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フレイルは漢方でいう「未病」

COPDの治療と、フレイル予防で期待される漢方

昭和大学病院・病院長の相良博典氏

「2022年、日本が向き合う12の暮らしの不調」と題して、1年を通じて漢方情報を発信しているクラシエ薬品。11月は「COPDとフレイル」をテーマに、このほど漢方セミナーがオンラインで開催された。

COPD患者は低栄養に陥りやすい

11月16日は「世界COPDデー」。COPDは主に長期の喫煙習慣などによって肺に炎症が起きる疾患。症状が進むと歩くだけで息切れを起こし、患者は外出や運動を避けるようになり、活動性が低下する。筋肉の萎縮が進行し、さらに動けなくなるとQOLが低下し、多くの合併症を併発するような悪循環に陥ってしまう。

またCOPDの患者の肺は、息をうまく吐き出すことができずに膨らんでおり、その下にある胃が圧迫され食欲がわかない。逆に胃が食べたもので膨れると、肺を圧迫するため苦しくなり、十分な食事がとれなくなる。

さらにCOPDの患者は、呼吸に消費するエネルギー量が健康な人より約10倍も多い。摂取エネルギーが減少する一方で、エネルギー消費量が増大し、低栄養に陥りやすくなる。

生活習慣病にかかるケースも多い

セミナーの講師に立った昭和大学病院・病院長の相良博典氏によると、COPDによる日本人の死亡数は年間約16,000人。喫煙率は低下傾向にあるものの、死亡数は今後も増加すると予想されるという。また、COPDの問題は受診率が低いことと、心臓疾患や糖尿病などの生活習慣病にかかるケースが多いことだと指摘する。

今回のセミナーのテーマであるCOPDとフレイルの関係では、COPDの患者がフレイルを合併すると死亡率は4倍に高まるという。また、呼吸機能がより低下し、急性増悪のリスクが高くなり、治療中・治療後の状態も良くないとされる。

フレイルによって増悪を繰り返すことでCOPDの状態はいっそう悪くなる。COPDの治療法は薬物療法とリハビリテーションだが、フレイルを来さないための予防的な対策も非常に重要と述べる。

相良氏がフレイルとCOPDの治療で期待するのが漢方だ。

フレイルは体や心の活力が低下した状態で、進行すれば要介護リスクが高まる。ただ、運動・栄養等によって元の健康的な状態に戻れることから、フレイルは漢方でいう「未病」の段階だと言う。

そこで、古来より食欲不振や疲労倦怠感などの症状改善を目的に処方されてきた漢方薬がフレイル対策として、臨床応用され始めている。中でも特に「人参養栄湯(にんじんようえいとう)」に注目。フレイルに対する医学研究では疲労感の軽減、食欲の増加、握力などの筋力の増加、栄養状態の改善が報告されているという。(石川 良昭)