昨今、不思議と思われることがどんどん科学に裏づけられてきてワクワクしています。
新しい研究では、植物同士が密に情報交換をしたり、微生物や周囲の昆虫達ともコミュニケーションしながら連携していることなどが明らかになっています。
話題になっているNHKスペシャル『超・進化論』の「植物からのメッセージ 〜地球を彩る驚異の世界〜」では、無口な植物が実は饒舌なお喋りをしており、しかも植物同士は、競争し合うよりもむしろ、ネットワークの中で利他的に助け合いながら生きていることが驚きを持って伝えられています。
多様な生き物同士の会話がもし私たちにも聴こえたら、森の中はまるでオーケストラのようなハーモニーなのでしょう。
一方で、私たちは毎日、食料として他の生き物を食べていますが、そうした会話など想像もしないままに、せっせと腹を満たしています。
植物達が虫にかじられたり、真菌などの微生物にさらされた時に生体防御のために分泌する物質が、ファイトアレキシンです。生き物同士の相互作用によって生まれます。
植物が作りだす化合物・ファイトケミカルの一種です。
人にとっても抗酸化作用を発揮し、長寿遺伝子のスイッチを押すことが話題になったレスベラトロールなどのポリフェノール類なども含まれます。
植物の成分は時に人にとって毒にも薬にもなり、ヒポクラテスの昔から、薬草が使われてきた歴史があります。
今では、野菜の色や香りの成分を彩りよく食べるレインボーフードが推奨されたり、サプリメントに応用されたりと、ヘルスケアにとって馴染みが深い成分ですね。
人の体は適度にストレスを与えて鍛えることで強くなりますが、それと同じで植物もワイルドに育てることで防御力を発揮してファイトアレキシンを作ります。
野菜も多様な微生物、多様な虫、多様な植物と共生することで、本来の野生の力を取り戻すことができます。
先日5月14日に、生態系を人の手で豊かに拡張する協生農法®︎(シネコカルチャー™️)によって、私たちのプラネタリーヘルス拠点・鳥取県江府町のせせらぎ公園を食べられるジャングルにしよう!と、株式会社SynecOの支援のもと、13種類の苗木、111種類の種苗を導入しました。
協生農法は、ソニーコンピュータサイエンス研究所の舩橋真俊研究員が提唱する農法です。
「耕さず、農薬や肥料を与えず、種苗以外持ち込まない」という条件のもと、たくさんの種類の種や苗、果樹を一気に寄せ植え(混生密生)して、多種多様な植物や生き物が共生して助け合い高め合う状態を作ります。
土の微生物、昆虫、さらには鳥や動物、そして関わる人も、みんなが生態系を豊かにする仲間ととらえます。
生態系の活動に乏しい一般的な農業と比べて、土壌の微生物多様性と活性を示す値も高くなりますし、茶葉の研究では、微生物・虫・他の植物との豊かな生態系相互作用を反映したアレロケミカル(異種の動植物との情報伝達物質)などの二次代謝産物が特徴的に含まれることもわかっています(*)。
一般的な農業は、農薬を使って微生物や虫、そして野生の植物を雑草として排除し、栄養が偏った化学肥料を与えてアンバランスな状態で人が食べる植物を育てます。
その環境では、豊かな生態系のコミュニケーションは生まれませんから、栄養価も落ちます。さらに、その農地の周辺の生態系は崩れ、過剰な化学肥料が河川に流れると海の生態系のバランスも崩してしまいます。
人も地球も健康にする農業は、「環境保全」を超えた「環境再生型」農業として世界的に注目されています。
家庭菜園での実践もおすすめですが、なかなかハードルが高いという方は、日常の食事の時間に、その植物の育った環境、そこにいる多様な生物同士のコミュニケーションに想いを馳せてみることから始めてみて下さい。
※協生農法®︎(Synecoculture™️/シネコカルチャー)とは、
地球の生態系が元々持っている力を総合的に活用しながら有用植物を生産する農的方法です。食料生産だけでなく、環境や健康にもポジティブな影響を与える立体的な生態系の活用法です。
協生農法は、株式会社桜自然塾の登録商標。Synecocultureは、ソニーグループ株式会社の商標又は登録商標です。
(*) Agriculture . 14 December 2020:10(12):632.
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