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店舗レポート マルエドラッグ前橋川原店(群馬県前橋市)
本格的なフード&ドラッグに挑戦

群馬県発祥のドラッグストアであるクスリのマルエ(江黒太郎社長)。近年は同社の展開エリアにも多数の競合が押し寄せるが、「価値の提供」を追求する姿勢が支持され、「青モス」の愛称とともに地元に根付いた経営を実践している。2020年にウエルシアホールディングス(松本忠久社長)子会社となってからは「ウエルシアモデル」と称されるビジネスモデルを注入し、食の拡充や調剤の併設も積極的に進めている。その同社が面白い店舗をオープンしたと聞いて、現場に向かった。(取材と文=八島 充)


県道沿いに大型商業施設が林立


マルエはコスメの品揃えと接客にも定評がある

取材した「マルエドラッグ前橋川原店」は、旧店「川原店」の閉鎖に伴い、同一敷地内にあった地元SMの撤退物件を居抜きで開発したもの。敷地の営業権も同SMから譲り受けた。

建物の延床面積は830坪、店舗面積は630坪で、旧店(150坪型)の約4倍の規模となっている。これまでも300坪クラスを多数開設してきたが、この規模を直営のMDで満たした経験はなく、全く新たな売場づくりに挑戦している。

店舗の東側に群馬大学とその附属病院があり、周辺は閑静な住宅街となっている。半径1.5km圏内にJR上越線が走るが、住民の足は主に車。ともに南北を貫く国道17号、関越自動車道をつなぐ県道161号に沿って商業集積があり、同店もその一角に位置している。



関越自動車道の駒寄スマートインターから現地に向かう途中にも、大型の商業施設が林立していた。長野県が地盤のツルヤ、「食の駅」の名称で展開するファームドゥなど有力SMのほか、今春には超大型HCのジョイフル本田もSMジャパンミートを併設して開業する。

国道17号沿いを中心に大手ドラッグチェーンも数多く存在し、この5月にはコスモス薬品が2店を同時期に開業する予定となっている。

ただ同店の足元にはドラッグストアが無く、かつて旧店は同社の基幹店の1つだった。しかし近年のトレンドである食や調剤を提供するには売場面積が足りないこと、また前述した敷地内SMの撤退も踏まえ、本格的なフード&ドラッグを標榜するに至った。


コミュニティスペース「マルエカフェ」配置


「地元生活者の期待に応える店を目指しました」と江黒社長

店づくりの方向性について江黒社長は以下のように語っている。

「親会社ウエルシアHDは、池野会長・松本社長のもとで“医食同源”プロジェクトを進めており、当社もそれを支持しています。とは言え、過去に青果や精肉の仕入れ実績はあるものの、600坪を自力で埋めるのは難しい。そこで当店はウエルシアのノウハウを活用しつつ、我々自身が知恵を絞り、地元生活者の期待に応える店づくりを志向しました」

店舗の入口は左右2カ所で、売場は左半分がフード、右半分がドラッグで構成されている。右手壁面に調剤室を配置し、その前面にカフェスペースを兼ねた薬局待合室を配置した。

前述のように近隣に群馬大学の附属病院があるほか大小のクリニックも点在しており、これまで専門薬局の「マルエ調剤川原店」(前橋市川原町)で処方箋を応需していた。



今後は「当店と専門薬局双方の利点を活かしながら、足元の患者のニーズにしっかりと応えたい」(江黒社長)としており、同店はまず月間1,000枚の応需を念頭に常駐の薬剤師3人を配置した。将来的には同店敷地内にクリニックの誘致も構想している。

カフェスペースは、地元生活者の憩いの場としてウエルシアが導入する「ウエルカフェ」に準じ「マルエカフェ」を名乗る。直近2年間の新店は全て「マルエカフェ」を導入しており、メーカーやクリニックと組んで健康相談会などを催しているという。


リージョナルの未来が見える


食の提供にあたっては、JA全農グループで「JAファーマーズ」を運営するAコープ東日本(宗村達夫社長)の協力を仰いだ。JAファーマーズは、関東・東北に展開するSMで、群馬県下にも20店を運営している。地元農家の生鮮を直売スタイルで提供するなど、鮮度感のある品揃えが支持されている。

同店ではコンセッショナリー方式のテナントの位置付けだが、地元で知名度が高いことから店名を店舗内外に掲げていた。

契約農家の新鮮な青果等を毎日品揃えする直売コーナー
地元ブランドを全面に出した精肉売場

野菜・日配の直売コーナーを入口前に広く設けたほか、定番の生鮮3品、惣菜、冷凍食品なども、地元色あるいはこだわりの強い品揃えが目立つ。また、フードとドラッグの売場の境目には、「マルエ・JAファーマーズおすすめ」と記されたコーナーがあり、調味料を中心にややアッパー志向の商品を充実させた。

「品揃えする上州和牛に合う焼き肉のタレや人気の産品など、従来の当社に無かった商品を一緒に考えて陳列しました。この経験を活かし、今後の新店や既存店のMDを進化させていきたいですね」(江黒社長)という。

両社のこだわりが詰まった「マルエ・JAファーマーズおすすめ」コーナー

なお、ウエルシアHDも北陸や九州などで食品強化の大型店を開発しているが、その開発に携わったウエルシア薬局の幹部にも協力を仰いでいる。

POSレジはウエルシアのシステムを用い、異なる商品コードを一体で管理していた。JAファーマーズはウエルシアと同じTカードを採用しており、ポイント面での相乗効果も期待している。

ーー取材を通じ感じたのは、リージョナルにおけるドラッグストアの競争が都市部以上に激化していることと、その競争が、フードとドラッグの垣根を超えたものに発展していることである。

「価値の提供」を追求する同社の江黒社長

ただ、クスリのマルエは早くから「価値の提供」で競争力を養い、足元顧客から高い信頼を得て現在に至る。成功の要因は企業の論理を超えたお客様志向の追求である。取材した店舗にもそれが表現されており、リージョナルチェーンの未来が見えたような気がした。

〔マルエドラッグ前橋川原店概要〕
▽オープン=2023年2月10日(調剤は3月1日)
▽所在地=群馬県前橋市川原町2-4-9
▽TEL=027-237-3111
▽営業時間:9:00~24:00