ヘルスケア・インタビュー
人々が喜びを感じ満足してもらえるため苦難を乗り越え20年目
ドクターセラム代表の吉川育矢さんに聞く
「〝年中夢求〟でモノ創りに挑戦してきた軌跡と今、そしてこれから」
人々が喜びを感じて満足してもらえる商材創りをモットーに、2005年2月に創業し“年中夢求”で様々な“健康と美”関連商品の開発に取り組み市場にデビューさせた企業が、ヘルスケア業界から注目を集めている。ひたすら世の中の悩む多くの方たちが健康を取り戻すという“使命観”を持ち続け、“健康と美”ニーズに応える商品開発への夢を追い求め続けてきたドクターセラム株式会社代表取締役の吉川育矢さんだ。幾多の苦難を乗り越え出会ったのが、シルク由来の食品素材のシルクフィブロイン。この素材を主成分に起用したゼリータイプ食品を開発し様々な販売ルートで普及活動を展開し創業20年目の今も、新しい商品創造への道を歩んでいる。同社の吉川育矢代表に、現況や今後に向けた抱負を語っていただいた。
(取材と文:流通ジャーナリスト・山本武道/カメラ:流通記者ヘルスケアワークスデザイン記者・中西陽治)
―― 2005年2月に創業して20年目となり走り出したドクターセラムは、各地で開催される展示会に出展されています。つい最近は国際化粧品展(1月17日〜19日)、健康博覧会(2月20日〜22日)等々、シルク由来のシルクフィブロインを配合した食品を中心に来場者にアピールされましたが、そもそもシルクフィブロインに取り組んだきっかけは?
吉川代表(※「吉」の字は土) 私自身、小学4年の時に交通事故に遭遇し足を悪くし、29歳になってから、その傷が元で慢性骨髄炎を発症し大量の薬を服用するようになったことが原因で、家族に迷惑をかけた経験があります。そのことがあって、いつしか「なんとかして飲むと血液がきれいになる医薬品が開発されれば理想的と思うようになりましたが、しかし現実にはそんな薬ができるはずもない」とも思っていました。
自身の体験から人一倍、健康には気をつけてきましたが、元々は多くのアトピー性皮膚炎に悩む人たちのために活動してきた経緯があり、なんとかして人々の健康づくりに貢献したいと思っていたある日、当時東京農業大学農学部教授だった長島孝行先生(農学博士)と出会いました。
シルクフィブロインは、シルクの持つ機能について研究されていた長島先生が初めて発見されたものです。シルク由来の食品素材のシルクフィブロインを使用した食品を、ラットとマウスで食べさせる実験をされたところ、血液が正常な状態になり、しかも高い数値は低くなり低い数値は高くなることも突き止められたことを知りました。
つまり医薬品の場合は、高い数値を下げるだけ、低い数値を上げるだけの一方通行ですが、しかしシルク由来の食品素材のシルクフィブロインはそうではなかったのです。ただ実証試験の対象はラットとネズミでしたので、私はその良さをヒトに試したいと思い、そこで長島先生にお願いをして原料のシルクフィブロインをいただき、三人の方に1か月間、食べていただきました。
検査センターで、シルクフィブロインを食べる前と食べた後の血液の状態を比べていただいたところ、「えっ、うそっ!」と思えるほどの数値がでてきました。中性脂肪が下がり、低かった善玉コレストロールの数値が上がったという結果でした。三人とも同様な数値が出てきたのです。今でも、そのデータは保存しておりますが、何はさておいても、シルク由来の食品素材のシルクフィブロインを製品化して、日本国内の糖尿に悩む人たちにために世に出したい、あわよくば、日本国内だけでなく世界中の人に向けて普及したいと心の底から思いました。
―― シルクといえば、アジアとヨーロッパを結ぶ全長6400Kmに及ぶ東西の経済・文化・政治などの交流に中心的な役割を果たしたシルクロードが知られ、日本では気品高い繊維として絹製品は日本中で利用されてきましたが…。
吉川代表 東京農業大学では30年以上前からシルクについての研究が進められ、繊維としての利用だけではなく、シルクが蛋白質であることを原点に、21世紀の医療技術としても注目されているナノ技術による構造や機能性研究、そして加工技術などの多方面にわたる、まったく新しい研究が進められた概要は学会に発表されました。
長島先生によれば、シルクはフィブロインという蛋白質が約75%、数種類のセリシンという蛋白質が約25%含まれていますが、ここから純粋なフィブロインタンパクのみを取り出したものがシルクフィブロインというわけです(製法特許)。
このフィブロインタンパクは、レジスタントプロテインであると同時にナノレベルの基本構造を持ち、非常に複雑な形状をしており、原子間力顕微鏡レベルでは多孔質のようにも、らせん状のようにも見えます。この複雑な隙間に吸脂性という機能が生まれ、消化し難いという性質から脂肪を吸着し97%を体外へ排泄するということです。
私は、長島先生の素晴らしい研究に出会い、このことに着目し、食事をする前に消化管にシルク由来の食品素材のシルクフィブロインを入れておくと、食べた脂肪分を吸着してくれて便と共に排出される商品づくりを進め、長島先生との共同研究の末、食品としての開発に成功しました。あくまでも食品ですから、絶対条件としては美味しくなければなりません。
そこで当社では、さらに商品化への研究を進めて10年以上の治療歴があるものの、いっこうに症状が改善しない方たちを探し出して、服用中の医薬品一時やめていただき6か月間、シルクフィブロインを食べてもらい、毎月、血液検査を受けてもらいました。
薬を飲んでいた最後の検査データとの比較でしたが、インシュリンを打たねばならない状態が下がり、尿酸値が平均値よりも下がり、善玉コレストロールが増える等々、ご本人だけでなく、驚かれたのは主治医だったそうです。
―― 美味しい食品としてデビューさせました。開発には、相当ご苦労なさったとお聞きしていますが…。
吉川代表 創業から今年で20年目に入りましたが、現在の当社のメイン商材であるシルク食品の商品化に至るまでには険しい道程でしたが、でも世の中の悩む多くの方たちが健康を取り戻すという“使命観”を持ち続けてきました。自分自身が”本物”と信じたからこそ、試行錯誤を何度も繰り返した末、当社を代表する製品にまで創り上げることができたと思っています。
高い吸脂性を持つ食品素材のシルクフィブロインは、中性脂肪値や血糖値、ヘモグロビンA1c値、コレステロールなどの正常化作用が報告されていますが、期待通りではなかったという方もおられます。ところがよくよくお聞きしたところ、1日3度食べていただきたいのですが、何らかの理由で食べたり食べなかったり…。長島先生によって始められたシルクの研究は、こうした過程を経て、多くの人たちが愛用していただいています。
その秘訣は、自身でいうのもおかしいかもしれませんが、とにかく美味しいことです。そして「食べてよかった」という実感だと思います。“良薬口に苦し”と言う言葉がありますが、相手は食品ですから、まずは美味しいことが必須条件になります。美味しいからこそ継続して愛用できる。まさに“継続は力なり”でしょう。
吉川代表 もちろん愛用していただき良い結果になったとはいえ医薬品ではありませんので、食生活指導に利用していただいていますが、普及先では女性に人気のエステサロンが一番よく売れています。美しさと健康に痩せられるという点では白いパッケージも好評で、中でも食べた食事の脂質が体外に排泄されずに蓄積され肥満となるケースが少なくない女性にとって手軽に愛用できる点でも人気があります。
人間の脂肪細胞は、オギャーと生まれてから数は一定だということでしたが、実はそうではなく無限大であることがわかってきました。だから太ってしまう。そこでダイエットを指導する場合、食前にシルクフィブロインを食べていただくことを薦めていただいています。
どうしてエステで売れているのか?とよく聞かれますが、女性は太ることを気にされていますし、食生活の指導は欠かせません。油断をすれば体内に中性脂肪が蓄積されてしまうことが多いですから…。そこらへんをしっかりとアドバイスするようにしていただいてきました。
近年、大手エステサロンの各社では、当社のシルク食品のPB(プライベート・ブランド)を採用していただき自社ブランドとして人気があります。それはシルクから抽出したシルクフィブロインの性状として、長島先生の研究報告からは、高い吸脂性多孔質を持ち、体内の余分なコレステロール、脂肪を吸着し乳化した状態で体外に排出されるからです。
30人の男女にシルクフィブロインを食べさせたところ、1か月間で体重が平均1.9Kg、体脂肪率も0.7%減ったデータは美容学会で公表され、2015年には健康博覧会の会場でNHKの取材を受け『ニュースウオッチ9』を通じ全国一斉に生放送され、2019年にはNHK『ニュースシブ5時』でも放送されました。
―― ダイエット商材では、ヘルスケア関連商品の取り扱いが急増しているドラッグストアルートでの販売が多いのですが…。
吉川代表 もちろんドラッグストアの販売力は知っておりますが、シルク由来の食品成分のシルクフィブロイン製品の取り扱いはありません。ですがカウンセリング力があり、漢方相談に力を入れている薬局を中心に普及していただきました。なぜ太るのか、どうしたら体内に蓄積された脂肪分を体外に排泄することができるのか説明して販売していただくルートとして、限定した薬局で取り扱っていただきました。
今でも取り扱っていただく薬局は多くはありませんし、数多くでているわけではありませんが、対面販売を主体とした漢方薬局では漢方薬とともに、食生活指導の武器の一つとして紹介していただいています。
かつて女性薬剤師の方々が集まったセミナーで試食していただいたところ、食べやすいゼリータイプであることに加えて「美味しい」といっていただきました。そして薬局では、血糖値や中性脂肪に悩む人たちの相談が多いと聞いていますから、これからも対面販売を重視したカウンセリング力のある薬局・薬剤師の方々から推奨していただければと思っています。
―― 共同研究で開発されたシルク由来の食品素材のシルクフィブロインの研究ですが、これから、どのような事業に取り組みたいと考えていますか?
吉川代表 これまでも今も、そしてこれからもですが、病にかからないようにする予防、そして未病状態にある人たちのために新しい商品開発に取り組みたいと考えています。まだ研究段階でありますが、ある機能に関わるヒト臨床試験によるデータを取りたいと思っています。試験していただくところは決めましたが、ただし試験は膨大な資金が必要になります。どうするか検討しています。
この試験は、国の定めるルールに基づき事業者が安全性と機能性に関する科学的根拠など必要な事項を、販売前に消費者庁長官に届ければ機能性を表示できる機能性表示食品の開発のためです。機能性表示食品制度は2015年4月からスタートして現在の届出件数は5000を超していますが、私が考案中のものは一つもありません。
1300万人に及ぶ患者さん、そのまま放置しておけば、やがて長時間をかけて治療に通わなければならない患者さんは23万人という現実を踏まえれば、そのようにならない前に何とかしたいという思いで取り組みたいと考えています。
非常に抽象的な話しではありますが、まだ途についたばかりですので詳しくは申し上げられませんが、対象とする方たちにシルク由来の食品素材のシルクフィブロインを食べていただく試験は、早く始めたいとも思っています。
―― 毎年、高騰する国民総医療費は2022年度には45兆円に達し、現行の医療制度を保持しつつ、国民の間にはセルフケア(自己予防)意識が高まり、健康寿命延伸産業の振興にヘルスケアビジネス市場が拡大しています。
吉川代表 私自身はヘルスケア関連の仕事に従事しておりますから、これからの時代、国民は病気にならないようにしなければならないし、そのためにも日頃からセルフケア意識を持たなければなりません。生活習慣病は、罹ってからではなく日頃の日常生活の中で予防することですが、気づいたら血糖値が高かったりコレステロール値が高かったり、腸内の善玉菌が少なく悪玉菌が増えていたりして、いつの間にか不健康状態となるケースは少なくありません。
中には血液検査をした際に、医療機関で「血糖値が高い」といわれていたにもかかわらず、何もせずに放っていて3〜4年が経過していたり…。ですから病気にかからないように、あるいは未病期に対応することが重要です。増え続く生活習慣病を防ぐことは、医療費の高騰にブレーキをかけることになりますので、できるだけ多くの関係者とコラボして未病・予防への切り札となる商品を創造していきたいと考えています。
その点、ヘルスケア最前線に携わる中でも、“未病・予防”の相談の多い漢方相談薬局の方々に、なぜ私自身がシルク由来の食品素材を活用したシルクフィブロインの普及に力を注いでいるのか。ぜひ賛同していただき、お力添えをお願いしたいですね。
<取材を終えて>
人が起業するには、それなりの思い入れがある。だから、そのビジネスが例え難産であっても前に進めていく、とてつもないエネルギーと、何のために起業するのかという目的が不可欠になる。時には「これで良いのか」と考えてしまうこともあるし、挫折することもあり得るだろう。
“経営の神さま”といわれた松下電器産業(現パナソニック)創業者の松下幸之助さんの語録をまとめた書『松下幸之助一日一語〜仕事の知恵・人生の知恵』(PHP研究所発行)がある。その一節に、『使命観を持つこと』がある。「指導者は常に事にあたって、何のためにこれをするのかという使命観を持たねばならない」と記されている。
吉川さんは、「幼い頃から健康や美しさへの意識が人一倍敏感で、いつの間にか本物といえる素材と商材を探求し続け、創り続けることに苦労を惜しまないようになった」というから、とても素晴らしい動機だ。
吉川さんにお会いすることは至難の業だった。日々のFACE BOOKでは講演、海外出張、そして各地で行われる展示会には必ず出掛けられる。多くの人たちと出会い、そしてひたすら開発した商品の普及のためだ。食品の持つ機能と、その傍ら“美味しさ”は不可欠であり、だからこそ多くの人たちがシルクフィブロインに魅せられるのだと思う。
都内渋谷の道玄坂にある本社の社長室で1時間あまりのインタビュー。シルクフィブロインの愛用者たちの喜びの成果をお伝えいただいた。とてつもない苦難の道を辿りながら辿り着いた今、これからも吉川さんの“未病と予防”を中心とした国民のための健康&美創造商品の誕生に期待したい。