(流通ジャーナリスト・山本武道)