「在宅医が考える、超高齢社会 ~日本が目指すべき医療のカタチ」という演題が目に留まった。東京ビッグサイトで開催された「住まい×介護×医療展」でのこと。案の定、講師は医療法人社団悠翔会の佐々木淳理事長。同会が運営するクリニックは首都圏18拠点、他の地域3拠点。インドでもスタートするなど、在宅医療の最前線に立つ。
少子高齢化の日本で医療費の適正化は大きな課題だが、その8割は70才以上の入院医療費が占める。また、入院+せん妄による認知機能の低下、肺炎による長期入院の栄養管理の問題など、佐々木理事長は、日本の医療事情の実態を具体的な数値や事象で示す。
長期入院による介護度の悪化を皮切りに、在宅医療による早期入退院の効果、地域医療体制の見直しの必要性、リフィル処方箋の有効性など注目すべきポイントを詳述。また悠翔会の事例を織り交ぜ、現状の医療制度のあり方と改善策への提言、今後の医療ニーズに最適な医療体制とは何か、といった示唆に富んだ展開で会場を引きつけた。
中でも、世界的にみて日本は医師が少ないにも関わらず、患者の受診機会が多いため、「世界最低レベルの患者満足度」という点に意表を突かれた。
例えば受診予定を取るのに2週間、病院では2時間待ち、診察はたった2、3分という具体例を挙げられれば、なるほど納得する。医師不足が地域医療体制にも影響を及ぼしていることは、言うまでもない。
佐々木理事長は、診療看護師など医師サイドに立った医療従事者の活用、また、オンラインで医療機関と診療所等をつなぐなど、地域医療体制のためにはテクノロジーや優秀な医療スタッフ、コメディカルの活用の必要性を強調する。
また、4月からスタートしたリフィル処方箋に言及し「画期的だ」と語った。受診頻度が3分の1になれば、診察時間は3倍になるとし、医療機関側のメリットも示す。例えば、午前中に外来を集中させ、午後は訪問診療に充てるといった業務シフトの効率化による医療の質の向上など。一方で、薬局はより細やかな服薬指導、バイタルなどを利用しながらより効果的な処方調整が可能になるのでは、と持論を展開した。
さらに、こうした病院・クリニックと薬局の関係は「医薬分業」ではなく「医薬協業」だと明示する。また薬剤師、コメディカルなどのプロフェッショナルな医療従事者がその職能を発揮できるような医療体制を目指すべきだとする。
医療ニーズに最適な医療体制を。医療が成り立つのは、社会が成り立っているからであり、「社会の中にある医療とは何か」を考えていくことが大切だと述べ、講演を締めくくった。
佐々木理事長の話とリンクするかのように、会場の企業展示では、医療機関と医療従事者、そして患者をつなぐ遠隔医療システムが目を引いた。PHCのリアルタイム遠隔医療システム「Teladoc HEALTH」で、同社では12月に新規事業を立ち上げ、周産期医療や過疎地の医療などの領域で実証実験を重ねている。
2020年度の診療報酬改定では「遠隔連携診療料」が新設されたものの、まだまだ遠隔医療の活用において認められる算定対象は限られているのが現状だろう。
だが、遠隔医療の実現によって期待される効果をみれば、対象疾患の拡大や規制緩和が徐々に進むことが予想される。チーム医療の現場では、薬局の参画と役割がより求められるのは明らかだ。
同社でも、現状の「D to D」から薬局薬剤師をはじめ、コメディカルなど必要な人が、この遠隔医療に参画できるよう、連携のしくみづくりを進めていく考えのようだ。
●遠隔医療の実現により期待される効果
1)医療の質向上
2)財務上の効果
コスト削減/収益増加
3)医療従事者と患者のメリット
4)医療の効率化
※PHC社の提供資料より
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