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地球沸騰化時代にプラネタリーヘルスを考える
地域創生医 桐村里紗の プラネタリーヘルス 第10回

皆さん、こんにちは。
今年も、とんでもなく暑い日が続いていますね。
この夏の世界の平均気温が、観測史上最高になることが明らかになり、国連のグテーレス事務総長が「温暖化は終わった。地球沸騰化の時代が到来した」と警告を鳴らしました。

日本でもすでに豪雨と土砂崩れのニュースが各地で聞こえています。

プラネタリーヘルスとは、人と地球は一体のシステムであり、地球環境の病理が人の病理に影響するという考え方。地球環境の病理として、毎年夏になると猛暑・酷暑が現れますが、それが人の健康にも直接的に影響を与えています。

他の季節にはなかなか感じられないかも知れませんが、夏の環境では、その影響を肌で感じやすいのでは無いでしょうか。


地球沸騰化と私たちの健康への影響

東京都管区気象台HPより

東京の気温は年々右肩上がりに上がっていることがわかっています。

確かに2000年より前を思い出すと、暑いと言っても30度前半止まりだったように思います。それが、今では北海道でも40度を超えるのが当たり前になってきました。

アフリカからの観光客も、温度も湿度も高い日本の夏に「アフリカより暑い」と呟いているほどです。

既にこの夏も熱中症で亡くなった方のニュースが聴こえてきましたが、「地球の沸騰」とも言える暑さの中、私たちは熱中症や熱ストレス、脱水症状などの健康リスクに直面しています。

高温と湿度が組み合わさることで、特に発汗しづらく、体温調節が苦手な高齢者や小さな子ども、体力の弱い方々は暑さによる影響を受けやすくなります。


アマゾンの熱帯雨林は二酸化炭素発生源に

気候変動の対策として、最もフォーカスされているのは、温室効果ガスの二酸化炭素を削減しよう!というカーボンの影響についてです。

確かに、アマゾンの森林破壊で、かつては二酸化炭素を吸って、酸素を吐き出していた「地球の肺」と言われていた熱帯雨林は、もはや二酸化炭素の排出量の方が多くなったと報告されています(※Nature volume 595, pages 388–393 (2021))。

それは主に火災によるもので、人のための食料、また人が食べる牛を生産するための飼料にするための穀物や大豆の生産のための開墾のために行われている人為的なものだということがわかっています。

そのため、私たちが日々の暮らしの食品の選択や食品原料の選択においても、環境や生態系への配慮がリテラシーとして求められる時代になりました。

二酸化炭素だけにフォーカスされがちですが、二酸化炭素さえなんとかすればどうにかなる問題ではなく、地球に現れた課題、つまり地球の病理的な状態は複合的に原因が絡み合うことで起きているため、1つのことを解決するだけでは何ともなりません。


都市化とヒートアイランド

昔と変化したことは、あらゆる部分が舗装されていることです。都市部だけでなく、私が暮らしている人口最少の鳥取県の人口最小の町江府町は標高がやや高い山間部ですが、人が暮らし、移動する場所は全てコンクリートで舗装されているため、灼熱の太陽に焼けたコンクリートのために日が暮れても下からのグリルされているように感じられます。

1)地表を覆うコンクリート 
2)都市の密度 
3)人工排熱(エアコンの排気など)

–これらが複合的な原因となり、ヒートアイランド現象を引き起こしているので、やはり都市部の方が暑さは深刻。
人口密度が少なく、エアコンの排気が少ない分だけ、私が暮らしている江府町は都市部より涼しく感じられます。


プラネタリーヘルスのアプローチ

人が日々の暮らしを営むことには、あらゆる経済活動が紐づいていて、その全ての経済活動が環境への負荷になっている現状が、地球の病理をもたらしています。

プラネタリーヘルスを考え、実践する姿勢態度の基本姿勢は、まず、そのことを認識した上で、あらゆる経済活動を人の健康と同時に地球の健康を実現する方向へとシフトすることを掲げ、そこに向かっていくことです。

現状の社会システムとはかけ離れた目標ですが、あらゆるステークホルダーの協力、共創が不可欠です。企業努力や業界努力はもちろんですが、マーケットのシフトとして、生活者のリテラシー向上のためのメディアや教育、プロモーションも非常に重要です。

私たちが地球を大切にし、健康な未来を築くための一歩を踏み出すことで、未来への希望を抱くことができます。プラネタリーヘルスの視点を持ちながら、共に行動し、地球を愛し、健康を守っていきましょう。