今回のアメリカ視察で訪問したNatural Products Expo Westでは「mushroom」を扱うブースが多く見られ、また現地のスーパーでも関連する健康食品がずらりと並ぶなど、市場の盛り上がりを感じた。この動向にいち早く着目したサラヤは昨秋、 mushroomを用いた事業をおこなう100%子会社のChagaRootを設立している。このほどHoitto!編集部は同社を取材し、今後の事業計画についてうかがった。自社工場でmushroomを用いた幅広い商品群を製造・販売していく計画で、それに先んじて事業の広告塔を担うファストフードの1号店もオープンしている。「A mushroom boom is coming!!(キノコブーム到来!)」の背景と合わせ紹介する。(取材と文=八島 充)
少しだけキノコ市場について説明しておく。
キノコはカビと同じ菌類の子実体で、多くは傘状に生育する植物。食用の歴史は古く、古代エジプト人が好んで食し、日本人も縄文時代から口にしてきたとされる。中国では紀元前数100年から、キノコを食品ならびに医薬品として扱っていたという資料も残っている。
現在は20種類以上のキノコが、少なくとも60カ国で商業的に栽培されている。食用キノコの生産量は年間5,000万tで、その7割を中国が占める。次いでアメリカ、オランダ、フランス、ポーランドなどが主要生産国である。
ビタミン、ミネラル、カリウムなど栄養素が豊富な食材として様々な料理に重用されるほか、免疫活性、血糖値低下、抗がん、抗病原体等、医薬品や健康食品領域での研究もすすんでいる。日本でも霊芝やアガリクスなどの健康食品が知られている。
その市場は世界的に拡大の一途にあり、2020以降は年率12%の増加をベースに2026年までに52billionドルに達するという試算が出ている(グローバルインフォメーション調べ)。拡大の理由として、ベジタリアンやビーガンといった嗜好食の増加や代替肉需要の高まりを挙げている。
アメリカではキノコを総称して「mushroom」と呼び、食材としてChestnut mushroom、Lions Mane、Oyster mushrooms、Shitake、Enoki、Matsutake、Chantrellsなどが知られている。
また、健康食品ではReishi、Lions Mane、Mataki、Cordyceps(冬虫夏草の素材)などを原料にしたサプリメントが、ドラッグストアやスーパーで定番化され、通販市場にも根付いている。
Mushroom市場のさらなる拡大を睨み、サラヤは昨秋に100%出資で昨秋ラスベガスにChagaRootを設立した。
ChagaRootのChief Visionary Officer(CVO)、BRENT HAUVER氏は、SarayaUSAの創業メンバーで同社のCVOを務めた人物。現在もSarayaUSAのマーケティングを手伝っているという。
現在のChagaRootは本社内に研究・栽培設備、加工・抽出設備を整備中で、環境が整い次第、mushroomの実や菌糸体を用いた代替肉の販売、健康食品の原料の販売、さらにサプリメント等の最終製品の販売を、本格的に始める計画である。
設立の経緯についてBRENT氏は、ペーパーバック『THE NEXT TRILLION〜今後10年間で1兆ドルを超えるウェルネス業界』を読んだことが始まりだと説明する。
「世界の mushroom市場は2030年に115billionドル、プラントベースフードの市場は2050年に1.5 trillionドルになると言われている。また近年は健康産業のスタートアップ企業が多数起業し、いくつかは大企業に買収されるなど活性化している。その中で今、私たちがやるべきはmushroomだとの決断に至った」(BRENT氏)
「何故 mushroomか」との問いに同氏は、「栽培に使用する電力や水ならびにCO2の排出量が少なく、地球にやさしいサステナブルな食品であることが最大の理由。さらにマッシュルームは健康成分を豊富に含み、近年はErgothioneine(=アミノ酸誘導体の一種で強力な抗酸化作用のある天然物質)も注目されている。これらを抽出した各種製品の提供を通じ、健康長寿社会の実現に貢献したい」としている。
現在開発中の最終製品は、mushroomベースのハンバーガーやタコス、ソーセージといった代替肉商品や、ミルク、ココアや抹茶のMIX、ショットタイプのエナジードリンクなどの菓子類、そして前述したErgothioneineのサプリメントまでと幅広い。これらをまずは、WHOLE FOODSに売り込んでいくという。
同社事業の広告塔となる店舗が、昨年9月にラスベガス市街にオープンしたファストフード店「ChagaRoot」である。
店内にはmushroomの壁画や自然を連想させるオブジェが掲げられ、明るくポップなイメージ。オープン直後から健康志向の強い、かつ流行り物好きのラスベガス市民に評価され、訪問した日も平日ながら大層賑わっていた。
メインメニューはハンバーガー(10ドル50セント〜)とタコス(3個セットで8ドル)で、パテや具はもちろん mushroomベースである。Lion Maneをチキンナゲットに見立てたサンドイッチ(16ドル50セント)も名物メニューの1つだという。
mushroomベースのスムージードリンク(各10ドル50セント)も人気だそうで、甘味料には砂糖の替わりにモンクフルーツ(SarayaUSAのLAKANTO)が用いられていた。なお、ハンバーガーは正肉のそれとは異なるが、 mushroomの風味と強めのスパイスがうまく融合しており、満足できる一品だった。
ChagaRootのCEO、ADAM KLIMKOWSKI氏は、「1号店の成功を受け、遠くない未来に2号店以降の出店を計画している。より集客力の高い都心立地に出すことでChagaRootの認知度を高め、事業拡大の足がかりにしたい」と語っていた。
ChagaRootのHPはこちら:https://chagaroot.com