2009年の改正薬事法(現在の医薬品医療機器等法=薬機法)で整備された登録販売者制度(現在の資格者名称=「医薬品登録販売者」)。薬剤師でなくとも店頭で2類、3類の医薬品を販売できるようにしたこの制度が、セルフメディケーションの概念を浸透させる一助となり、ドラッグストアの成長に大きく寄与したことは疑いの余地がない。そうした中でコンビニ業界は、医薬品の無許可・無資格販売を可能とする制度の見直しを訴えている。一般社団法人日本チェーンドラッグストア協会(JACDS)は、この議論に根拠を持って反論するとともに、資格者の認知度向上と資質向上に取り組む姿勢を改めて打ち出している。将来的に「販売者」から「販売士」への名称変更もおこないたい考えである。
厚労省の検討会は2024年春の薬機法改正を念頭に、「零売の規制強化」「濫用薬の規制強化」「要指導医薬品制度の見直し」そして、「デジタルを活用したリモート販売の是非」などを議論している。
「デジタルを活用したリモート販売の是非」は、コンビニ業界が訴える(医薬品の)無許可店舗・無資格販売をベースに、内閣府規制改革推進会議とデジタル庁から要請を受ける案件である。
資格者要件にかかる販売制度の見直しは、ドラッグストア業界にとって死活問題である。10月頃にWGで報告書をまとめ、これを踏まえ年明けにも法案の骨格が作成されるとあり、JACDSも検討会で積極的な発言を繰り返している。
これまでもJACDSは、医薬品登録販売者による店舗での対面販売が、薬物乱用の抑制を含めた医薬品提供の安全性を担保しているという考え方を示してきた。また、フランチャイジーである個人事業主に対し、フランチャイザーであるコンビニ本部が医薬品とそれに付随する情報を正しく管理し、販売責任を負えるのかという点も、緩和を認められない根拠となる。
そもそも同資格の合格者は累計30万人に上り、医薬品の販売網は満たされているという識者もいる。「検討会の中でも、採用の努力をおこなう前に(コンビニ業界が)無許可店舗・無資格販売を求めるのはお門違いという空気が流れている」(JACDS中澤一隆専務理事)という。
とは言え、制度開始から14年を経てなお「医薬品登録販売者」の認知度は低く、これが昨今のDX化の議論と重なり見直しの声が大きくなっているのも事実だ。職能の差別性を際立たせながら、資格者が生活者からの信頼を勝ち取る作業が急務の課題となっている。
JACDSは2013年より、医薬品登録販売者の認知度向上を図る委員会活動をすすめている。当初の名称は「登録販売者制度向上委員会」で、その後2018年に「登録販売者委員会」、2022年に「医薬品登録販売者委員会」と改めて現在に至る。
医薬品登録販売者委員会の委員長は、セキ薬品会長の関伸治氏。ゴダイ会長の浦上晃之氏の後を受け継ぐ二代目委員長である。副委員長はくすりのコーエイ社長の田中元伸氏で、委員にはウエルシアHD、MMCマネジメント(マツキヨココカラ&カンパニー子会社)、コスモス薬品、スギ薬局などの幹部が名を連ねる。
今後の認知度向上活動としては、2018年に登録した「10月6日=登録販売者の日」を用いた告知活動のほか、「声掛け強化キャンペーン」や「薬物乱用防止教室」の実施、さらに「OTC医薬品普及啓発イベントへの出展などを、それぞれ昨年度に引き続き実施する。
地位向上活動としては、厚労省との意見交換、行政への要望書の提出、および会員企業への周知活動を展開する。また直近では、2020年以降にコロナの影響で延期・未定となっていた登録販売者試験の再開と、県をまたいでの受験の実施を要望している。
このほか、これまで従事期間2年以上とされてきた店舗販売業の管理者要件は、この4月から従事期間1年以上(従事時間1,920時間の拡大解釈)に短縮された。これを受け日本薬業研修センターは、従来の研修に追加研修を加え、資格者の資質を担保するカリキュラムを作成している。
6月16日に開催されたJACDS主催の業界研究レポート報告会では、医薬品登録販売者委員会の関委員長が登壇し、委員会活動を報告するとともに、「登録販売者はセルフメディケーション推進のために不可欠だ」との考え方を示した。
「AIの進化等で医療が合理化に進む中、登録販売者の意義も今後ますます問われてくる。ただ私は、セルフの売場で医薬品の購入をためらっている方や、病院で治らなかった症状を抱える方に寄り添い、背中を押してあげられる職能が医薬品登録販売者であり、セルフメディケーション推進の上で大きな役割を果たすと考えている。当委員会も引き続き、資格者の質の向上と、生活者への啓動活動に積極的に取り組んでいきたい」(関委員長)と語っていた。
また関委員長は将来的に、資格者の名称を「販売者」から「販売士」へと変えていきたいとも語っていた。これには一般社団法人日本医薬品登録販売協会(日登協)も賛同しており、「生活者の認知度向上と資格者の自身の意識の底上げになる」(日登協・樋口俊一会長)、「士を名乗ることで、生活者の命を預かる立場であることをお客様に示したい」(同・江黒純一理事)としている。