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ヘルスケアINTERVEW ダイヤ工業三代目代表の松尾浩紀さんに聞く
『高まる国民のヘルスケア・ニーズに挑むモノづくり』

運動器の悩み解消ビジネスだけでなく
ケガをしにくい身体作りへの自社製品を普及し
国民の健康で幸せな生活の実現に貢献したい


1963年4月に岡山市内に誕生し、腰用コルセットやサポーター など、運動器の悩み解消のための様々な製品の開発販売に携わってきた企業が、国民のヘルスケア・ニーズに対応したモノづくりへ、創業61年目を期して新たな挑戦が始まった。運動器のサポーティングシステムメーカーとして、接骨院・鍼灸院・クリニックなどのメディカル業界に向けて、日常用・スポーツ用のサポーター・コルセットを普及する傍ら、健康なカラダづくりのための健康複合施設も運営するダイヤ工業だ。「ケガをしない身体づくりへの取り組みを拡げ、運動器年齢が実年齢マイナス10歳になることを目指し、子どもたちが50年先も笑顔でいられるように…」をビジョンに掲げ、運動器の悩みを解消するためのサポーターの製造販売を手掛けてきた。近年では腰への負担を軽減するアシストスーツを開発するなど、運動器の悩みの解消から予防分野へシフトし、「国民の健康で幸せな生活の実現に貢献したい」と語る三代目代表の松尾浩紀さんに、創業61年目を期して、高まる国民のヘルスケア・ニーズに挑むためのモノづくり、ヒトづくりを聞いた。(ヘルスケアジャーナリスト・山本武道)


■三代目代表の松尾さんの軌跡


ダイヤ工業三代目代表の松尾浩紀さん

― 1963年4月にダイヤゴム工業として創業し、その2年後にダイヤ工業となり、長きにわたり自社開発のサポーターや腰用コルセットの研究開発と製造販売に取り組み、2023年4月から61年目の第一歩を踏み出しました。松尾さんは、2018年、三代目代表に就任されましたが、今日に至る軌跡を教えてください。

松尾 私は、2023年5月で42歳になりました。物心がついた時には、すでにダイヤ工業はありました。創始者は祖父で、父は二代目。自宅の隣が本社屋だったので、小学校から帰ると必ず工場に寄っていました。祖父、両親とも同じ場所で働いていましたから、工場そのものが自宅のようなもので、現場で働く人たちが、毎日、運動器の悩みを抱える多くの人々のために懸命にモノづくりを行っている光景を見て育ちました。

私は、大学卒業後、IT企業のサービス部門に携わり、2006年にダイヤ工業に入社しました。当初は営業、自社製品の製造開発など様々な部署を経験しました。父からは、「まず自社製品を購入してくださるお客さまが第一。そのお客さまをサポートする自社製品の開発と製造販売に携わる仲間がいるからこそ、今の仕事は成り立つ」と経営者として大切なことをお教わりました。まさに“企業は人なり”でした。


運動器の悩み解消製品を開発し接骨院・鍼灸院を通じ普及


― 企業にとって製品力や販売力もさることながら、そこには常に多くの人が関与していますから、職場でともに汗を流す仲間の力は大きく、まさに人は企業の財産。この人財力は、経営者にとっては欠かせません。


松尾 実は私が代表になってから2年目に、一度、売上げが低迷したことがあります。私自身、独自に考えていろんなことに取り組みましたが、結局はうまくいきませんでした。自信過剰だったと反省しておりますし、自社製品力を高めるのも現場で働く仲間の力、普及してくださるパートナー先にも多くの人々が関与しています。企業にとって、人は過去も現在もこれからも大切な財産であることを痛感しました。

何ごとも、自分一人で良かれと思い突き進むのではなく、長年にわたりモノづくりへの思いを共有してきた働く仲間の存在があったからこそ今日があること。モノづくりは一人ではできません。そこで改めて父とともに多くの自社製品を開発してきた仲間のモノづくりへの思いをしっかりと受け止めることが大切だと気づきました。

まず考えたことは、お客さまの健康をサポートする自社製品開発、人財の育成などに取り組み、安定した経営を目指すこと。そのためには、木の年輪のように1年1年確実に幹を大きくしていくこと。つまり、企業の規模を確実に徐々に拡大していく“年輪経営”を進めていくことにしました。そして長い間に培ったノウハウを駆使して開発した、多くの人々の運動器の悩み解消に対応できる自社製品は、主に接骨院や鍼灸院を通じた普及・啓蒙への道を選んできました。


5〜6年前から予防製品の開発に取り組む


―  かつて医療は治療優先でした。しかし高齢社会の到来に伴い健康寿命産業振興の必要性が指摘され、国民の健康創造ニーズが高まったことで、病気産業から健康産業=ヘルスケアビジネスに取り組む企業が増えてきています。では御社のモノづくりは、これからどのような方向へ歩もうとしているのですか。


松尾 当社のこれからを見据えると、運動器の悩みに対応する製品開発と普及はこれからも重要な事業ではありますが、世の中の流れが治療から予防重視へとシフトしていることから、健康な人々がさらに健康になりたいと願っていること。“健康で長生きしたい”願望に応えるビジネスに向けた製品開発が重要になることは間違いないと思いました。

既存の事業に加えて、5〜6年前から運動器の悩みを発生させにくい予防製品の開発に取り組み、現在、当社の経営の柱の一つになりつつある物は、重量約800gで衣服のように着用することができるアシストスーツです。作業する際に装着することで“労働作業の負担軽減”に役立ち、例えば重い荷物を持つことによる腰への負担軽減で運動器の悩みを発生させにくい、いわば“労働寿命延伸”によって“健康寿命延伸”に結びつくという新しい軸(戦略)で開発した『DARWING Hakobelude(ダーウィン ハコベデ )』です。



衣服のように着用できるアシストスーツの特徴


―  経営の柱になりつつあるアシストスーツとは、どのようなものなのですか?


松尾 人の手が必要な労働現場は未だに数多く、特に肉体を駆使する労働現場は3K(きつい・汚い・危険)と言われるほど肉体的にも精神的にも負担が大きく離職率の高さが問題となっています。離職に繋がる原因の中で多い「腰に違和感がある」など運動器のトラブルが発生し「仕事が続けられない」という問題の解決を目的に発売した自社製品です。

特徴の一つは、当社が長年培ってきたサポーターの技術を応用し、衣服のように柔軟で軽く、しかも薄型設計のため狭い場所でも使用でき、製品を装着したまま後方への回旋動作、フォークリフト乗降、椅子に座るなど、作業の中の複合的な動きをほとんど妨げないこと。二つ目が、高反発ゴムで重量物運搬などの持ち上げをアシストすることで、前屈やしゃがみ姿勢になると背部、脇部、臀部の高反発ゴムが伸び、その張力が前屈姿勢からの上半身の起き上がり、しゃがみ姿勢からの起き上がりをサポートしてくれること。三つ目には、電力を使用しないため、突然の雨などでも使用でき、外・屋内問わず様々な環境での活動が可能なことです。


魅力ある健康人が来店するドラッグストアルート


―  こうした自社製品の普及先ですが、これまでの接骨院や鍼灸院だけでなく、健康な人たちが来店するルート、例えば全国に2万を超す店舗を持つドラッグストアでの取り扱いはどうですか?


松尾 接骨院や鍼灸院に来院される方は、運動器の悩みを解消するために来院されるわけですが、サポーターなどを購入される中で、運動器の悩みの解決だけでなく予防方法のアドバイスが聞け、心身ともに健康な状態を創造するような場、居心地が良く、また訪れたい場所であってほしいと願っています。そのための自社製品開発に取り組むとともに、普及先も拡大していきたいとも思っています。

その点で、健康な人も来店するドラッグストアルートはすごく魅力的で、自社製品と親和性がありますので、ドラッグストアに来店されるお客さまのニーズに合う製品を開発し、高まる国民の要望に対応する環境を作っていきたいと考えています。



<取材を終えて>


人々の運動器の悩み解消のためのモノづくりは40年に及ぶ。岡山市内の本社には、2014年9月にオープンした健康なカラダづくりと快適生活をサポートする健康複合施設がある。サポーターを各種取り揃え、見るだけでなく実際に着用して機能性が体感できるショールーム(https://www.daiyak.co.jp/company/main-office.html)とスポーツクラブを併設したヘルスケアの殿堂だ。

高齢者人口の増大に伴い、高まる国民の健康ニーズを見据えた戦略は、三代目経営者に受け継がれ、引き続き接骨院や鍼灸院での普及に力を注ぐとともに、運動器の悩みの解決を行う場としてだけではなく、「健康な人々が集まる場でもあってほしい」と話す。

そして運動器の悩みの発生を防ぐことに繋がる、重量約800gで衣服のように着用することができるアシストスーツも開発し、経営の柱の一つになりつつある。普及先も既存ルートに加え新しい路線も考慮中だ。その一つに近年、カウンセリング力を高め、“予防と未病”をキーワードとした様々なヘルスケア製品を導入しているドラッグストアへのチャレンジについては、「親和性が高い」として専用商品開発にも目を向けている。

先代の教えを守り、堅実な“年輪経営”を進め、ヒトを育て、運動器に悩みの解決から予防時代のニーズに応じた新しいモノ作りに挑む42歳経営者。目指すところは、すべての人々の、「健康で幸せな生活の実現」への貢献だ。創業61年目、新たな路線に向けたチャレンジに期待したい。

https://www.daiyak.co.jp/company/company.html