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医薬品乱用経験、解熱鎮痛薬0.84%、市販薬は0.75%〜厚労省データベースより

厚生労働科学研究成果データベースは先ごろ、令和5年度厚生労働行政推進調査事業費補助金(医薬品・医療機器等レギュラトリーサイエンス政策研究事業)における「薬物乱用・依存状況の実態把握のための全国調査と近年の動向を踏まえた大麻等の乱用に関する研究」を公開した。(研究代表者は、国立精神・神経医療研究センター精神保健研究所薬物依存研究部の嶋根卓也氏)


アルコールの大量飲酒増加傾向

調査票は計3,114名を回収(回収率62.3%)。重複回答や除外基準に合致する対象者を除いた計3,026名を有効回答とした(有効回答率60.5%)。対象者の平均年齢は43.5歳、男性49.3%、女性50.7%。主な結果は次の通り。

1)アルコール:
過去1年経験率は76.6%、過去30日経験率は60.7%、過去30日ビンジ飲酒率(短時間に大量に飲酒すること、大量機会飲酒)は34.2%。過去30日ビンジ飲酒経験率は、2021年調査から有意に増加した。

2)タバコ:
過去1年経験率は22.5%、過去30日経験率は20.5%。経年的に緩やかに減少傾向にある。

3)解熱鎮痛薬:
過去1年経験率は70.5%、過去30日経験率は41.5%。過去30日使用率は2019年(31.7%)から2023年(41.5%)にかけて有意に増加。また習慣的使用率も、2015年(2.3%)から2023年(3.8%)にかけ有意に増加していた。

4)精神安定薬:
過去1年経験率は6.1%、過去30日経験率は4.4%、習慣的使用率は3.6%。経年的に増加傾向にあるものの有意差は認められなかった。

5)睡眠薬:
過去1年経験率は7.5%、過去30日経験率は4.7%、習慣的使用率は3.1%。経年的に増加傾向にあるものの有意差は認められなかった。

6)医薬品の乱用経験:
過去1年以内の乱用経験率(者数)は、解熱鎮痛薬0.84%(約74万人)、精神安定薬0.47%(約41万人)、睡眠薬0.27%(約23万人)と推計。

7)市販薬の乱用経験:
過去1年以内の乱用経験率(者数)は、0.75%(約65万人)と推計され、男性0.82%、女性0.80%、10代1.46%、20代0.59%、30代0.69%、40代0.20%、50代1.24%。60代0.51%。乱用に用いた市販薬の入手先は、薬局・ドラッグストア等の実店舗36.0%、家の常備薬16.0%、インターネット4.0%、入手先不明56.0%であった(複数回答可)。

8)違法薬物:
各薬物の生涯経験率(者数)は、大麻1.5%(約134万人)、有機溶剤1.2%(約104万人)、覚醒剤0.5%(約47万人)、MDMA0.5%(約44万人)、コカイン0.4%(約37人)、危険ドラッグ0.3%(約29万人)、LSD0.3%(約22万人)であった。ヘロインは統計誤差範囲内であった。有機溶剤使用者の減少と大麻使用者の増加が確認された。

9)使用した大麻の形状は、乾燥大麻88.4%、大麻樹脂7.0%、大麻ワックス・リキッド4.7%、形状不明9.3%であった(複数回答可)。

10)違法薬物:各薬物の過去1年経験率(者数)は、大麻0.23%(約20万人)、覚醒剤0.12%(約11万人)であり、他の違法薬物は統計誤差範囲内あるいは該当者がいなかった。

◇ ◇ ◇

違法薬物については、有機溶剤は有意に減少、大麻は有意に増加していた。過去1年以内に大麻を使った経験のある国民は約20万人、覚醒剤は約11万人と推計された。他の違法薬物は統計誤差範囲内であった。

今回の調査では一般住民における市販薬の乱用経験を初めて調べた。過去1年以内の市販薬の乱用経験率は0.75%であり、乱用経験のある国民は約65万人と推計された。


詳細はこちら(https://mhlw-grants.niph.go.jp/project/171611