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「地域をつなぐ薬局の役割 ~まちづくりのタネをまこう~」

総合メディカルグループ「ファーマシーフォーラム2022」特別講演

帝京平成大学薬学部薬学科 社会薬学教育研究センター 教授 小原道子氏

このほど、総合メディカルグループ「ファーマシーフォーラム2022」(オンライン開催)の特別講演に、帝京平成大学薬学部薬学科の小原道子教授が立った。在宅の現場で培った経験と知見、地域包括支援センターで取り組んだ地域とのつながり、メーカーとの協働による製品の研究開発等々。そしていま、教育の場で薬育活動にも尽力しながら、地域包括ケアシステムの根幹となる「まちづくり」のタネをまく活動に邁進する。小原氏の講演内容の要点を記す。

なぜ薬局が「まちづくり」のタネをまくのか

小原道子氏

「まちづくり」は地域包括ケアシステムとリンクするものです。

薬局・薬剤師の役割を考えると、①セルフメディケーションとしての一般用医薬品と処方箋による医療用医薬品の両方を扱うことができる、②医師からの処方箋に唯一、疑義照会を行うことができる、③どの薬剤師も全科対応ができる、④薬局は専門職や地域の方が誰でも気軽に来る場所、⑤薬局はもともと地域住民の生活拠点の中にある身近な資源。とくに全科対応ができる、どんな処方箋にも対応ができるというのは、薬剤師の素晴らしいスキルだと思います。

地域包括ケアシステムの中で、薬局は身近な存在。地域包括ケアシステムの根幹にあるのは「まちづくり」であり、まちづくりのタネをまくということは、地域包括ケアシステムの構築に向かっていくことにほかなりません。

地域包括ケアシステムの構築の一方で、どう高齢社会を乗り切っていくかが、薬局にも課せられた課題です。

65歳以上で、要介護・要支援の非認定者の割合は8割。今後、この8割の非認定者が要介護状態になれば、介護保険や医療保険の破綻につながる恐れがあります。薬局機能にも支障をきたすことになるのではないでしょうか。セルフメディケーションや健康寿命の延伸、ヘルスリテラシー向上の施策が大事ですが、全国6万件の薬局が総力をあげて、地域を支えていかなければならないと思います。

地域包括ケアシステムは、それぞれの地域に合った医療・介護・予防・住まい・生活支援が一体的に提供される体制づくりを目指すもの。では一体、地域医療とは何でしょうか。病院など医療機関での疾患の治療やケアにとどまらない「概念」とされています。

地域医療において医師および医療従事者は、地域住民全体の幸福を常に考えて医療活動を行うものとし、疾病の治療だけでなく予防や健康の維持・増進、さらに在宅療養サポートから子育て支援、引きこもりの児童・成人等との関わりも活動範囲。全人的に向けた幅広い健康サポートが地域医療と言えます。

地域医療の先駆者である佐久総合病院の若月俊一先生(農村医療を確立。2006年没)の名言に「愛情こそが最高の技術」とあります。予防は治療に勝るという考えのもと、先生自ら農村に出向いて行って、いっしょに農作業に汗を流し、自分の体験をもとに医療につなげて行かれました。

「患者のための薬局ビジョン」でも健康サポート薬局が掲げられ、予防を推進していくことがこれからの薬局運営の足掛かりになると思います。大型の店舗では、特に高齢者が商品を探すのはたいへんですが、地域の調剤薬局は特性に合わせた棚割り等で健康サポートを推進できる可能性があるのではないでしょうか。

セルフメディケーションを支援する製品を扱うことで、「あそこの薬局へ行くと、薬だけでなく元気になる食品を紹介してくれる」といった薬局体験から、信頼にもつながる可能性があります。

セルフケアへの取り組み事例・・・・・

小原氏は介護食品、介護用品等のメーカーといっしょに製品開発や研究にも力をいれる。たとえばUHA味覚糖とは「口腔ケアの探索研究と製品開発」で論文も発表。口腔ケアが難しい人に向けたオーラルジェルの摂取による舌苔(口腔内総菌数)の減少を歯科医の症例で示している。オーラルジェルはキャンデーから形状を変えたもの。「おいしいものを食べて口腔ケアができれば」というのがもともとの研究開発のきっかけだったという。

「地域とつながる」地域ケア会議への参加

「地域とつながる」という視点で、地域ケア会議にどうしたら参加できるのかというお話を良く聞きます。地域包括支援センターに問い合わせをすることが1つ。それから地域ケア会議を想定して、薬局内で学び合い、患者様の課題の抽出を行ってみることも有効です。薬から考えるのではなく、患者様の病態や生活環境から検討していくことが重要。地域ケア会議では、ケアマネジャーさんやヘルパーさんらが提案をしてくるので、多職種の人たちの視点にまで薬剤師が寄り添っていくことが大事です。

医療従事者が地域の人たちのフィールドに入っていくことも大切ですが、まだまだ事例は少ない。

例えば、薬剤師にとって薬局はホームグラウンドであり、安心して服薬指導等ができますが、完全アウェーでは戸惑ってしまう不安があります。

逆の見方で、患者様からすれば薬局はアウェーです。患者様に寄り添うという意味では、こちらから出向いて行ったほうがいいと思います。そして、一番に地域の方々の相談に乗れるのは薬剤師ではないでしょうか。もっと地域に出向き、地域包括ケアと多職種連携のタネを皆さんでまいてほしいと思います。

地域をつなぐ「まちづくりのタネのまき方」

タネのまき方は2つです。自分でまくとき、自分でまかないとき。

自分でタネをまくときは、アウェーでまいてほしいと思います。そこで出た芽はきちんと地域に根付いて育っていく感覚があります。植物のタネと違って、想像もしなかった芽が出ることもあります。

これからの地域医療は、病気であっても豊かに生きていけることです。

平時、災害時の薬局の機能を網羅し、「暮らしの処方箋」を薬剤師が書いて、地域の一員として地域に参画していただく。ホームからアウェー、外に出ていくことで、これからのまちづくりは、自ら地域に入っていって、小さなタネを地域にまいていくところから始まるのだと思います。(石川良昭)

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