ヘルスケア情報サイト「Hoitto! ヘルスケアビジネス」(ヘルスケアワークスデザイン株式会社)

「フレイル予防セミナー」レポート 中野区民とフレイルを考える/JAHI生き活きライフ部会

フレイル予防の〝一歩〟は足の健康にあり

 公益財団法人日本ヘルスケア協会(JAHI)の 生き活きライフ部会は12月1日(金)に、東京都中野区で「第5回フレイル予防セミナー」を開催した。セミナーは中野区宮桃(みやもも)町会との共催、東京都中野区の後援を受け、中野区桃園(ももぞの)区民活動センターで一般の生活者を対象にした市民講座として実施された。「元気な毎日を支える〝一歩〟 日常から出来るフレイル予防のヒケツ」をテーマに、岡部大地医師(ジャパンヘルスケア代表)による「100歳まで歩ける足の鍛え方」の講演が行われ、市民にフレイル対策のためのフットケアの大切さが伝えられた。会場は80人を超える参加者で埋まり、2時間半の市民講座は大盛況で幕を閉じた。(取材=中西陽治)

 生き活きライフ部会は約4年前に日本ヘルスケア協会内に設立。約17の企業が参画しフレイル予防および改善の社会実装を目指している。

 「フレイル」は、もともとフレイルティという「虚弱」を指す。どうしても加齢にともない心身の機能が低下してくる。それに伴って生活に影響が起こり、人によっては要支援・要介護に陥ってしまう。その手前の状態をフレイルと呼び、このフレイル状態にできるだけ陥らないようにする・予防を務めていく、あるいはフレイル状態から通常の形に戻していこう、あるいは進行を緩やかにしていこう。ひいては健康寿命を延ばしていこう、というテーマを柱に生き活きライフ部会では活動を行っている。

 この度中野区・桃園区民センターで実施された「第5回フレイル予防セミナー」では、講師に足病医(そくびょうい)の医学博士であり、ジャパンヘルスケア社の代表でもある岡部大地医師が「100歳まで歩ける足の鍛え方」をテーマに講演。部会の参画企業から「日常のフレイル予防プラスになる話」が披露され、最後に参加者からの質問を交えたパネルディスカッションが行われた。

 会場には部会が用意した、足の骨密度を計測する機器が用意され、予想を超える約80人の来場者で市民講座は大盛況となった。

「生活者とともに『フレイル』を考える場」に意義がある

 セミナー開催に際し挨拶に立った部会長の又平芳春氏(三生医薬)は、生き活きライフ部会の趣旨を説明。

又平部会長

 「我々は部会を通じ『フレイル』対策を業界の中で活動してきました。業界内でセミナーや展示会は業界内で行っていましたが、やはり市民の皆様と一緒に『フレイルとは』を考えていこう、ということで今回の市民講座の開催となりました。今回、中野区桃園区民活動センターをお借りすることとなり、中野区宮桃町会の中山会長のお力添えをいただきました。今日は岡部先生からフレイルに関わる『フットケア』という大変興味深いお話をいただけるとのことで、単なる講演ではない、実演を織り交ぜたイベントとなりますので、皆さん楽しんでフレイル対策に触れていただければ、この市民講座の意味があると思います」と話した。

 続いて中野区宮桃町会の中山会長があいさつに立ち「我々宮桃町会は、生き活きライフ部会の副部会長である小原道子さん(帝京平成大学教授)と福田英二さん(暮らしの保健室かなで理事長)に大変お世話になっており、そのご縁で『フットケアセミナーを宮桃町会と共催でやりませんか』という話を小原先生からいただきました」と開催の経緯を説明。

 そして「私も4~5年前までは3時間歩いても疲れを感じず平気でした。ところがちょっとしたことで右膝を痛め、右側を庇って歩いていたら左膝にも違和感を覚えるようになりました。おそらく私と同じような悩みを抱えている人が会場にいらっしゃると思います。ぜひ一緒にフットケアのお話を通して、いつまでも歩き続けられる生活を送ってほしいと思います」と参加者に語り掛けた。

福田氏

  福田英二氏は「〝転倒〟は階段のような大きな段差でなく、平地とほとんど差がない段差で躓いて起こることが多いのです。特に年を取ると、注意しているつもりでも少しの段差で躓いてしまいます。転倒して歩けないことは、生活のあらゆる面で不便を強いられます。しかしもっと危ういフレイルのリスクは『お友達と会えない』ことです。コミュニケーションができなくなると、孤独になって、心身の衰えが加速します」と社会的フレイルのリスクを説明。

 11月より「お友達と会える場所」を作ろう、と考え中野区桃園区民センターに「宮桃カフェ分室」を立ち上げた。「桃園カフェ」は福田氏が開催するコーヒーサロンで、地域の生活者のコミュニティサークルの役割を果たしている。

 「お喋りをしているといろんなことがお話の中に出てきます。『昔の中野区はどういう町だったのか」「どういうお仕事をされてきたのか」という話題が特に盛り上がります。この話を若い世代に伝えたいと思っています。『あの時代があって今がある』ということを継承していかなければ、知らないうちに便利になって、ただ享受していく世代が生まれてしまいます。皆さんの色んな暮らしぶりがあって、その積み重ねで今の豊かさがある。これを今の子供たちに知ってほしいのです』と中野区開催の意義を唱えた。

「100歳まで歩ける足の鍛え方」に参加者の注目集まる

参加者で満員となった市民講座

 続いて岡部氏による「100歳まで歩ける足の鍛え方」が講演された。

 岡部氏は「なるべく自分らしく歩いて長生きできる足の鍛え方を伝えたいと思います。本日参加された方、ひとりひとりが今日の会を通じて、少しでも早く・永く歩けるようになればいいなと願っています」と講演の目的を説明。

 岡部氏は千葉大学の予防医学センターに所属し、下北沢病院という日本唯一の足専門の病院で週2日ほど診療を行っている。また代表取締役を務めるジャパンヘルスケア社では足の形になじむオーダーメードのインソールの開発や、足の健康診断を広めている。

 講演は

①100歳まで歩くために大事なこと②自分の足タイプを知ろう③100歳まで歩ける足の鍛え方④靴とインソールの選び方

 の流れで進み、自分の足のタイプを把握したうえで、トレーニング方法、正しいストレッチや姿勢、歩き方を実演を交えて説明した。

 

 「100歳まで歩く足のためには、なるべく歩いて筋肉をつけることも大切です。しかし実は、歩けなくなる根本原因は『体の歪み』なのです。すなわち姿勢です。姿勢というと猫背などを思い浮かべるかもしれませんが、猫背に限らず、全身に歪みが生じることでだんだん痛みが起こります。歪んでくると一か所に負担がかかるようになり、痛みが発生します。歪みからくる痛みを繰り返していくうちに足腰が弱くなり、変形が進みます。そして歩けなくなってしまうのです」と岡部氏が説明すると会場から納得の声が上がった。

 「足腰の痛みのことを医学用語で『筋骨格系疾患』と呼びます。筋肉や骨格で起こる疾患は、要介護の原因の3分の1を占めるのです。寿命に関わる予防といえば生活習慣病や糖尿病、高血圧だと思われていますが、実は健康寿命に関わる予防においては筋骨格系疾患にならないことが大切なのです」と話した。

 では全身の筋骨格を歪まないようにするにはどうすればいいか。歩くことは重要だが、その中でも筋骨格における『足』が大事である、とした。

岡部氏

 その理由に「足は体の土台である」ことと「足は地面に唯一触れている接点」であることを説明。

 「足は体の土台である」ことは、たとえるならば建物と同じ。人の体、特に筋骨格は極めて物理的な構造なため、土台が崩れるとすべてが崩壊してしまうという。

「足は地面に唯一触れている接点」ということは、足が地面と体をうまく衝撃緩衝して、接触する最初の起点となっているということ。最初の起点がずれると歪みが生じてしまうためだと話した。

「毎日6000歩歩いたとして、一年で300万歩ほど歩行していることになります。つまり、足を地面に300万回叩きつけていることになります。これまでは足の寿命より、命の寿命の方が短かったので表面化してきませんでしたが、100年生きられる時代になって、足の寿命が先に来るようになりました。 100歳まで元気に生きるためには足の健康が欠かせないのです。そのためにできるだけ足の骨に歪みを作らないことが大切です」と話した。

(後編につづく)