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ヘルスケアレポート『人類が追い求めてきた老化予防への道』

熟成ニンニク抽出液中に含まれるS1PCに抗老化作用
湧永製薬とIRPAが共同研究の成果を国際学術誌に掲載


熟成ニンニク抽出液中に含まれるS1PC(S-1-プロペニル-L-システイン)に抗老化作用―― 湧永製薬研究グループと一般社団法人プロダクティブ・エイジング研究機構(IRPA)との共同研究によって、加齢に伴う骨格機能の低下を制御することを世界で初めて発見した成果が、国際学術誌『Cell Metabolism』に掲載された。共同研究は、創業70年、ニンニク一筋に研究を進め様々なヘルスケア商品を開発してきた湧永製薬が、老化・寿命のメカニズム研究に取り組むIRPAとで進めてきたもの。抗老化作用をもたらすS1PCの研究は、人類が追い求めてきた抗老化への道が開け、さらにエイジングケアで注目成分のNMN(ニコチンアミドモノヌクレオチド)と組み合わせた、抗老化に関連した新しい食品のデビューに期待したい。(記事=流通ジャーナリスト・山本武道)


湧永製薬の湧永寛仁代表取締役社長(左)と
IRPAの今井眞一郎代表理事


「元気で長生きでいられる社会に貢献したい」


1955年6月に誕生した湧永製薬(当時湧永薬品)は、創業者の湧永満之氏がファーマコン製薬研究所のオイゲン・シュネル博士と出会い、博士の助言のもとに研究を重ね、ニンニクを約2年間熟成させることでニンニク特有の刺激臭を軽減し、効果と安全性のバランスの良い熟成ニンニク抽出液の開発に成功。1960年に医薬品『レオピン』(1965年にキヨーレオピンと改称)がデビューした。

「世界中の人々を健康にし、幸福な生活をしてもらいたい」という創業当初からの願いから、オーストラリア、アメリカ、カナダ、東南アジア、ヨーロッパへと市場を拡大してきた湧永製薬の新しい研究は、熟成ニンニク抽出液中に含まれるS1PCの新しい作用。

5月8日、都内で記者会見した湧永寛仁代表取締役社長は、「元気で長生きでいられる社会に貢献したい」として、胃粘膜を刺激する生ニンニクを2年間熟成した抽出液の研究に取り組み、論文・学術発表は1000件以上に及んでいることを紹介。

「熟成ニンニク抽出液は、健康の土台を作っている基礎薬ではないか。S1PCはeNAMPT(老化・寿命制御に重要な酵素)を増加させることから、抗老化作用に関与している可能性があるのでは・・・」と研究を進め、自社研究に世界的な知見が不可欠だとして、抗老化分野の世界的な研究機関との共同研究を模索し、IRPAと出会ったという。

「今回の発表は、人類が昔から探し求めてきた方法に対する一つの回答となります。人の生命体は加齢とともに必ず老化していきます。年を追うことに体の弱りを感じてしまう人類への明確な答えであり、そして明るい希望をお届けできることを確信しております」(湧永社長)


自社のストーリーを語る湧永社長


「老化は治療から予防の時代へ」


IRPAは、最先端の老化・寿命研究を通じ、日本が健康長寿国家として持続的に発展する社会の実現を目指し2019年に設立された研究機関。今井眞一郎代表理事は、「私自身もこの日を迎えられたことを非常にうれしく思うと同時に、この研究の重要性に興奮冷めやらぬ気持ち…」と前置きして、次のように老化ついて見解を述べた。

「老化は病気なのでしょうか。病気は、特定の臓器や組織、あるいは部位を対象とした治療を考えているのですが、すべてが治療可能ではなく、現在の健康状態に回復させることを目的として治療法が考えられています。私自身は、老化が病気であるという考え方をとっておりません。

基本的に老化は病気ではなく、生理学的に起こってくる現象であると考えております。老化は病気であり、治療の対象となるという考え方が広まっていますが、老化は世界中のすべての人に例外なく起こりますから、老化を病気とみなすのは論理的に無理だと考えています。老化は、遅れさせることはできたとしても、70歳の方を20歳の状態に戻すということは現在の科学をもってしても不可能です。

こうした理由を考えたときに、老化を病気とみなして治療することは適切でないと考えております。つまり老化は、治療することではなく予防することであり、この老化の予防のための重要な考え方があります。それは、健康を保っていくことはもちろん私たちのそれぞれの老後の生活を楽しんでいくために、また社会に貢献し続けていくために重要なのがプロダクティブ・エイジングの考え方です」


ヒト臨床実験で有用性と安全性も明らかに


研究は、熟成ニンニク由来成分のSIPCに、様々な健康効果が報告されている中、この成分が持つ新しい作用機序と生体における効果について解析したもの。その結果、摂取されたS1PCが、脂肪組織の中にある重要な役割を担う酵素のLKB1に働きかけ、老化・寿命制御に重要な酵素のeNAMPTを含む細胞外小胞(eNAM-EV)の血中への分泌を促進することを世界で初めて発見した。

さらに研究では、分泌されたeNAMPT-EVは脳の視床下部に到達して、加齢に伴う細胞のエネルギー源の「NAD+」の合成を高め、交感神経を介して加齢に伴う筋力の衰え(フレイル)や老化指標を改善することが、マウスの実験で明らかになった。

一方、ヒト臨床試験でも、25mgのS1PCの摂取によって、健康な量の脂肪を蓄えた被験者の血中で、eNAMPTが増加することが確認されたことが、IRPAの吉岡潔志主任研究員と湧永製薬中央研究所との共同研究チームによって明らかになり、S1PCが、「脂肪-脳(視床下部)-筋肉」という臓器間コミュニケーションを介して健康を支え、老化に拮抗する作用など、研究成果が論文に掲載された。

IRPAの吉岡主任研究員は、「私たちの脂肪組織は、メタボリックシンドロームの元凶として、さも悪者であるかのようなイメージが定着してしまっていますが、実は健康な私たちの脂肪組織は、生体内では決して邪魔者ではなく、強力な抗老化作用をもたらしてくれる因子(eNAMPT)の放出源であることが最近の研究で分かってきた」ことを説明。

湧永製薬中央研究所の鈴木順一朗主幹研究員は、「S1PCは、当社で初めて2016年に免疫調整作用のあることが明らかになり、新しい活性成分として注目してきました。その後、血圧を下げる作用や血流改善作用など様々な作用がわかりましたが、S1PCがどのようにして効果があるのかは不明でした。

今回の共同研究でS1PCが脂肪組織に作用することで、血液中のeNAMPTの産生量を増加させ、脳の視床下部で細胞のエネルギー源であるNAD+を上げることによって、老化に拮抗することが明らかになりました」として、さらにヒトでもeNAMPTを増加させることができるか調べた。

鈴木主幹研究員によれば、被験者はBMI30kg/㎡未満、20歳〜40歳の健康な男女(男性26名、女性13名)。プラセボーグループ20名、S1PCのタブレット(25mg)摂取グループ19名の血液を採取し摂取前、摂取30分後、1時間後、2時間後のeNAMPT量を測定した。その結果、ヒトにおいてS1PCはeNAMPT量を有意に増加させ、特に40歳以上で健康的な脂肪量を持つ被験者に対しては、摂取2時間後に血液中eNAMPT量が増える傍ら、S1PCの安全性ついては、プラセボグループとSIPC摂取グループの脈拍、収縮期血圧、拡張期血圧、肝臓のAST、ART、腎臓のクレアチニン数値に問題がないことも明らかになった。


NMNとSIPCとの組み合わせによる新商品誕生に期待


S1PCの抗老化作用に関わる普及については、「これからも、当社が開発した熟成ニンニク抽出液に対する取り組みの基本は変わることはありません。S1PCの抗老化作用については、当社はさらに研究を進めていきますが、この成分は非常に大きなポテンシャルがあると思っておりますので、そこに特化するようなビジネスは考えられる可能性は十分にあると考えています」と湧永社長は語っていた。

一方、今井代表は、「日本で、そして世界に求めてられているのは、確実な科学的な基盤があって、臨床試験で効能、そして安全性がしっかりと検証されたものを社会にお届けすることが、何よりも重要になってきていると考えております。ニュートラシューティカルによって、老化の予防を果たすための手段を、確実な形で世の中にお届けすることを私たちは目指しております」(今井代表)

両者は、生体に備わった「脂肪・脳・筋肉」という、健康を支え老化に拮抗する働きをしている重要な臓器機関コミュニケーションの活性を介して、全身の抗老化に寄与することから、「次世代の抗老化ニュートラシューティカル(機能性食品成分)としての応用が期待される」としている。

加齢に伴う老化。どうすれば防ぐことができるかは、人類が長い間追い求めてきた課題だ。熟成ニンニク抽出液中に含まれるSIPCが、共同研究によってマウスの実験で筋力の衰え(フレイル)や老化指標を改善すること、ヒト試験でも健康な脂肪組織で抗老化作用をもたらすeNAMPT量が増え、安全性試験も問題がないことが明らかになった今、両者は、今後、注目されるエイジングケア成分のNMNとS1PCの新しい機能を組み合わせた新商品の開発に取り組み、国民の間に高まるヘルスケアニーズにどう対応していくか。その答えは、7月に明らかにされそうだ。