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ゲノム・遺伝子解析関連サービス市場、2030年に2.5倍予測

総合マーケティングビジネスの株式会社富士経済が、がんゲノムプロファイリング検査の保険診療開始や「全ゲノム解析等実行計画」の策定などにより注目度が高まる国内のゲノム・遺伝子解析関連サービス市場を調査した。その結果を「ゲノムデータ利活用が高まるゲノム・遺伝子解析関連市場の最新動向とビジネスモデル分析」にまとめた。この調査では、受託検査分野4品目、ゲノム解析・バイオインフォマティクス分野2品目、ゲノムデータ二次利用分野1品目の市場を捉え、将来を展望した。また、各分野の主要なビジネスモデルを分析し、整理した。



がんゲノムプロファイリング検査や注目リキッドバイオプシー検査などのサービスである受託検査分野と、Wet解析またはDry解析のみを行うサービスであるゲノム解析・バイオインフォマティクス分野、ゲノムデータをデータベース化し、創薬や臨床研究、商品開発などへ提供するサービスであるゲノムデータ二次利用分野を対象とする。

市場は保険診療の開始や次世代シーケンサーの普及、AI技術や解析技術の進展などを背景に、がんゲノムプロファイリング検査やDTC遺伝子検査/ゲノム検査など受託検査分野を中心に拡大しており、2022年は前年比3.4%増の214億円が見込まれる。近年は、検査結果を基に患者に適した治療法を検討する会議であるエキスパートパネルの支援を行うバイオインフォマティクス受託サービスや、研究開発に提供するなどゲノムデータを取り扱う様々なビジネスが誕生している。また、臨床応用を目指した「全ゲノム解析等実行計画」に基づく国家プロジェクトが進むなど市場を取り巻く環境は活性化している。今後は治療目的だけでなく、早期診断や予防、創薬や新薬開発、健康食品やサプリメントの開発などに活用が期待され、2030年は2021年比2.5倍の526億円が予測される。



次世代シーケンサーを用いてがん関連ゲノムを網羅的に解析し、がんの性質や体質、病状に合わせた有効な治療法を分析する検査を対象とする。

2019年6月の保険診療の開始に伴い、保険診療を中心に市場が拡大している。現状では保険償還の対象が限定されていることや検査キャパシティ、エキスパートパネルの業務負担などを背景に市場が拡大しにくい状況にあるものが、それらの課題解決と共に、今後は保険診療の対象が広がり初回治療での活用や、体液サンプルを用いたリキッドバイオプシーが普及することで検査数が増加し、2030年には2021年比3.4倍の251億円が予測される。


●注目リキッドバイオプシー検査
(エクソソーム関連検査/微小残存病変(MRD)検出検査)


臨床応用を目的としたリキッドバイオプシー検査のうち、エクソソーム関連検査、微小残存病変(MRD)検出検査を対象とする。

エクソソーム関連検査は現在、自費診療の市場となっており、エクソソームに内包されるmiRNAをターゲットに主にがんの早期診断を行う検査として展開されている。エクソソームを補足する技術などの課題から参入企業は限られている。

MRD検出検査は、2018年4月の骨髄微小残存病変量測定の保険診療の開始により本格的に市場が立ち上がった。2019年2月に扱える衛生検査所の認定が始まったことで外注検査が可能となり、検査数が増加した。しかし、解析施設が限られることや、プライマー調整など工程が複雑なことなどから市場は限定的である。

エクソソーム検査やMRD検出検査は、がんの早期診断やモニタリングとして利活用ニーズが高いものの技術的な課題などを背景に保険診療化には時間を要すると予想される。しかし、MRD検出検査の早期保険診療化を目指す動きもあり、2030年の市場は8億円が予測される。



<調査方法>
富士経済専門調査員による参入企業および関連企業・団体などへのヒアリングおよび関連文献調査、社内データベースを併用
<調査期間>
2022年10月~11月