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ヘルスケア対談:公益財団法人 日本ヘルスケア協会・今西信幸会長×一般社団法人 全国スーパーマーケット協会・増井德太郎副会長

ヘルスケア対談『健康寿命延伸へ食と健康、そしてヘルスケア』
公益財団法人 日本ヘルスケア協会・今西信幸会長×
一般社団法人 全国スーパーマーケット協会・増井德太郎副会長


進展する少子・高齢社会下で病気に罹らない、
重篤化しない食を中心とした「予防」が大切に…


国の健康寿命延伸の施策において「食」の重要性はいうまでもない。少子・高齢社会が進展する中、病気に罹らない、重篤化しない「予防」の観点が大切になる。そこには、「食は予防の中心」であることを、供給側も消費者側も再認識する必要があるのではないないだろうか。『健康寿命延伸へ食と健康、そしてヘルスケア』と題し、全国スーパーマーケット協会の増井德太郎副会長と日本ヘルスケア協会の今西会長に語り合っていただいた。(進行役:流通ジャーナリスト・山本武道/写真:ヘルスケアワークスデザイン記者・笠原亜紀世)


(左から)公益財団法人 日本ヘルスケア協会・今西信幸会長
一般社団法人 全国スーパーマーケット協会・増井德太郎副会長


―― 国の施策の一つに健康寿命延伸がありますが、その中心は食と健康であり、国民の間に、ヘルスケアの必要性を啓蒙していかねばなりませんが…。


今西 私ども日本ヘルスケア協会(JAHI:Japan Association of Healthcare Initiative)は、健康寿命を延伸させるヘルスケア産業界の意見を政策に反映し、しかもその振興および推進を支援する第三者機関が熱望されたことから、より良い日本の社会づくりに貢献するために2015年11月に一般財団法人日本ヘルスケア協会を発足し、今日では公益財団法人として活動しています。

ヘルスケアについて念頭に入れておくべき認識として、医療に関わることは厚労省、食は農水省、ペットは環境省、そしてヘルスケアは経産省と、それぞれ管轄の違いがあります。スーパーマーケットは農水省と経産省ですね。こうした縦割り行政を、国民の健康創造へ予防を重視した横割りの施策が不可欠なことをアピールしていかねばなりません。

日本では、「医←薬←食」というヒエラルキーがあって、医療と関わると当然、医療が最優先されることになります。この三つは三角関係にならなければいけないと思っている中、厚労省でも「食」の立ち位置を受け入れる傾向が見られるようになってきています。

食は、「予防」の中心と捉えておりますが、その食の啓発や流通の要はスーパーマーケット業界にあると考えています。健康寿命の延伸は国の施策としての一つですが、予防の観点からも食と運動、そして睡眠も健康寿命の延伸に寄与する重要なポイントでもあります。日本ヘルスケア協会としては、全国スーパーマーケット協会さんと協調していくことが大事ではないかと思っているところです。

増井 今西会長から、健康寿命の延伸において食と運動、睡眠がポイントになるというお話を頂戴しましたが、スーパーマーケット業界全体としてはまだ、他社との競争、安く大量に売るという高度経済成長時代の意識が残っているのが実態と言えます。

ただ多くの経営者は、会社の存続に関わることとして、品揃え、訴求方法など新たな考えを取り入れて、どう販売促進につなげていくか考えているところと見受けられます。私個人としては、食は健康の中心であり事業の基本である思っております。

歴史的なことを申せば、1948年に紀ノ国屋が他店に先駆けて(都内青山で)生鮮食品の販売を始めました。終戦後、アメリカがもたらしたサラダ文化を、日本に根付かせるきっかけになったと思います。

今もなおスーパーマーケットは、国民にとって大事な食生活の変化を、お客様に啓蒙していますが、そこで付け加えていただきたいことは、“食と健康”というキーワードではないでしょうか。その理由ですが、食が国民のための健康創造の柱となっているからです。


―― では食は、どの程度ビジネスとして進んでいるかでしょうか。スーパーマーケットの売上げと発展に貢献している商談展示会についてお話しください。


一般社団法人 全国スーパーマーケット協会
増井德太郎副会長


増井 スーパーマーケット業界の実績ですが、2024年度の販売額は25兆4000億円(23039店舗)、そして2025年度が26兆6000億円(23264店舗)に達していますが、一方、商談展示会の『スーパーマーケット・トレードショー(SMTS)』は、今年2月の開催で60回を数え、2151社が出展し来場者は8万人を超える規模となりました。

出展していただいた企業の商品は、ナショナルブランドから各自治体の特徴ある商品まで、各業態のバイヤー向けにアピールできたと実感しております。次回は2027年2月17日(水)から19日の3日間、千葉市の幕張メッセ全館を会場に、1,000コマ規模で行われる予定です。今西会長からは、ご助言を頂きました新しい企画として、“機能性弁当”や“機能性総菜”などもご提案できるよう、担当者に企画を練ってもらっているところです。

実は、これまで出展できない賛助会員様が一定数ありました。そこで来年7月に、生鮮売り場の質的向上をめざす展示会『SMTSフレッシュソリューション2027』(7月28日〜30日:幕張メッセ)も開催する予定です。

2027年度は、『SMTSフレッシュソリューション2027』を加えて、全日本スーパーマーケット協会の商談展示会は年に2回となりますが、流通業界の変革時代において、お客様のニーズは日々変化し広がりを見せていることからも、食品小売業の売り場も変化と進化を続けなければなりません。

そこで当協会では、生鮮4品(農産・家畜・水産・惣菜)カテゴリーに特化し、それぞれの現場の活性化をサポートしていただける取引企業様を探す新規商談展示会を開催することになりましたので、ぜひ食品流通業界への最新のソリューション提案の場として、多くの関係企業様の出展を募っております。


 ―― JAHIでは、商品の認証制度を始めているところとお聞きしますが、どのような内容でしょうか。


今西 医薬品の場合、用量用法は、きちんと決まっていますが、食品では例えば朝鮮ニンジンが入っているから健康にいいとか、ビタミンCを取れば健康に良いとかいう程度で、使い方によって有効であるといった発想は、医薬品のようにはありません。

本当に有効なのは何かという、機能性表示制度もできたのですから、そこをもっと分かりやすくアピールできれば良いと考えています。生鮮で言えば、従来の野菜などと調和しながら、「体に良い」「美味しい」「安い」といった選択が可能になればと思います。

わが国で、健康寿命の延伸を円滑にスピーディーに実現させるためには、ヘルスケアに関連する商品・サービスやマネジメントシステムないしはビジネスモデルを、同じ品質、同じレベルで提供できる仕組みを整備することが必要です。

日本ヘルスケア協会では、わが国のヘルスケア産業のレベルアップのために、第三者機関としての認証制度の確立に取り組んでいます。


―― 認証制度は、いつから始まったのですか?


今西 認証制度の申請受付は2025年1月から始まり、その年の3月に第一弾の認証商品を公表しました。この制度は、ヘルスケアに関する様々な情報が氾濫する中で、情報の信ぴょう性・中立性・公平性などをめぐり、エビデンスのある、正確で偏らない確実な情報による判断が必要になってきたため、会員企業の製品に対する信頼性と品質向上を図るのが目的です。 

制度は、会員企業の製品が一定の品質基準を満たしていることを確認し、その製品に対して推奨マークを付与していますが、マークは赤と青の人型のシンボルを用い、国民及び製品を取り扱う事業者に、“信頼性”と“品質“を、わかりやすく伝達する狙いがあります。
認証商品の認定は、当協会及び外郭団体に所属する5人(医学博士2人、薬学博士2人、農学博士1人)の審査員が、ヘルスケアの概念

土台となる医・薬・食の三つの領域の専門家が推奨し、健康寿命の延伸、ヘルスケア領域で信頼できる“本物”をヘルスケア市場へ届けるという仕組みです。

増井 スーパーマーケット業界全体として欠けているのは、商品のエビデンス(科学的根拠)だと思っています。また誰が、そのエビデンスの裏付けをしていただけるのか。こういった点をクリアした商品が、日本ヘルスケア協会さんの認証制度で推奨商品の表示ができるようになれば、もっと多くのお客様にバラエティー豊かに選択肢をご提供できるのかなと思います。

今西 選択するうえで、「松竹梅」の考え方もあった方が良いと思います。また例えば20代と60代では食べる量や嗜好が違ってきますので、そうしたニーズに合わせた品揃えや訴求方法は当然、必要不可欠ですね。

増井 お客様の年代が上がってくると、日本食、和風の品揃えは変わってきますね。国内の自給率が低い中で、今回、戦争によるエネルギー問題によって、食が切れるような危機に見舞われたらと思うと、国内でどれだけ供給体制を維持できるか、改めて課題として考えさせられました。

安く大量に供給することも必要ですが、もっと食を大切に、お客様にお届けして召し上がっていただくーそうした啓蒙も、全国スーパーマーケット協会に課せられたテーマではないかと考えております。


―― 国民のための価値創造への取り組みは、どのようなことがポイントになると思われますか。


公益財団法人 日本ヘルスケア協会
今西信幸会長


今西 この2月に筋ジストロフィーの治療薬が保険認可されましたが、1患者あたり3億497万円で国内最高額でした。医学の進歩によって、これまで治らなかった病気が治るというのは朗報ですが、現行の医療保険制度の維持という点では、「このまま維持できますか?」という疑問は拭えません。ですから、疾病にかからないよう、常日頃から予防を心がけなければなりません。

「疾病率を下げるためには予防するしかない」「医療保険制度を守り維持するためには予防が重要」という認識は、近年、医療側にも抵抗なく受け入れられるようになってきました。医療の流れは、治療から予防へと移行しつつあり、これからは“予防”の2文字が、「なぜ今、ヘルスケアなのか」という問いに対しての答えになると思います。

むろん、ただ自己主張するだけでなく、大切なことは少子・高齢化の進展、労働人口の減少、患者数の増加といった日本の現状を踏まえて、「食と健康」「食は予防の中心」、つまり食によるヘルスケアの必要性を医療側に訴えていくことです。

これまで食は、栄養面を強く認識してきましたが、これからは栄養面を中心とした観点から、健康寿命延伸という視点からも、”食と健康”というテーマのもとに、全国スーパーマーケット協会さんと日本ヘルスケア協会とがコラボして、互いが協力し国民の健康創造へ食が基本となるアピールができるようになればと思います。

食は予防の中心と申しましたが、「健康寿命延伸は、全国スーパーマーケット協会のテーマである」と打ち出せば、そこにおのずと方向性が見えてくるのではないかとも思います。今、ドラッグストアが食に力を入れる傾向にありますが、むしろスーパーマーケットにおいては、食の重要性や付加価値を含めて新たに提案できる土壌があるのではないでしょうか。

増井 ドラッグストア各社の食品の売上げと、スーパーマーケット各社の売上は拮抗しています。先日、五反田で、あるドラッグストアに入ったら、広い店内にたくさんの食品が、ずらっと並んでいましたが、しかし安さだけが目について、もう少し健康の観点から食を見直していただけたらとも感じたのは正直なところです。

スーパーマーケット業界では、ドラッグストアにおける食品の売上げの伸びに危惧する声がありますが、私自身はスーパーマーケットも、もっと食と健康の結びつきを打ち出して、ワンストップの利便性を提供できる可能性はあると思います。ですから、「食は健康寿命延伸の元」という“錦の御旗”を立てて進まないといけないわけですが、どう打ち立てていくか、今西会長のご助力もいただき、進めていく必要性を感じています。


―― 両協会が、“食と健康”というキーワードでコラボすれば良いと思いますが…。


増井 基本的に、日本ヘルスケア協会さんとのコラボに関して私は賛成ですが、組織としてコンセンサスを得て道順を決めていくという段取りが必要です。今回のような対談の機会もですが、当協会の理事会や総会に今西会長にお越しいただき、お話していただくのも良いと思いますので、その際にはよろしくお願いいたします。

今西 いつでも、ご連絡いただければ、できる限り、食と健康やヘルスケアの推進についてお話しさせていただきます。日本ヘルスケア協会では、多くの疾病の治療に貢献してきた現行の医療保険制度を堅持していくためにも、医療との共同路線、様々な企業にヘルスケア産業の振興を呼びかけてきました。

ますます進む少子・高齢社会にあっては、まずは病気にかからないこと、そして重篤化しないよう食を中心とした予防が大切なことを、全国スーパーマーケット協会さんと手を携えて、国民に呼びかけるとともに、国民の間に高まる健康創造ニーズに対応し、ヘルスケア産業の振興に寄与できればと考えております。

増井 到来した超高齢社会下においては、より健康で長寿でありたいは国民共通の願いでもありますから、“未病と予防”の推進活動が不可欠ですね。これからの時代、食を中心とした「予防」が重要になってきますので、我がスーパーマーケット業界も、ヘルスケア産業の振興の一翼を担っていることを念頭に置き活動していきます。


―― 健康寿命の延伸へ両協会の役割は、ますます重要になってきます。「食による予防」が重要なことを再認識しました。本日はありがとうございました。


<対談を終えて>
お二人のお話から、現行の医療保険制度を維持するためには、「自分の健康は自分で守る」こと。その中心にあるのは「食」。そして、「ヘルスケア=予防=食=スーパーマーケット」の図式が浮かんだのと同時に思い出したのが、日本ヘルスケア協会の『野菜で健康推進部会』の活動だ。

この部会は、国民の野菜摂取の量的拡大と質的向上の一層の推進を図るために設立された。日本人の野菜摂取量は、厚労省が定めた目標の1日平均350gに80g不足し270g。これを早期に350gまで引き上げ、摂取の順序に関して、“ベジタブル・ファースト”の習慣を国民の間に徹底したい」というのが、部会が誕生した背景にあるが、2015年に食品表示法の改正によって機能性表示食品、栄養機能食品表示等の表示ルールに、野菜を含む生鮮食品が含まれるようになった。

この時を契機に、生鮮食品の機能性表食品が相次いでデビューしていった。しかし野菜に関しては、「野菜が持つ機能性表示にも個別の分析データやエビデンスが必要ではないか」として、野菜売り場に保健所の査察が行われ、機能性を表示したPOPが撤去され、以後、小売店が野菜の機能性表示に慎重になり、野菜売り場にPOPの掲示がなくなってしまった。

そこで、「野菜の消費を落ち込み、消費者の商品選択に当たっての情報収集を阻害する」との視点から、野菜で健康推進部会が行政当局に掛け合い、2018年3月28日付で「特定の商品を指さなければ生鮮食品について機能性表示の届出を行わなくても、特定成分の含有の有無や当該含有成分の機能性など一般的な特徴は、POPや広告などに表示することができる」ようになった経緯がある。

現在では、生鮮食品の売り場のPOP表示には、機能性が表示されても撤去されることはなくなったが、実は、この活動に全国スーパーマーケット協会の増井副会長がアドバイザーとして協力されていて、この時から日本ヘルスケア協会と全日本スーパーマーケット協会との提携が始まっていたことになる。 

国民の健康創造ニーズへ食を中心とした予防の普及・推進に、全国スーパーマーケット協会と日本ヘルスケア協会が果たす役割は大きい。(記:山本)