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福祉用具と介護ヘルパー〜ケアマネ福田英二の徒然日誌その16

2024年7月5日(金)晴れのち曇りで本日も酷暑。 穴子の日。穴子はうなぎと同じく夏の滋養強壮食です


「足腰が痛くて布団から起き上がれなくなった」「トイレやふろ場まで移動するのが辛い」

こんな時に威力を発揮するのが「福祉用具」だ。ベッドや手すり、シルバーカーやポータブルトイレ、 歩行器や車いすなどなど、 インバウンドの人が喜びそうなものが満載だ。 電動ベッドや立ち上がりの手すりなど、びっくりするくらい便利で安価なものがある。

介護保険で人的サービスを使いたいと思っても、時間や曜日を調整したり、施設や人を選ばなければならない。その一方、福祉用具は実に用途や機能がシンプルにまとまっており、サービス提供の速さと使い心地の良さが魅力だ。必要とあらばその日にセットして「すぐに役に立つ」。 季節ごとに開催される「福祉機器展」などは、その市場の大きさと豊富な資源に目を見張るばかりだ。

こうした商品群に比べれば、いかにもヘルパーの仕事は地味に見える。生活支援のスペシャリストなのに、不思議と「軽んじられて」いるようで仕方がない。先日もあるご婦人のお宅にお邪魔して、息子さんと一緒に介護ヘルパーの利用を打ち合わせた。老練の 2 人のヘルパーさんは「サービス提供責任者」という役職で、 件のご婦人にどんなヘルプが必要かを助言してくれた。

「こんなに片付いてる部屋なら、お掃除と一緒に洗濯もしましょうか」「 洗濯干しのベランダが使いにくそうですから、 S 字フックを買っていただいて物干し竿の位置を下げると、 無理な動作がなくて転倒防止にもなりますよ」…などなど、実に細やかな配慮をしてくれる。また、高齢のご婦人の生活に対応する担当のヘルパーさんを選んだり、話し相手になれるような時間も作ったりと、驚くほどの「気の利いたサービス」が盛り込まれている。福祉用具も使い勝手はいいが、なんといっても「人のぬくもり」があるヘルパーさんは「一緒に歳を重ねていく伴侶」としての役割が果たせる。

とはいえ、 残念ながら福祉用具のようにこの配慮には「値段がついていない」のである。

最低賃金が徐々に上がっているにもかかわらず、 今回の介護保険改正では「切り下げ」になってしまった!様々な理由はあるだろうが、ヘルパーが高齢化しなおかつ「なり手がいない」という現状の中で、今回の処置が果たして妥当かどうか疑問を感じる。

地域包括ケアシステムは「住まい」「医療」「介護」「予防」「生活支援」の 5 つの領域で構成されている。このうち住まいと生活支援を支えるのは圧倒的に人的資源であり、介護ヘルパーに負うところが大きい。

先日もあるご婦人が憤慨していた。「ある業者にお願いしたら、仕事の下見に来るだけで3000円と言われてお断りした」と。とはいえ、これは妥当な値段だと考える。先ほどの打ち合わせで、大雨の中、 カッパを着て自転車で駆けつけたヘルパーさんには手当はない。 家事労働が軽視されて久しいが、今後の一人暮らし高齢者の増加を考えると、ヘルパーの人材確保を外国人労働者だけに依存していては、どこかがおかしくなってしまう気がしている。

地域包括支援センターが、こうしたヘルパーさんを守れる時代を作らなくてはならないと、改めて感じた打ち合わせ会であった。