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ミツカンの「Fibee」によるヘルスケア戦略/ミツカン 代表取締役専務 兼 日本+アジア事業COOの石垣浩司さんインタビュー

ミツカン 代表取締役専務 兼 日本+アジア事業COOの石垣浩司さんインタビュー
ミツカンの「Fibee」によるヘルスケア戦略
「食と健康」の新たな市場を切り開く「Fibee」



今年3月、ミツカンが新たなブランドをローンチした。普段の生活では摂取しにくいと言われる発酵性食物繊維に注目したヘルスケア食品ブランド「Fibee(ファイビー)」だ。現在はカレーやワッフル、飲料など8つのラインナップを展開し、ドラッグストアなど一部の小売店とECサイトで販売されており、非常に親しみやすいキャラクターやパッケージ、そして美味しさを武器に、販売動向は好調に推移しているという。同社は「穀物酢」や「味ぽん」など調味料で非常に有名な企業であるが、なぜ新たなヘルスケアブランドを立ち上げたのだろうか。「Fibee」はどのようなブランド戦略・市場性を持っているのだろうか。「健康意識がそれほど高くない生活者にも、医食同源を届けたい」と語る同社の代表取締役専務 兼 日本+アジア事業COOの石垣浩司さんにインタビューを受けていただいた。(取材と文=佐藤健太)


現在8品をラインアップするFibeeブランド=Fibee むぎゅっとワッフル(ココア)・Fibee むぎゅっとワッフル(アールグレイ)・Fibee 完熟トマトのキーマカレー・Fibee レンジでもちもち黒米と玄米ごはん・Fibee グラノーラ りんごとシナモンの香り・Fibee ひとくちビスキュイ オレンジとカカオニブ・Fibee ふわぁっと桃香るルイボスティー・Fibee ラーメン 香味野菜と濃厚みそ=


——ミツカンは酢や味ぽんなど調味料のメーカーとして知られていますが、なぜヘルスケアを切り口にした「Fibee」を企画・開発をしたのでしょうか?


石垣さん これまでミツカンはお酢などを中心とした調味料を展開してきました。事業に取り組んでいく中で、「経験則的にお酢は体に良いのでは」と考えるようになり、エビデンスを調べていくと、やはり「体に良い」ということがわかってきました。

そこからお酢を使った体に良い食提案やエビデンスなどの情報を発信するようになり、さらには、健康に良いとされる納豆事業を買収するなどで、生活者に「ミツカンは体に良い食を提案してくれる会社」と感じてもらえるようになってきました。

その延長上で、当社は「食を通して、どのように人が健康・快適に暮らせるか」を中心に企業戦略を作るようになり、今期からスタートした中期5カ年計画にも「肉体的にも精神的にも人間が健康で快適に生活を送るために」という“ウェルビーイング”という概念が組み込まれています。

これまでは調味料ベースやメニューベースで取り組んできました。「調味料を使って、料理を作って、それを食べる」という方々はいなくはなりませんが、「直接食べる物を購入する」という方々が増えてきている状況がある中で、当社は「食を通して、健康やウェルビーイングに貢献する」と言いつつも、調味料だけでは、ほんの一部にしか関与できません。今日的な食生活・食スタイルに合った中で、「人の健康に貢献できる食をどのように作るか?」というテーマが出てきました。そして、調味料ではできないことを「Fibee」という新たなブランドをローンチし、取り組んでいくことになりました。


ミツカン 代表取締役専務 兼 日本+アジア事業COOの石垣浩司さん


——「Fibee」の市場性はいかに捉えていますか?


石垣さん 市場性は高いと認識しています。「Fibee」は、「常日頃、健康に対する意識がそれほど高くない生活者にも医食同源を届けよう」というミツカンのチャレンジでもあるのです。

一般的に体に良い食品といえば、いかにも健康的なイメージが訴求されていて、それは健康意識の高い人にとってみれば「自分たちの商品」という感覚になります。しかし一方で、そこまで健康意識が高くない方々も非常に多くおります。そうした人たちも身近に感じてもらえるようなブランド設計をしたのが「Fibee」です。

最初に「かわいい」と感じてもらえるパッケージやイメージ。2番目に「美味しそう」、そして最後に「体に良さそう」がくるようなブランド設計を取っています。今まで、こうしたアプローチの健康的な食品はあまり存在していないと思いますが、この点が「Fibee」のチャレンジなのです。

本当に健康意識が高い方々は、ご自身で商品を見つけようとしますし、そこに商品を新たに投入したとしても、そういった方々に新たな選択肢を与えることにはなりますが、新たな市場・ユーザーを掘り起こしてはいません。

むしろ、あまり健康に対するアクションをしてない方々が無意識に「かわいい」「おいしそう」と手に取って食べていくと「結果的に健康になった」という商品を開発・展開していくことが、新規顧客や潜在需要の掘り起こしにもなりますし、医療費抑制や健康寿命延伸など、今後の日本の課題を解決することにつながっていくと思います。


——「Fibee」は発酵性食物繊維を取り入れた商品です。発酵性食物繊維に注目した理由は?


石垣さん 「何を食べたら長生きできるのか?」を調べていく上で、地中海沿岸の地中海食や、日本では現代のマクロビオティックにつながっている江戸時代の食養生、長寿地域のブルーゾーンに入っているサルディーニャ地方や昔の沖縄の健康的な食事に注目しました。

その調査でたどり着いた考えが「発酵性食物繊維は重要」ということでした。発酵性食物繊維は腸内細菌の餌になり、腸内環境を整える働きを持ちますが、発酵性食物繊維を多く含む食品は、全粒穀物や海藻類など摂取が難しく不足しがちになってしまいます。

「Fibee」は、発酵性食物繊維を手軽に摂取でき、現在はカレーやワッフル、飲料など8種類をラインナップし、生活者が続けやすいようにしました。そして、先述の通り「かわいい」「おいしい」というブランド設計によって、健康意識がそこまで高くない方々からも手に取りやすいようにしたのです。


——ドラッグストアも食品の展開を強化し、食と健康を結びつけることで新たな市場を創出しようと取り組んでいます。この意味では「Fibee」とドラッグストアの親和性は高いと感じます。


石垣さん 「食で健康に大きく影響できる」というエビデンスが、この近年で急速に理解されてきました。食で可能な限り病気にならない体を作り、重篤になったら医薬に頼る、そして、それはなるべく遅らせるという、医薬分野が対応しなければいけない部分と、食分野が対応しなければいけない部分が明確になってきているように感じます。

私はドラッグストアで「Fibee」のような商品を売ることは一貫性があると思います。ドラッグストアを活用し、病気になる前から自分の体調を食品でケア、そして病気になったら医薬品に頼っていく——。現在「Fibee」は、ECサイトと一部の小売店での販売となっていますが、「Fibee」を通じて本当に意味がある仕事をしていると実感しています。


——「Fibee」のローンチから4〜5カ月が経過しますが、販売動向についてお聞かせください。


石垣さん アイテムにもよりますが、今のところ比較的好調に推移しています。先述の通り、一部の小売店では、テスト販売という意味合いでスタートしているのですが、できる限り早期に生産拡充をし、もう少し多くの店舗に供給させていただけるような体制作りをしていきたいと思います。


——昨今ドラッグストアの発展が目覚ましいですが、石垣さんはどのように位置づけていますか?


石垣さん 健康に対する意識が上がっている事実だと思います。「自分の体をケアする」ということの意識は若い人ほど高いですし、その方々に影響されて40〜50代の方々も意識が上がっていることがありますので、必ずしも医薬品だけではなく、アンチエイジングとかメンタル改善なども含めて、ヘルスケアニーズが高まっていくと思うので、ドラッグストア業態は今後さらに増え、市場に関してもまだまだ成長すると考えています。


——インタビューに応じていただき、ありがとうございました。