サラヤ(更家悠介社長)が、ウリ科の果実:羅漢果(らかんか)の抽出物からつくったカロリーゼロ甘味料「ラカント」をひっさげアメリカに本格進出したのは2015年のこと。あれから8年が経過した今、「LAKANTO」は同国の天然甘味料市場を牽引する存在へと成長している。この3月には、初の自社工場「Saraya USA Lakanto factory」を、ユタ州オレム市に開設した。今後は同拠点から、アメリカ国内のみならず世界各国に「LAKANTO」を発信していく計画だ。このほど当編集部はサラヤに帯同し新工場の開所式に参加した。以下はそのレポートである。(取材と文=八島 充)
新工場「Saraya USA Lakanto factory」は、ユタ州北部・オレム市郊外の工業団地の中にある。
3月13日に執り行われた開所式典には、200人に上る取引先と仕入先等が参集した。Saraya USAのミハイル・ドゥブロフカCEO、サラヤの更家悠介社長の挨拶に続き、オレム市のデビッド・ヤング市長、在デンバー日本国総領事の三上陽一氏らが、お祝いの言葉を述べている。
同工場は各国企業が立ち上げに参画し、かつ働く従業員の国籍も多様であることが1つの特徴という。オレム市長も「国内でも有数のインターナショナルな施設の完成を嬉しく思う」とコメントしていた。
1万1,798㎡(3,569坪)の広大な敷地に建てられた施設は、フロントオフィス、製造設備(ミキシング〜パッケージング)、原料と最終製品の倉庫、品質保証室などで構成されている。生産能力ならびに倉庫のキャパは、将来的な出荷の増加にも対応している。
また同工場は、GMP認証も取得しており、衛生面に加え品質保証面でも厳格な管理体制が敷かれていた。
60SKU以上におよぶ最終製品は、ここからリアル店舗のほか、アマゾン、ウォルマート、ターゲットなどのECセンターに配送される。特にアマゾンの取扱量は多く、直近の取り扱いの割合はBto C(EC)が8割、Bto B(リアル店舗)が2割ほどだという。
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式典終了後に更家社長とミハイルCEOが取材に応じてくれた。以下に両氏の発言要旨を掲載する。
2015年に中国桂林で羅漢果エキスの自社抽出工場を稼働し、工場の固定費を補う売上の創出を目的に海外での事業展開を進めてきました。
その頃のアメリカは、健康意識の高まりから消費者の砂糖離れが起きていました。代替甘味料の市場も、合成甘味料から天然甘味料へのシフトが始まっており、弊社が進出する土壌がありました。
また、当時の天然甘味料は「ステビア」が中心でしたが、値頃感がある一方で後味が悪いとも言われていました。その点で羅漢果すなわちモンクフルーツは、味や使用感に優位性があり、当社の「LAKANTO」が市場に浸透する余地は十分にあると判断しました。
最初の壁はFDA(アメリカ食品医薬品局)にモンクフルーツを食品原材料と認めてもらう作業でしたが、長年の努力によりクリアできました。壁が無くなったことで後発の中国企業の参入が増えましたが、先駆者精神を持って、今日まで市場の開拓と活性化に取り組んできました。
かつて「LAKANTO」の製造はOEM工場でおこなっていましたが、当国の小売業が欠品へのペナルティが厳しいこともあり、製造と在庫、さらに配送スケジュールの管理に手を焼いていました。今回自社工場を稼働したことで、これら問題を一気に解決でき、経営効率は格段に上がるものと期待しています。
「LAKANTO」を流通ルートに載せた2017年当時、ラインナップは顆粒タイプのみでした。市場の開拓にはアイテムの拡充が不可欠と考え、商品開発を精力的に進めてきました。
最近は中国企業との競合も始まりましたが、味はもちろん粒子サイズのこだわりなど、品質面で他を寄せ付けないという自負があります。その品質を維持しながら、商品開発やマーケティング活動においても、彼らの一歩先をゆく挑戦を続けてまいります。
今注目しているのが、ダイエットのみならず生活習慣病の改善が期待される食事法「KETO」(ケトジェニック、ケトン食)です。今後は「LAKANTO」のラインアップで、ウエイトコントロールによる健康な食習慣を提案していきたいと思います。
サラヤは衛生用品のビジネスを軸に、すでに北米、アジア、ヨーロッパ、そしてアフリカに事業所を構えているが、そのいずれもの地域にも「LAKANTO」の参入チャンスがあると見ている。
更家社長は、「東南アジアや中近東にも糖尿病患者が増えており進出の背景は整っている。各国の言葉の壁を越えることが課題となるが、Saraya USAで培った(英語圏の)メッセージを用いて解決していきたい」という。
また、「日本で『ラカント』を上市した当時は『衛生用品メーカーが何故食品を?』と言われたが、近年はそうした声も聞かれなくなった。当社が掲げる『衛生・環境・健康への貢献』を実現する上で、食の提案は欠くことのできない取り組みである。この志は、国境を超えて世界中の生活者に支持されると信じている」(更家社長)と語っていた。(了)