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性感染症検査薬、22年国内市場は108億円
梅毒患者数の増加で注目

総合マーケティングビジネスの株式会社富士経済が、梅毒患者数の急増により注目度が高まっている性感染症(STD)検査の国内市場を調査した。その結果を「性感染症(STD)自費検査の実態把握と性感染症検査市場の方向性」にまとめた。この調査では、STDの遺伝子検査と免疫血清検査による検査薬市場を明らかにし、クリニックへのアンケート調査や患者数の動向などを踏まえ、スクリーニングや入院・手術前の安全管理などを除いた、診療における診断を目的とした検査薬の市場や保険診療と自費診療の割合などを推計した。



遺伝子検査と免疫血清検査を測定方法とするSTD検査薬を対象とした。生殖器からの検体の培養検査、日本赤十字社の献血検体スクリーニングは含まない。

STD検査は感染が疑われる患者の診断補助のほか、医療施設におけるスクリーニング、入院・手術前の安全管理などを目的に実施される。また、感染の自覚症状のある患者、風俗産業従事者の定期的な検査のほか、妊婦検診のメニューにも組み込まれていることから受診者は幅広い。遺伝子検査は診断補助が中心、一方、免疫血清検査はスクリーニング、診断補助、安全管理まで広く普及していることにより、免疫血清検査の市場が大きい。

なお、スクリーニングや入院・手術前の安全管理などを除いた、診療における診断を目的とした検査薬の市場は2022年で23億円であり、遺伝子検査がけん引している。


【遺伝子検査市場】2022年市場規模:20億円


市場規模が大きいのは、クラミジア/淋菌同時検査である。どちらも今後の患者数の増加が想定され、同時検査が変わらず主流になるとみられる。HIV定量はHIV感染が疑われる患者の診断補助、HIV感染者やAIDS患者の病態把握、治療薬の効果のモニタリングで使用される。累計患者数が減少しており、需要は横ばいから微減とみられる。
2022年の市場は、ロシュ・ダイアグノスティックスがトリコモナス/マイコプラズマ・ジェニタリウム同時検査キットを発売したことで拡大した。これまで、マイコプラズマ・ジェニタリウムはクラミジアと同じ治療剤の使用が多かったが、薬剤耐性の獲得が進んだため鑑別の重要性が増していることから、今後も伸びが予想される。


【免疫血清検査市場】2022年市場規模:89億円


入退院や手術前などに患者の感染の有無を確認する目的でHIVや梅毒の検査が行われている。用途としては、診断補助よりも安全管理を目的とした検査の方が圧倒的に多いため、入退院や手術の患者数の影響を受け、市場は90億円程度を推移している。

梅毒関連は安全管理を目的に多用されており、梅毒TP抗体や梅毒脂質抗体はラテックス定量法が自動化学分析装置で測定可能なことから、需要が大きい。また、診断補助の比率は低いものの、今後梅毒患者数は増えるとみられ、需要増加が予想される。


※STD検査薬の国内市場は遺伝子検査と免疫血清検査市場の合算だが、市場を四捨五入しており合計は一致しない



<調査方法>
富士経済専門調査員による参入企業および関連企業・団体などへのヒアリングおよび関連文献調査、社内データベースを併用

<調査期間>
2022年12月~2023年2月