私は、この40年間、熱を出したり風邪を引いたりしたことがありません。なぜか?自分自身の脳と体を常に意識して、毎日の生活習慣のなかでヘルスケア、セルフケアを実践しているからです。自分の体の健康維持は、自分が一番よく知っていることですから、外部からの何らかのダメージを受けたときは、自分の責任ではないにせよ、できるだけ早く原因、症状を把握し、自分の責任で、しかるべき処置をすべきでしょう。自身で人の助けに頼らずに自分の力で生きていくためには、予防、免疫力、老化防止対策、そして人間の体にもともと備わっている自然治癒力を信じて自覚・実践することです。日本の皆さまの関心は、今や病気にならない体づくり、つまり健康創造です。とくに高齢者人口の増大が進むなかで、これからは、“脳と体のアンチエージング”がとても重要になりますから、”未病と予防“をキーワードとするヘルスケアに関わる産業の振興が大切になることは間違いありません。『食と健康』をテーマにした産業の普及・啓もうへの活動を、ともに進めましょう。(執筆:Dr. グレイス 前田)
■予防医学(Preventive Medicine)とは ?
私は、1983年から予防医学に取り組み、分子栄養学の本家でビタミンCの権威であるライナス・ポーリング博士(ノーベル化学賞とノーベル平和賞を受賞)の師事を受け、サプリメントの勉強も、このころの日本には何もありませんでしたが、博士の理論には大いに共感し学ぶようになりました。
米国で開催されたInternational College of Applied Nutrition(ICAN)へ出席。スピーチした際に、こんなに多くの米国のドクターたちが、健康維持のためのサプリメントの研究・開発に関心をもち、学会を開いていることに感銘を受け、予防の大切さ、病気になってからでは遅いこと、さらに免疫力、老化対策なども学びました。
■あらかじめ病気を防ぐことの重要性
私たちは、不健康な状態になると、体に異常を感じるようになり、早期発見・早期対策が必要になりますので、早めに検査を受けて異常の有無を確認しなければなりません。医療機関に行き医師の診察を受け、必要に応じて検査(精密検査)が必要になり、病気が見つかれば処方箋が発行され、ドラッグストアや薬局で調剤してもらい、それでも状態が良くなければ手術することになりますから、日頃から自分の健康維持に気をつけるべきです。
私たちが健康であるためには、偏らない食生活、十分な栄養をとり、水や酸素を十分に取り入れて血液の流れを良くすることによって脳と体を健康な状態を維持することです。
■セルフケア(自己予防)とセルフメディケーション(自己治療)
健康な状態から治療が必要な状態になるまでには、病気の予備軍、つまり未病の段階にある人たちは、自らの責任で健康管理をし、セルフケア(自己予防)・セルフメディケーション(自己治療)が欠かせません。予備軍の状態にある人は、自らがケアすることで疾病にならずに健康な状態に戻さなければならないからです。
もし体の調子がおかしいと感じた場合には、早めにドラッグストア、薬局の薬剤師や医薬品登録販売者に相談して、症状に応じて医薬品(1~2日分)を選んでもらうことですが、日頃から病気にならないよう免疫力を高めるようなサプリメントも良いでしょう。
相変わらず国民総医療費が高騰し、医療の流れも治療から予防重視へと大きく変革しつつあるなか、健康寿命延伸時代のキーワードは、”未病と予防“なのです。
■健康寿命(Health Lifespan)とサプリメント
心身ともに人に頼らずに、人生をまっとうするには、脳と体のアンチエージングが大切です。大脳の神経細胞は30歳を超える頃から、毎日10万個ほど死滅していきます。これを防ぐために、私は米国で『Brain Support』というサプリメントを、2007年には現在、日本でブームになっているNMN(Nicotinamide Mamo Nucleotideo=ナイアシン、ナイアシンアミドは前駆物質)、レスベラトロール(赤ブドウワイン)、DMAE(ジメチルアミノエタノール)などを成分・処方しました。
体は動けても脳が働かない認知症、脳が働いても身体が動けない、歩けないは、どちらも健康ではありません。私は脳と体のアンチエージングについて、ハリウッドの日本語放送テレビで8年間にわたりトークショウを行いました。
■人間の老化、寿命を決定するテロメアとは?
人間は、誰でも1年に1度、1歳、年を取っていきますが、脳と体は戸籍の年齢とは異なり、自身の努力によって若さを保ち老化を防ぐことができます。老化とは、体内の細胞が老化しダメージを受けて損傷をすることです。
老化の原因は、細胞の酸化、活性酸素、ストレス、有害物質、紫外線、住環境などが関与していて、細胞の損傷があるとDNAが損傷し細胞分裂が停止してしまいます。そこで必要なのが、染色体を守っているテロメアです。
テロメア(telomere)とは、染色体の末端にあるタンパク質で染色体(DNA)を守っています。若い細胞の染色体は長いテロメアを持ち、細胞分裂するたびにテロメアは短くなります。そして細胞分裂は、停止の状態になります。DNAの損傷により、老化の程度の状態が分かります。
■命の長さに大きく関与しているテロメア
テロメアを守るには、睡眠、運動、食バランス、ストレスコントロールなどの実行が不可欠ですが、がん、動脈硬化、糖尿病などによって、テロメアが短くなると、命が縮むことになりかねません。
大きな疾患があると、テロメアは体内で異常な増殖性を持つ細胞などが、がん化するのです。細胞分裂の回数には限界がありますが、テロメラーゼという酵素が多く分泌されれば、若さを保つことができます。
がんは、細胞分裂のときにDNAの複製ができず、再生力を失うので長生きできないのです。60兆個の細胞は、毎日細胞分裂により新しい細胞を作りますが、人間はテロメアの長さが長いほどに長生きし、重大な疾患があればテロメアは短くなり長生きできません。
■血液検査でテロメアの長さ、寿命が分かる
免疫力(病を免れる力のこと)が強い人ほど、病気になりにくく、たとえ病気になっても早期に回復します。人間が病気になったり、けがをしたりするときは、免疫反応、アレルギー反応、抗原抗体反応が起こります。
抗原とは、外からの敵(細菌、ウイルス、有害物質など)のことで、抗原は自分の体のことですが、世の中には、ちょっと体の調子が悪いと医療機関に行く方は少なくありません。時に重傷になることも多いのですが、それは自分の体(抗体)と外敵(抗原)とが戦った結果により、健康になるか病気になるかが決まります。
■免疫力を高めるには?
では、どのようにしたら免疫力を高めることができるのでしょうか。それは、幹細胞(StemCell)や白血球が、どの程度活躍することができるかによります。
幹細胞は、再生医療で傷んだ細胞を修復したり、新しい細胞を創生きしたり、大きな働きがあり、すべての細胞の親玉といって良いでしょう。ホルモンの親玉は、DHEA(デヒドロエピアンドロステロン)で、テストロン、エストロゲン、成長ホルモンなどを作りだします。
血液中の白血球は、免疫細胞で構成され、異物から体を守る働きをして抗原の侵入を防ぐ役目をしています。とくに白血球B細胞は、抗原受容体として病原菌、ウイルスなどに抵抗して悪いものの侵入を防ぐ役目をしています。
抗原が勝ち抗体が負けると病気になったり、傷を負った患部が腫れたり痛んだり、症状が重症化することになるのに対して、抗体が勝つと症状が重症化せずに症状が軽快になり、健康な状態に戻り、病気にならないようになります。
■不可欠な自分の健康は自分で守るヘルスケアの実践
日本は、世界に類のないほどのスピードで高齢社会に突入しました。2021年度における65歳以上の高齢者人口は、総務省統計局の調べによりますと3460万人、総人口の29%を占めていますが、課題は健康寿命の延伸です。生活習慣病が多発しないよう、これからは”未病と予防“へ、国民の意識は自分の健康は自分で守るヘルスケアの実践へと向かうことは間違いありません。
医学や薬の進歩は目覚ましく、多くの疾患の治療に関わってきましたが、日本の医療は急速に治療から予防に移行しつつあり、医療も含めてヘルスケアの普及が大切になります。なかでも、食が健康維持・向上に結びつくことが科学的に解明され、さまざまな形態のサプリメントが開発されました。
私は、日本でアレルギー予防研究所を立ち上げ、化粧品のアレルギーや脳と体のアンチエージングなどに関する書を執筆しました。そしてサプリメントを開発する米国有数の企業にスカウントされ研究活動に専念し、ライナス・ポーリング博士との出会いもあって、こうした長年にわたる成果を、日本の皆さまの健康創造に役立てたいと思っております。
<著者プロフィール>
Dr. グレイス 前田
慶応義塾大学薬学部卒、慶応義塾大学医学部大学院、米国 PW Univ. doctor coarse 終了 Ph.D Health Science。米国の大手ドクター向けサプリメント会社「Metagenics」の招聘で1991年渡米。研究開発デレクター。ライナス・ポーリング博士に師事。
1984年にヘルス&ビューティミニトーク、脳と体のアンチエージング、予防医学 健康長寿をテーマに、8年間にわたりハリウッドの日本語放送テレビ、ラジオに出演。日本在住時はアレルギー予防研究所長、総合健康推進財団立ち上げる。
所属学会:Alzheimer’s Association(USA)、American Academy of Anti Aging Medicine USA、LPI.(Oregon State Univ)USA、WebMD USAInternational personalized Medicine(国際顧問日本)、World Academy of Anti Aging & Regenerate dative Medicine(国際抗老化再生医療学会)国際顧問日本)