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ケアマネ福田英二の徒然日誌その8 傾聴・共感・そして…

2024年5月13日(月)雨時々曇り Rainy Days And Mondays (雨の日と月曜日は) / Carpenters

いつからだろうか、傾聴や共感・受容といった精神科のテクニックが、精神科看護だけでなく広く医療や介護の世界、一般の会話術にまで定着したのは。

人の話を聞く・聴くことで「その人を理解する」ことができる、共感や受容は「その人に寄り添う」ことができると教わった(ような気がする)。まさに高齢者や障害を持つ人とのコミュニケーションには、必要不可欠のテクニックである。

地域包括支援センターの基本業務には「総合相談」がある。高齢者のお宅にお邪魔して、いろんなお話を聞くのである。そうした場面で一番関心するのは、皆さん本当にお話がしたいのだということと、「聞いてほしい」ということである。

そのお話に耳を傾ける。

90歳になるAさんはいつも何かしら「忘れて」しまい、その都度いろんな人に助けてもらっている。そしてまた、同じ話を繰り返し聞いてもらいたくて私のところにやってくる。でもよくよく聞いていると、実は聞いてもらいたいだけではないことが分かってくる。

「せっかくお礼にお菓子を持って行ったのに、どなたも受け取ってくれない。そんなものを受け取ったら首が飛ぶ…なんて言ってね。」と寂しげに話してくれる。助けてもらったせめてもの恩返しに、ささやかなお菓子を持っていく彼女の気持ちも、「受け入れ」てはもらえなかったようだ。

コミュニケーションの一つが傾聴であるが、これは話をよく聴くという技術ではなく、話を聞いて「何をしてあげるか」を考え実行することが、実は一番の醍醐味である。相槌を打つでもいいし、手をたたいて喜びを表現してもいい。あるいは一緒に泣いてあげることも、時として必要なことでもある。

ささやかな老婆の気遣いを受けとめる、そんなことも出来ないほどに社会は「かたくな」になっているのだろうか?

「せっかくだから一つだけいただきましょう。ご一緒に食べましょうか。」

その一言で、Aさんは救われていく気がするのだが…。

地域包括支援センターがそんな高齢者の止まり木となり「居場所」になってほしい。