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プラネタリーヘルスを実現するために、人の健康にも地球環境にも甚大な影響を与える日々の食事(ダイエット)からの解決を提唱するEAT-Lancet委員会が提唱している「プラネタリーヘルス・ダイエット」

世界人類が健康を維持しながら、この地球と共存共栄していくための世界人類の標準食として示されているものです。

これまで、エビデンスが不十分であることが指摘されていましたが、EAT-Lancet委員会から、ジャーナル誌に大規模な前向きコホート研究報告がありました。

プラネタリーヘルス・ダイエットによって、総死亡、及び原因別死亡リスクが低下し、環境への影響も低下することが示されています。

The American Journal of Clinical Nutrition(Vol120, 1, July 2024,p 80-91)に掲載された研究です。

EAT-Lancet委員会は、プラネタリーヘルス・ダイエットの遵守度を定量化するため、Planetary Health Diet Index(PHDI)を開発しました。

アメリカにおける男女の3つの前向きコホートにおいて、PHDIと総死亡率と原因別死亡率との関連を評価する目的で、Nurse’s Health Study(1986~2019)のがん、糖尿病、心血管疾患がない女性66,692人、Nurse’s Health StudyⅡ(1989~2019)の女性92,438人、Health Professionals Follow-up Study(1986~2018)の男女47,274人を追跡調査したところ、PHDIが最も高い群は、最も低い群と比較して、心血管疾患による死亡リスクが14%、がん死亡のリスクが10%、呼吸器系死亡リスクが47%、神経疾患死亡リスクが28%低かったことが明らかになっています。

また、女性では、PHDIは感染症による死亡リスク低下とも有意に関連していたとのこと。
そして、PHDIスコアは、温室効果ガス排出やその他の環境因子とも逆相関していることが明らかになりました。

結論として、3つの大規模な前向きコホート研究における追跡調査で、PHDIが高いほど、総死亡率及び、原因別死亡リスクが低く、環境への影響も低いということが明らかになりました。

また、3つのコホート全てにおいて、全粒穀物、全果物、鶏肉、ナッツ類、大豆、不飽和脂肪酸の摂取量が多いほど、総死亡リスクが低く、一方で、ジャガイモなどの糖質の多い野菜、赤身肉・加工肉、卵、添加飽和脂肪酸、添加糖、フルーツジュースの糖分の摂取量が多いほど総死亡リスクが高いことが明らかになりました。

プラネタリーヘルス・ダイエットのバランスは、下の1枚のお皿に表されます。

1日のお皿の半分をいろいろな種類の野菜で満たす。
全粒穀物を食べる。糖分の多い野菜や環境負荷の高い乳製品や家畜の肉は控えめに。
その代わり、豆やナッツ類でタンパク質をとりましょう。不飽和脂肪酸の油を中心にして、添加糖類は控えめに。

自分にも地球にも優しい、プラネタリーヘルス・ダイエット、ぜひ挑戦してみてください。

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プラネタリーヘルス・ダイエットについては、こちらの記事もご参照ください。

プロフィール
桐村 里紗 (Lisa Kirimura M.D.)

地域創生医/tenrai株式会社 代表取締役医師
東京大学大学院工学系研究科道徳感情数理工学講座共同研究員
日本ヘルスケア協会・プラネタリーヘルス・イニシアティブ(PHI)代表

予防医療から在宅終末期医療まで総合的に臨床経験を積み、現在は鳥取県江府町を拠点に、産官学民連携でプラネタリーヘルス地域モデル(鳥取江府モデル)構築を行う。地球環境と腸内環境を微生物で健康にするプラネタリーヘルスの理論と実践の書『腸と森の「土」を育てる 微生物が健康にする人と環境』(光文社新書)が話題。

(次回「地域創生医 桐村里紗の プラネタリーヘルス」は8月初旬に掲載予定です)