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シリーズSDGs リサイクルにおける流通の役割
テラサイクルジャパン代表 エリック・カワバタ氏インタビュー

テラサイクルジャパン代表/アジア太平洋統括責任者
  エリック・カワバタ氏

「リサイクル」という言葉を知らぬ日本人は少ないが、その仕組みを正しく理解する方はどれほどいるだろう。ゴミの分別はリサイクルの第一歩だが、それを資源として循環させるには、様々な課題を超えねばならない。こうした課題を、グローバルな知見を用いて解決しているのが、今回取材したテラサイクルジャパンである。同社は日本チェーンドラッグストア協会加盟社も参画する「JACDSサーキュラーエコノミープロジェクト」(2022年6月〜23年3月)や「おくすりシート リサイクルプログラム」(2022年10月〜23年9月)などにノウハウを提供し、いずれも実効性の高い取り組みとなっている。代表のエリック・カワバタ氏に、リサイクル推進における流通の役割と、その先にある将来展望を聞いた。以下は氏との一問一答の要旨である。(取材と文=八島 充)

「ドラッグストア企業の環境意識は高い」

――テラサイクル(TerraCycle)はどのような会社なのですか?

エリック代表 2000年初頭、アメリカのプリンストン大学に通う大学生だったトム・ザッキーが、ミミズに残飯を与えて作った堆肥を使用済飲料ボトルに詰めて販売したのが始まりです。その後は同国内で各種リサイクルのプログラムを成功させ、2011年以降は活動の輪を海外に広げています。日本で事業を開始したのは2014年からで、現在では20ヵ国以上でリサイクルプログラムを展開しています。

日本の事業で記憶に新しいのは、東京2020オリンピック・パラリンピックで企画された「みんなの表彰台プロジェクト」が挙げられます。

「使い捨てプラスチックを再生利用して表彰台を作ろう」というP&Gジャパンの呼びかけにイオングループが反応し、ウエルシアHDを含むグループ2,000店に回収BOXが置かれました。全国の学校113校での回収と合わせ、最終的に実に24.5tを集め、表彰台全 98 台を製作しました。

参考リリース:https://kyodonewsprwire.jp/prwfile/release/M101519/202106025806/_prw_OR1fl_5a34g6fJ.pdf

もう少し遡った例では、2015年にライオンと一緒に始めた「ハブラシ・リサイクルプログラム」※があります。

※参考サイト:https://www.lion.co.jp/ja/sustainability/toothbrush-recycling/

「ハブラシ・リサイクルプログラム」の回収シーン

当初は使用済みの歯ブラシを主に全国の学校で回収する試みでしたが、あるドラッグストアから、「取り組みに強く共感し、手作りの回収BOXをレジ脇に置いて展開している」との連絡を受けました。

回収された歯ブラシで作られた植木鉢

これには私も感銘を受けました。リサイクルに積極的に関わっていこうというドラッグストアを含む小売業が数多く存在することを、再確認した瞬間でした。

なお、歯ブラシの正常な機能としての寿命は約1ヶ月ですが、多くは平均で3ヶ月間使用するそうです。その理由は金銭的なものでなく、「もったいない」というところにあるようです。正しい使用法で歯と歯茎の健康を守り、かつリサイクルにつながるこのプログラムは、開始から8年が過ぎてなお広がりを見せています。

「JACDSサーキュラーエコノミープロジェクト」の店頭回収シーン

※使用済のプラスチック容器を横浜市中区にある店頭で回収しリサイクルする実証実験。参加店舗はウエルシアHD、トモズ、マツキヨココカラ&Co.、協力メーカーは花王、・P&Gジャパン、ユニ・リーバ、ライオン。

エリック代表 JACDS・SDGs推進委員長の德廣英之氏(トモズ社長)とは以前から意見交換していましたし、ウエルシアさんもマツキヨココカラさんも、環境問題に関心の高い企業であることは知っていました。

――2022年6月に日本チェーンドラッグストア協会(JACDS)が始めた「JACDSサーキュラーエコノミープロジェクト」※も、実効性の高い取り組みとなっています。

同プロジェクトの実験期間は当初昨年末まででしたが、生活者から好評をいただいていることもあり、今年3月まで延長しています。

現在はJACDSの他にも、大手・中小を問わず様々な企業がリサイクル活動を推進しており、稼働中の当社プロジェクトは直近で45に上ります。

廃プラ輸出禁止が転機に

――流通業がリサイクル活動に積極的な理由は何でしょうか?

エリック代表 日本で事業を始めた2014年当時は、国も産業界もゴミ問題を深刻に考えていなかったように思います。

その頃はリサイクルと言ってもサーマルリサイクル※が中心で、中国に廃プラの輸出もおこなっていました。資源循環の概念が希薄なために、リサイクルの定義そのものが曖昧だったと考えます。

※廃棄物を焼却処理した際に発生する排熱を回収し、エネルギーとして利用すること

しかし2018年1月、中国が廃プラの輸入を禁止したことで、状況は一変しました。

当時の日本は、中国への廃プラの輸出量がアメリカ、ドイツに次いで第3位でした。G 20やG7参加する国とそこで事業をおこなう企業の責任を考えれば、意識の転換は必須でした。

そうして、「大量に排出される焼却ゴミを減らすべき」「使用済容器を資源として捉えよう」「資源を循環させる活動を支援していこう」という機運が一気に高まったのです。

2015年に国連サミットで採択されたSDGsも追い風となりました。12番の目標である「製造責任」にメーカーが向き合い、その活動に小売業も賛同し、リサイクル推進の土台が醸成されていきました。

欧州の生活者の目は厳しい

――他の先進国に比べ、日本企業のリサイクル活動は遅れているという印象があります。

エリック代表 世界中でプログラムを展開する私たちから見て、日本が他国に遅れをとっているとは考えていません。

ちなみに、欧州がリサイクル先進国と言わる理由の1つは、生活者の目が大変厳しいことが挙げられます。

例えばフランスでは、スマホのアプリにバーコードを読み込めば、その商品がオーガニックなのか、リサイクル可能なのかを判別でき、それに反する企業はクレームの対象になります。

かたや日本の生活者は良く言えば企業活動に寛容、悪く言えば無頓着な面があります。ゆえに、生活者の強いプレッシャーが無いにも関わらず、環境問題を自分ごとと捉え真摯に取り組んできた日本の企業は素晴らしいと感じます。

2022年を境に意識が急変

――企業の行動とともに、生活者の意識も変わってきたのでしょうか?

分別回収で再生されるのはPETボトルが主である

エリック代表 2021年時点では生活者の意識がそこまで高いとは言えませんでしたね。

――どうしてですか?

エリック代表 日本の街はゴミが少なく綺麗ですし、家庭で排出されるゴミの分別も励行しています。しかし実際には、分別ゴミのうち再生されるのはPETボトルが主で、ほかの多くは熱回収となっています。その実態を知る方が少なかったことが、意識が低かった理由だと考えられます。

ところがその状況も、2022年を境に突然変わりました。

コンサルタント会社のFabricと共同で「日本におけるサステナビリティの現状」を調査していますが、2021年と2022年で明らかな変化が見られたのです。特に、「環境に配慮した包装であれば、もっとお金を出しても良い」との回答した率は、21年の28%に対し、22年は69%と倍以上のスコアになっていました。

このデータを分析して得た結論は、

――コロナ禍で在宅時間が長くなったために、従来は外で排出していたゴミも家の中に溜まり、その量の多さに改めて気づき、『このままではいけない』と意識するようになった――

というものです。

調査結果が即、実際の行動に繋がっているのかは分かりません。ただ、これまで流通業が取り組んできたリサイクルの活動が、一歩前進したことは間違いないでしょう。

持続可能な活動にする鍵は?

「おくすりシート リサイクルプログラム」の回収ボックス

――昨年10月から第一三共ヘルスケア(HC)と推進している「おくすりシート(PTPシート)リサイクルプログラム」※として結実した構想も、代表が長年温めてきたとお聞きしました。

※参考記事@Hoitto!:https://hoitto-hc.com/3349/

エリック代表 日本では医師から処方される薬の多くはPTPシートで提供されます。服用後に大量に出るPTPシートを何とかしたいと思ったことが、プログラムを発案したきっかけです。

2014年から製薬メーカー各社をあたる中、サステナビリティ推進の取り組みを検討していた第一三共ヘルスケアさんと出会いました。

――素材のプラスチックとアルミ箔を分離回収してリサイクルする作業は簡単ではないと聞きました。

エリック代表 PTPシートのプラスチック素材が統一されていないため難しい面もありますが、アメリカの研究開発チームのノウハウを活用すればクリアできます。

ただ、小ロットの回収ではリサイクルのコストも高額になるので、本格運用するには、参画の輪を広げて広く取り組まれる活動へ発展させることが必要です。

――それが、プログラムを持続可能なものにする鍵ということですね。

エリック代表 今やESGは株価を左右する要素であり、機関投資家が企業を評価する柱となっています。幸い、ここ5年の中で日本にもESGの概念が浸透し、専用のチームを持つ企業も増えてきました。こうした機運が、リサイクル活動をさらに前進させるものと期待しています。

――世界中がESGというキーワードの元に変化の過程にあると。

エリック代表 その通りです。地球の環境を守ためにも、リサイクルの推進は待ったなしの状況ですが、高い志を持って行動すれば成し遂げられるはずです。遅すぎるということはありません!

「デザインから考え直すべき」

――ここ日本で、テラサイクルのような事業会社は他に無いのでしょうか?

エリック代表 リサイクルのノウハウを有する企業は複数ありますが、私達は利益を追求するのではなく、ミッションそのものを事業とするソーシャルエンタープライズです。だからこそ、皆さんの賛同を得て目標の達成に邁進できるのだと思います。

ーー最後に、テラサイクルジャパンの当面の目標を教えてください。

エリック代表 リサイクル率を高めるために、容器の素材や色の統一などを、メーカーと話し合っていきたいと思います。色の変更などはマーケティング上の課題もありますが、「循環型社会の実現のためにデザインから考え直していく」ことを、皆と一緒に考えていきたいですね。

――ありがとうございました。

エリック・カワバタ氏略歴

東京大学大学院法学政治学研究科特別研究生、金融機関の法律顧問、投資銀行役員、サステナビリティ関連のNPOなどを経て、米国テラサイクル入社。現在、テラサイクルのアジア太平洋統括責任者と米国テラサイクルが設立したLoop Japanの代表務める。

テラサイクル(TERRACYCLE)のHPはこちら https://www.terracycle.com/ja-JP/