キリン調剤薬局向け置き薬サービス「premedi」に高田製薬が参加

中小調剤薬局の在庫管理業務をAIで支援。24年末の展開店舗数300店舗を目指す

　キリンホールディングスは、2023年11月より、調剤薬局向け置き薬サービス「premedi（プリメディ）」に、高田製薬を協業パートナーとして迎え、高田製薬による「premedi」販売支援のトライアルを開始する。同社は、調剤薬局や患者が抱える社会課題を解決すべく、「premedi」の展開店舗数を2024年末時点で現在の6倍となる300店舗（※）に、2027年には2,000店舗までの拡大を目指すとした。（※：2023年10月末時点での展開店舗数は50店舗）

　「premedi」は、キリンの社内事業公募制度「キリンビジネスチャレンジ」から誕生した新規事業。2022年4月より首都圏エリア中心にテスト展開を開始し、導入した調剤薬局からは、「欠品が防げた」「患者さんを待たせずに済んだ」「従業員（薬剤師）が本来の業務に時間を使えている」といった声が複数届き、「premedi」へのニーズを確認できたため、2022年末に全国展開を開始した。

　キリンでは本サービスのさらなる拡大に向けて、2023年11月より、飲みやすさ、使いやすさといった付加価値を有したジェネリック医薬品開発メーカーである高田製薬を協業パートナーとして迎え、高田製薬による「premedi」販売支援のトライアルを開始する。

 同社は「premedi」の展開拡大を通じ、中小規模の調剤薬局でもさまざまな薬がすぐに受け取れる状態を作ることで、調剤薬局や患者の課題解決、厚生労働省の「患者のための薬局ビジョン」が掲げる、かかりつけ薬剤師・薬局の推進を図る。

■「premedi」事業概要

サービス名：「premedi（プリメディ）」   https://premedi.kirin.co.jp/

サービス内容：急に処方が出る医薬品にAIを使って対応する置き薬サービス

・調剤薬局ごとに、在庫を持っていない医薬品の中で、患者に必要とされる可能性が高い医薬品リストをAIが選定。そのリストを活用し、調剤薬局で購入する医薬品を最終決定する。なお、最終決定する医薬品は、医療用医薬品のうち、都度定めるリストに含まれる医薬品から選定。

・選定した医薬品の保管棚を貸出。医薬品は医薬品販売パートナーから小ロットで購入が可能。

・使用した分はオンラインで簡単に発注し、補充することができる。

・使用期限が近付いた医薬品は販売パートナーによる買い取りが可能（※別途定める条件を満たす医薬品に限る）なため、常に十分な期限のある医薬品を取り揃えることができる。調剤薬局は取り扱い頻度の低い医薬品の在庫リスクと欠品リスクを同時に減らすことができる。

サービス特長：小ロット約100種の医薬品が発注可能な置き薬サービス

　AIで薬局ごとの医薬品の利用確率を予測し、10～30錠の小ロット単位で約100種類の医薬品を発注できる調剤薬局向け置き薬サービス。各調剤薬局の中で特に取り扱い頻度の低い医薬品を適切に在庫管理できることが特長で、使用期限が近付いた医薬品は「premedi」が買い取り、新たな医薬品に入れ替えられる。

　同サービスの導入によって、調剤薬局は取り扱い頻度の低い医薬品でも、患者へ処方せん通りに提供でき、余剰在庫の削減が期待できる。また、調剤薬局における医薬品確保の手間を削減することで、薬剤師本来の業務である服薬指導などへの時間確保につながる。

開発の背景は薬手配の迅速化と余剰在庫の課題

　調剤薬局において、取り扱い頻度が低い医薬品は在庫がなく、処方せん通りの医薬品が提供できないことや、手配に時間がかかり、患者への提供が翌日以降となることがある。キリンの調査では、処方せん通りの医薬品がもらえない経験をした患者は日本全国で44%にのぼり、そのうち35％は当該調剤薬局への印象が悪化し、調剤薬局を変えるケースがあることが判明している。（キリン調べ 2022年10月webアンケート 対象：30-70代男女（N=10000））

　一方で、厚生労働省の調査では調剤薬局で処方されずに余剰在庫となる医薬品は、1店舗あたり年間20万円以上ある（厚生労働省が保険薬局に対して行った廃棄医薬品額のひと月の平均 2017年19,230円、2018年21,808円）。

　また廃棄の理由には使用期限切れなどが挙がっている（参考：保険薬局における不動在庫医薬品の現状把握と削減のためのアンケート調査（2019年 J-STAGEより引用））。

　特に中小規模の調剤薬局にとって、取り扱い頻度の低い医薬品を過不足なく在庫し、廃棄を最小限にすることは両立が難しい経営課題となっている。