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“予防支援”機能で支持されるDgSをサポート

JACDS事務総長 田中浩幸氏 特別インタビュー

一社化後2期目の活動がスタート 

1999年6月16日に任意団体として発足した日本チェーンドラッグストア協会。ドラッグストアが小売業態として認められ、我が国の健康産業としてしてのポジションを築いた功績は、多くの関係者が認めるところである。その協会は2020年8月21日に一般社団法人として新たなスタートを切っており、今年6月に2期目の事業と組織を発表している。新組織は業界の未来を担う次世代の人財を登用し、時代が求める施策の遂行により、持続可能な社会の実現に貢献していく姿勢を示した。このほど、協会の事務総長である田中浩幸氏にインタビューし、これからの協会とドラッグストアの目指すべき方向性について語ってもらった。(記事=八島充)

――一社化を機に協会活動に変化はありましたか?

田中浩幸事務総長

私が協会に参画したのは、20余年にわたり活動を牽引してきた初代事務総長の宗像氏が亡くなられてから1年も満たない時期でした。

その頃は業界の急成長に伴い協会の在り方について内部から様々な意見が出ていましたが、現会長の池野隆光氏(ウエルシアHD会長)がリーダーシップを発揮され、まっさらな立場で今一度協会のスタンスを示していこうという気運のもとに、一社化を目指しました。

法人格の取得により、法の枠組みの中でより幅広い活動が可能になりましたが、最大のメリットは、業界の外部の方に、私達の存在と活動のスタンスをしっかりと示せたことだったと考えています。

 2期目となる今期の執行メンバーは、前期からの継投を基本路線としていましたが、所属企業の経営を退かれるなどの理由で、名誉会長2名が協会の職を退かれました(表1)。設立から20余年という年月を考えても、世代交代の時を迎えたということになると思います。

そこで今期は、13ある組織委員会の副委員長並びに4ブロックの副ブロック長に、次世代を担う企業のトップないし幹部に就任していただきました(表2)。協会の副会長らにそれぞれを監督してもらいながら、より現場に近いメンバーが、各々に抱える課題を業界の声として挙げていただくのが、その狙いです。

少なくともこの2年半は、コロナやウクライナ情勢の影響を受けて、経営環境を揺るがす問題が起きています。さらには、高齢化や少子化に起因する追い風と向かい風が同時に吹いている状況にあります。

現状の課題をしっかりと認識した上で、10年後、20年後のドラッグストアの在り方を考える作業は、次世代の人財の知恵と行動力にかかっていると言って良いでしょう。

――最近は地方自治体などから、「ドラッグストアの持つ機能に期待する」という声を聞くようになりました。

そうした声は協会にも届いています。かつてはドラッグストアの物販機能だけがクローズアップされがちでしたが、現在は調剤を処方する薬局機能、さらには、地域のおける健康情報の発信窓口としても、注目されるようになっています。

例えば、地域包括支援センターも、行政が自ら運営してうまく回らないケースが散見されますが、ドラッグストアの拠点を活用することで、持続可能になった事例があります。これも、医療と健康のつなぎ目となる“予防支援”の機能が、行政のみならず生活者の期待に応えていることの証左です。

ドラッグストアは収益確保を義務付けられた民間企業ですが、これからは、確保した収益をどこに、どのように還元していくのかが問われてきます。

株主への還元はもちろん重要ですが、それ以上に、ドラッグストアが商いをしている地域と、そこで暮らす生活者に還元していくことが、サステナブル社会を実現する上でも不可欠です。そうして、ドラッグストアが“社会の公器”となることで、将来に渡り収益を確保していくことへの理解が深まるもの考えます。

協会としても、地域の要望に対し何ができるかを能動的に考え、その短期・中長期の課題を整理して、各委員会の中で議論をしています。私を含む執行部も、中央官庁他などとの密な情報交換と折衝を重ね、ドラッグストアの“予防支援”機能をアピールしています。

近年話題になっているオンライン診療やオンライン服薬指導など、オンラインとの関わり方も考えなければなりません。

人口密度の低い商圏には、遠方から来店せざるを得ない生活者もいます。例えば近隣に医療機関がないエリアの高齢者がその店に足を運んだ際に、オンライン診療の窓口となる場所・空間を作ってあげることも重要です。

宅配などの物流面は様々なイノベーターが参入し、生活の一助となっていますが、それとは別に、生活者が店舗に求める役割を、もう少し幅を広げて考えていくべきだと考えます。

――長引くコロナやウクライナの影響が、ドラッグストアの収益に影を落としているように見えます。

コロナやウクライナ問題もそうですが、先の調剤報酬における「300店以上の店舗に対する減算改定」なども影響をうけるのは必至です。ただ、そうした事象も後ろ向きにならず、前向きに対処する方策を考えなければなりません。 

元々調剤の機能は、初代事務総長の宗像氏が、“街の健康ハブステーション構想”の一環で導入を後押ししてきたものですが、調剤の利益貢献度が高まるにつれ、構想の本来の目的とは異なる方向を向いてきたような気がします。

確かに今回の「減算改定」は受け入れ難い厳しい措置ですが、このタイミングで再度、街の健康ハブステーションの実現に向けた前向きな議論が起きることに期待しています。

同じことは食品にも言えます。昔からドラッグストアは食品の強化で集客を促していましたが、それがコロナという非常事態と重なったことで、結果的にワンストップショッピングの利便性が支持されました。

これも本来は、ドラッグストアならではの食、すなわち“予防支援”としての「食と健康」カテゴリーの創造と育成が主題だったはずです。これからは、利便性の提供と共に、医療の手前で生活者との接点をつくるための、「食と健康」の世界を広げていくべきではないでしょうか。

「予防支援」というテーマは、高齢化社会となった我が国の大きな課題であり、人口減が進む中での経済活性化の鍵でもあります。また、そのテーマに沿った業態を確立しパッケージ化することができれば、経済成長が見込める東南アジアを中心とした海外に進出するチャンスも広がると考えます。

――行政のみならず、協会の活動に興味を持っている外部の方が増えているようですね。

委員会活動の1つであるSDGs推進委員会(德廣英之委員長=トモズ社長)は現在、サーキュラーエコノミープロジェクトとして実証実験を展開中ですが、その中でリサイクルなど環境問題に取り組む最終メーカーや原材料メーカーからの問い合わせも増えています。

その中には新規にドラッグストアショーへの出展を検討してくださる企業もあり、これまでお付き合いのなかった業界に、ネットワークが広がっています。

今後も日本チェーンドラッグストア協会は、生活者が求めるニーズに真摯に応える取り組みを通じ、産業界を盛り上げていく所存です。その実現には皆様の知恵やノウハウが不可欠です。引き続き様々なプレーヤーの参画をお待ちしております!

――ありがとうございました。