公益財団法人日本ヘルスケア協会(JAHI)は11月21日(木)に中野区の地域支えあい推進部 地域包括ケア推進課と共催で「第2回中野健幸どまんなか市」を開催した。イベントは東京都中野区(酒井直人区長)との中野区地域包括ケア推進パートナーシップ協定に基づいて開催されるもので、JAHIのほか6つの企業・団体が参加。骨密度や脳年齢、肌年齢など健康チェック体験やセミナー、健康相談、ヘルスケア製品のサンプリングなどが開かれ、開場となった中野区1Fに約600人の区民が足を運んだ。(取材=中西陽治)
「中野健幸どまんなか市」は、中野区と地域包括ケア推進パートナーシップを結ぶ団体が主体となる健康イベントで、第1回(2024年6月開催)には約300人が詰めかけた。この実績を踏まえ、第2回の開催はJAHIと中野区との共催という形で進められている。
中野区の高齢化率(65歳以上)は、近年低下し、2023年度では20%を下回っている。また、高齢者数も、2019年度から減少傾向にある。 一方で高齢者(65歳以上)における75歳以上の比率は年々増加傾向にあり、2023年時点で56.4%を占めている。
JAHIでは、高齢者を中心とした生活者のQOLおよび健康寿命延伸の取り組みを進めるにあたり、中野区とパートナーシップを締結。中野区をフィールドにヘルスケア産業の社会実装にチャレンジしている。
「第2回中野健幸どまんなか市」は今年新調された中野区新庁舎の1階で開催された。新庁舎は2階以上が役所窓口となっており、1階の区民の憩いの場にあたる「ナカノバ」「シェアノマ」「ミーティングルーム」で構成されている。
JAHIは「ナカノバ」で骨密度、脳年齢、肌年齢、握力、2種類の野菜摂取量の測定を実施。そこで測定した結果を基に「ミーティングルーム」に足を運んでもらい、展示やサンプリングへと促した。
イベント参加に手を挙げたJAHIの部会は「生き活きライフ(フレイル)部会」「人とペットとの共生によるワンヘルス部会」「在宅介護推進部会」「健康まちづくり部会」「在宅感染症予防部会」など6部会で、部会を構成する16企業・団体が中野区民に向け健康対策をアピールした。さらに、中野区にキャンパスを置く帝京平成大学の「地域連携部」の薬学生も応援に駆け付け、区民の健康の悩みに耳を傾けた。
JAHIによると、JAHIの健康測定に足を運んだ区民は514人(骨密度測定除く)で、男性が103人、女性が406人だった。区役所で平日の開催とあって、ボリュームゾーンは40~70代で最も多い年代は60代(84人)となった。
測定結果についてJAHIは「現在、結果を集約中」としながらも、「肌年齢チェックと骨密度測定にニーズが集まった。また野菜摂取測定は複数の機器で測定できるとあって会場立ち回り率が高まった」としている。骨密度の結果からは、中野区の高齢者の骨の健康度が低い傾向にあることも明らかとなっている。また脳年齢では80代の4人が20代の脳年齢数値をたたき出し、その結果に驚きの声があがった。
「ナカノバ」で行われたセミナーでは「ペットと暮らす明るい未来」「窓から考える『健康・快適生活』とは」「『街づくり』があなたを健康にする!」「身近にあります!健康お役立ち商品のいろいろ」「口と腸のミクロ世界~微生物が奏でる健康シナジー~」といった区民にも分かりやすくユニークな題材が揃った。特にゲストで登壇した中野区で訪問診療を行っているたかねファミリークリニックの高根紘希院長による「高血圧専門医が話す!『健幸どまんなか』に暮らすための『血圧』のお話」には多くの聴講者が訪れ、薬の飲み合わせや生活習慣についての質問が飛んだ。
「ミーティングルーム」で行われた展示・体験会・相談会では、「在宅介護推進部会」による手芸体験を通じた脳トレ、咀嚼や嚥下に配慮した商品の紹介、「健康まちづくり部会」による体に良い食用油やオーラルケアに役立つ商品が展示された。
また「人とペットとの共生によるワンヘルス部会」からは部会が進める〝ペットパスポートプロジェクト〟を軸に、ペットオーナーや中野区内の飲食店に向け、ペットを飼うことによる心身に与えるメリットが紹介された。中野区は江戸時代に〝お犬屋敷〟があったことから、区民がペットを飼うことによる心身への好影響に対して親和性の高い取組に映った。
サンプル配布では、インフォメーションと共に商品がプレゼントされ、今後の購買につながる提案が行われた。測定を終えた区民が足を運び計3,000個のサンプルは瞬く間に参加者の手に渡り、「健康のヒント」とともに笑顔で区役所を後にしていた。
イベントは10時から16時まで行われ、午前は小雨が降っていたが、午後には窓から陽が差し込む場面もあり、会場は穏やかかつ熱気にあふれた。
来場者は「中野区の区報を読んで来た。区役所なら安心して健康イベントを体験できそう」「肌年齢は並んででも絶対体験したい」「骨密度は月に1回測っているけれど、違う機械も試してみたい」といった期待の声から、「最近は怪しい健康食品もあるけれど、知っているメーカーさんや〝公益財団〟というちゃんとした団体なら大丈夫だと思った」「健康食品って高価だから遠慮してしまう。説明してくれるのなら納得できると思う」といった安堵の声も挙がっている。
中野区によると「第2回中野健幸どまんなか市」の来場者は約600人となっている。中野区の地域支えあい推進部地域包括ケア推進課からは「日本ヘルスケア協会の皆様には 事前の準備や当日の仕切りまで大変なご協力をいただき、おかげさまで大盛況のうちに終えることが出来ました」と感謝の声が届いているという。また「区の他の部署からも注目を集めるイベントになっており、特に中野区区議会の議員さんから、『健幸どまんなか市がとてもよかった。測定や体験で見える化できたことが、この後の行動変容に繋がる、次こそ参加したい』」との声が挙がっている。
JAHIによると次回の開催日程は調整中とのことだが「中野区を健康寿命延伸およびヘルスケア産業の実践場所として進めていき、結果を水平展開していきたい」とコメントしている。
(取材を終えて)
バリアフリーが行き届いた中野区新庁舎には、さまざまな背景を持った区民が足を運ぶ。
「健康な人がもっと健康に」「健康を維持できるように」との思いを持った人は当然ながら、車いすや杖の力を借りている人、ベビーカーを引きながら忙しそうにしている母親、役所に手続きに来て手持無沙汰な高齢男性、日本語に慣れていない在日外国人といった「健康になれるきっかけをつかめない人」が多くいることに驚いた。
ある耳が不自由な女性が会場に訪れ「骨密度を測りたい。筆談ならできるから」と声をかけてくれた。私は「もちろんです。お名前を伺ってもいいですか」と紙に名前を書いて骨密度測定のスタッフに託した。〝この方は筆談でお願いします。お名前は●●マキコさんです」と書いた紙を見た女性は「マキコじゃなくて、アキコです」と言ってくれた。私は申し訳ない想いでいっぱいになりながら〝すみません。アキコさんですね〟と書き直した。
その時に感じたのは「ただ計ることが目的ではない。この人は〝自分で健康になりに来た〟。そこを見誤ってはいけない」ということだ。恥じ入る私に、測定を終えたアキコさんは笑顔で「ありがとう」と言ってくれた。
その背中をを見送りながら、JAHIが掲げる健康寿命の延伸は、ただ数字を調整すればいのではなく、いつまでも笑顔で健康を求め続けられる社会をつくることにあるのだろうと思った。
中西陽治
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