
18歳で1型糖尿病を患った星南さん。その後はモデル活動などを通じ、1型糖尿病の正しい理解を促すとともに、将来の「根治」という目標に向かって支援の輪を広げる活動を展開している。さらに昨年は一般社団法人凸凹もへじを立ち上げ、ハンディキャップがあると感じている子供らの支援に乗り出した。「外の世界を知ることで、生きる上での選択肢が無限にあることを知っていただきたい」という星南さんの、最近の活動を追った。(取材と文=八島 充)
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世界糖尿病デー翌日の11月15日、暖かな日差しが降り注ぐ都立明治公園で、あるスポーツイベントが催された。イベント名は「RUN FOR TYPE1」。1型糖尿病という病気の正しい理解を広め、その根治に向けた支援を訴えるのが目的だ。
主催したのは、自ら肩書きに「チャレンジャー」を冠し、モデルの傍らイベンターとしても活躍する星南さん。1型要尿病を抱えながら世界一周旅行を実現し、トライアスロンや100kmマラソンにも挑戦する、本物のチャレンジャーである。数々の挑戦を通じ、同じ病気を持つ方に「やりたいことを諦めない」ことの大切さを伝えると同時に、一般の方にも「他人事ではない」ことを理解してもらう、広告塔を担っている。
「RUN FOR TYPE1」の開催は2年目で、今回も一般の方を含む大人から子供まで多くの方が参加した。目玉の企画は「ブルーバルーンチャレンジ」。1型糖尿病患者は24時間365日、機器を用いて血糖値を管理している。数値が高い時はインスリンの注入が必要で、低すぎて低血糖状態になれば命の危険にさらされる。血糖値の上下動を風船のはずみ具合で表現し、ポンポンと叩いて安定させるという趣向だ。
このイベントに協賛したのがサラヤである。同社は植物生まれでカロリーゼロの甘味料「ラカントS」を販売しながら、長年1型糖尿病の患者とその団体を支援してきた。糖尿病患者は1型・2型を問わず食事における糖質のコントロールが必要で、「ラカントS」はそうした食事の補助として広く活用されている。
かくいう星南さんも「ラカントS」の愛用者だという。30年も前からずっと糖尿病という病気に向き合っている姿勢、さらには素材となる羅漢果の生産管理から製造工程に至る細部で「安全・安心」を追求していることにも信頼を置いているそうだ。
「今回サラヤさんには、運営協賛のほか参加者へのギフトも提供していただきました。多くの参加者から、ラカントSを『知っている』『使っている』、あるいは『社会貢献に熱心な会社だよね』など、嬉しい反響がありました」(星南さん)。
星南さん自身も、同社が行うボルネオの環境保全活動などに強く共感している一人だ。「モノを作って売るだけのビジネスではなく、販売した後も社会や地球に貢献していこうとするサステナブルな企業理念は、私の目指す活動と同義だと感じています」という。
その星南さん、新たな活動のフィールドとして昨年9月に「一般社団法人凸凹もへじ」なる組織を立ち上げた。1型糖尿病は自己免疫の働きによって生じる原因不明の病気で、子供の罹患も少なくない。凸凹もへじは、1型糖尿病の子供だけでなく、自分にハンディキャップがあると感じている、あるいはハンディキャップのある人たちと一緒に生活する子供たちに、「生きる上での選択肢は無限にある」ことを伝えるのが目的である。
「子ども食堂でのボランティア活動を通じ、日本には不登校児が多く、子供の自殺率も低くないという現実を知りました。原因の1つは社会の閉鎖性、例えば学校の外に存在する多彩な個性や多様な生き方に触れる機会が少ないことにあると感じました。外の世界との接点、そのファーストタッチを、自治体や企業も巻き込みながら創りたいと考え、凸凹もへじを立ち上げました」(星南さん)

ちなみに彼女は、1型糖尿病を発症した半年後にアメリカに留学して異文化に触れ、帰国後もバックパックで世界一周を実現している。この経験から「人は環境1つでマジョリティにもマイノリティにもなり得る」ことを、身を持って知ったという。「今いる世界から一歩踏み出せば、様々な生き方が広がっていることを知ることができます。そのことを、子ども本人はもちろん、親御さんにもお伝えできればと考えています」(星南さん)

凸凹もへじの設立から約1年半、ここまで複数回のイベントを開いてきた。子供たちに特に好評なのがオリジナル紙芝居「みんなのトモダチ」。物語の中にハンディキャップを持った人物が登場し、世の中は様々な(凸凹な)人間で成り立っていることを疑似体験してもらう試みだ。「目が見えない、肌の色が違う、両親が男性、または私のようにお腹に機械をつけているなど、いろんな事情を持った人たちが共存していることを理解してもらい、現実社会でそのような人に出会った時に手を差し伸べられる人になって欲しい…そんな思いを込めてイベントを開いています」(同)
11月25日には凸凹もへじとVAMOS TOGETHERの共同主催によるイベント「Play Together」が開催された。VAMOS TOGETHERの代表はプロ野球の選手と監督を歴任したアレック・スラミレス夫妻。長男がダウン症で、同じ病気を持つ子供たちの支援を行なっている。「ラミレスさんの奥様と知り合いになったご縁で、イベントをご一緒させていただきました。引き続き私たちの活動の賛同者を募り、もっともっと訴求力のあるイベントを作っていきたいと考えています。自治体の方々、また企業の方々のご参加もお待ちしております!」

取材を終えて…
星南さんは、「私が幼い頃、学校には様々な個性、様々なハンデのある子がいて、彼らができないことを互いに補ってきました。また留学先のアメリカでは、1型糖尿病を“個性”と捉えてくれる仲間に恵まれ、彼ら自身もウェルビーイングを大切にして生きていると感じました。対して、今の日本の教育は、個性を個性と認めにくい環境になっていないかと心配になります。これからの子供たちには、学校の外にある広い世界をどんどん体験していただき、自分の個性を磨いて欲しいと思います」と語っていた。
凸凹もへじは、星南さんの想いを自身の行動で示し伝えている組織だ。前出のサラヤやラミレス夫妻も、その姿勢に共鳴し彼女の活動を応援しているのだろう。ちなみに星南(SENA)の名前は本名で、読み方だけ変えたという。生まれ月の12月、南方に現れる南十字星に由来し、「星のように輝き、南国のように温かい心を持って欲しい」と命名されたそうだ。その名前に違わず温かい心で子供達を想う星南さん。取材中もずっと、キラキラとしたオーラを放っていた。Hoitto編集部も微力ながら、彼女の活動を支えていきたいと思う。