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3大臣参集し「マイナ保険証」推進を宣言

「医療DX推進フォーラム『使ってイイナ!マイナ保険証』」

日本健康会議は4月25日(木)、都内で「医療DX推進フォーラム『使ってイイナ!マイナ保険証』」を開催した。フォーラムは、最適な医療を実現する医療DXの基盤となるマイナ保険証の利用促進に向けた宣言を行うもので、第1部では武見敬三厚生労働大臣、齋藤健経済産業大臣、河野太郎デジタル大臣が登壇。第2部では日本医師会、日本歯科医師会、日本薬剤師会が各医療機関におけるマイナ保険証の活用動向を説明し、生命保険会社など民間企業が取り組み事例を紹介した。(取材=流通ジャーナリスト・山本武道、編集部・中西陽治)

全国どこでもマイナ保険証を提示すれば、診療や薬剤などの履歴がわかり適切な医療が受けられるだけでなく食事アレルギーを防ぐことも可能になる――予防・健康づくりに取り組む経済界、医療界、保険者団体などが、厚生労働省や経済産業省と連携し、国民一人ひとりの健康寿命延伸と適正な医療の実現を目指す日本健康会議主催の「医療DX 推進フォーラム『使ってイイナ!マイナ保険証』」が4月25日に開催され、厚労省、経産省、デジタル大臣が推進を呼びかけたほか、医療機関、薬局、企業が事例を紹介するとともにPR動画も初公開された。

 フォーラムは、「少子高齢社会にあって人口が減少していく中で、国民の保健医療の向上を図り、最適な医療を実現するための基盤整備を進めるために、国が先頭に立ち医療機関、薬局、保険者、事業主など医療に関わる団体が一丸となって医療DXに取り組むことが重要」として行われたもの。

小林代表「利害の垣根を越えて医療DXに取り組むべき」

小林代表

 開会に先立ち登壇した日本健康会議共同代表で日本商工会議所会頭の小林健氏は、あいさつを通じ「『使ってイイナ!マイナ保険証』は、高齢に近づいてくると食わず嫌いでDX化がなかなか進まないようですが、実は使って良いことがあります。私自身が実感していることは、たくさんありますが、医療のDX化を進めたいということでフォーラムを開催することになりました。

 日本健康会議は、2015年に発足してから今年で9回目の開催になりますが、経済界、自治体、保健団体等々の組織が、それぞれの利害の垣根を超えて連携し、健康経営などの取り組みを全国各地で展開してきました。

 医療DX推進に向けて医療機関、薬局、事業主、保険者などの関係者による利用促進宣言を採択すると共に、マイナ保険証のCMも初公開し取り扱い事例の講演も用意しました。マイナ保険証の利用促進へ関係者がる連携をお願いしたい」と呼びかけた。

河野デジタル大臣「従来型保険証の〝慣れ〟から脱却する時」

来賓あいさつに立った河野太郎デジタル大臣は「医療機関の人々に医療DXのメリットを感じてもらうため、マイナ保険証の推進が重要だ」と説明。

河野デジタル大臣

マイナンバーカードは約7割の普及率となり、今後、厚生労働省が今年12月に紙の保険証を廃止し、マイナ保険証へと移行していく方針に触れ「従来型の紙の保険証に慣れて『困っていない』のも確かだ。また抜本的な新しい取り組みに抵抗感があるのも確か。しかし紙の保険証では医療DX推進はかなわない。マイナ保険証には患者・医療機関双方にメリットがある」とマイナ保険証導入による改革を掲げた。

 河野大臣は「例えば旅先で倒れたとき、救急車内で患者の医療情報を取得し、即時対応を図ることが可能となる。また災害時のような服薬状況が確認できない場面では、患者の『いつも飲んでいるのは白い薬』といったようなうろ覚えから探るのではなく、データによる管理が可能となる。さらに、さまざまな医療データを個人情報保護に則ったうえで活用し、新しい薬や治療法を生み出すビッグデータが構築できる」とそのメリットを説明した。

齋藤経産大臣「医療DXは経済成長にも資する」

齋藤経産大臣

続いてあいさつに立った齋藤健経済産業大臣は「マイナ保険証を核とする医療DXの恩恵は医療界だけにとどまらず、持続可能な経済成長にも資する。より効果的な医療を引き継ぐには、マイナポータルの活用が必須であり、その推進を経産省も進めている」と経済界への影響を紹介した。

一つ目はマイナ保険証の推進を、企業・従業員のための健康経営の条件に盛り込んだこと。

二つ目は国民がマイナ保険証の利便性を経済活動で実感できるよう、データの標準化を進めること。

「レセプトやウェアラブルデバイスから個々の生活習慣をキャッチし、そこから得られるPHR(パーソナルヘルスレコード)を基にした質の高い医療が提供することが可能となる。すると例えば、飲食店で個々人に合ったメニュー提案や、アレルギー対応などが図れるだろう」とDX実現による経済効果を示した。

加藤前厚労大臣「医療費適正化を図らなければ未来はない」

加藤前厚労大臣

次に登壇したのは、前厚生労働大臣の加藤勝信衆議院議員。

加藤議員はフォーラムについて「厚労省、経産省、デジタル庁の3人の大臣が参加する力の入った会議だ。医療DXはなにより国民の健康を守り、予防を進め、医療費の適正化を図るためにある」と力強く語り「マイナ保険証を中核とする医療DXは進めなければ日本の未来はない。先んじて医療情報のデジタル化を進めている海外の会議に参加していてもそれを感じる」と危機感もにじませた。

そのうえで、「日本の素晴らしい医療制度を引き継いでいく。しかしマイナンバーカードだけでは中途半端だ。私が厚労大臣だった際、カードをうまく使った医療機関は業務効率が上がったという声が多く聞かれた。この実例を拡げるためには、マイナ保険証と紐づくカードおよびオンライン資格認証が手間になってはいけない。今乗り越えていくべきだ」と語った。

武見厚労大臣「マイナ保険証は医療のパスポートになる」

武見厚労大臣

 そしてあいさつの最後に立った武見敬三厚生労働大臣は「マイナ保険証は医療保険のパスポートとなる」と掲げた。

そのうえで「2024年12月に紙の保険証の新規発行停止し、マイナ保険証へと円滑に移行するためには、国民のみなさまに丁寧に伝えていかなければならない。そのために本日の『マイナ保険証利用促進宣言』を皮切りに5月より3か月間を〝マイナ保険証強化月間〟として進めていく」とプロモーション強化を示した。

「日本医師会、日本歯科医師会、日本薬剤師会の方の医療機関における窓口での呼びかけが重要であり、健康保険協会では会員に向けてメリットを伝えてほしい。われわれ厚生労働省では省内のエレベーター内に大きなポスターを掲出し、来庁者にもアピールしている。

関係者が一丸となって頑張っていきましょう。皆様の協力をお願いいたします」と協働を求めた。

医師会・歯科医師会・薬剤師会交え「マイナ保険証利用促進宣言」

 来賓あいさつ終了後、「マイナ保険証利用促進宣言」が行われた。

前列左より、日本医師会の松本吉郎会長、加藤衆議院議員、河野デジタル大臣、武見厚生労働大臣、齋藤経済産業大臣、小林代表、健康保険組合連合会の宮永俊一会長

後列左より、日本健康会議の渡辺俊介事務局長、日本薬剤師会の山本信夫会長、厚生労働大臣政務官の塩崎彰久氏、厚生労働副大臣の濵地雅一氏、日本歯科医師会の高橋英登会長、俳優の内藤剛志氏


日本健康会議医療DX推進フォーラム~使ってイイナ!マイナ保険証~

高齢化と人口減少が進む社会にあって、限りある資源を有効に活用しながら質の高い医療を実現していくには、医療分野でのDX(デジタル・トランスフォーメーション)を通じたサービスの効率化・質の向上が課題となっています。

マイナ保険証は、国民の皆様がこの医療DXのメリットを最大限享受するためのパスポートです。マイナ保険証を利用することで、皆様一人一人のデータに基づくより質の高い医療を受けることができるようになります。

国民の皆様に安心してマイナ保険証を利用いただけるよう、これまでに全ての登録データ(1.6 億件)について住民基本台帳データとの照合が完了し、必要な確認も終了しました。また、今後の新規加入者に関する全てのデータについてのチェックシステムが5月7日から稼働します。

健康保険証の新規発行が終了し、マイナ保険証を基本とする仕組みに移行する本年12月2日に向け、一人でも多くの国民の皆様に安心してマイナ保険証を利用いた

くべく、本年5月から7月までを「マイナ保険証利用促進集中取組月間」と位置付け、ここに、マイナ保険証利用促進宣言を行います。

マイナ保険証利用促進宣言

私たちは、より質の高い医療の実現のため、一人でも多くの国民の皆様にマイナ保険証のメリットを実感して利用いただけるよう、医療機関・薬局、保険者、事業主、行政など、医療に関わる全ての主体が一丸となって、マイナ保険証の利用促進に取り組みます。
・ 国においては、医療DXの推進に向け、率先して、国民の皆様に安心してマイナ保険証を利用いただけることや、マイナ保険証のメリットを分かりやすい形で発信するとともに、医療界、経済界、保険者等の取組を支援します。
・ 医療機関・薬局においては、データに基づくより質の高い医療の実現に向け、受付事務を点検し、窓口等で積極的にマイナ保険証の利用を呼びかけるなど、利用率の向上に取り組みます。
・ 保険者においては、加入者に対してマイナ保険証の利用を呼びかけるとともに、新規加入者が速やかにマイナ保険証を利用できるよう、事業主による届出から5日以内の迅速かつ正確なデータ登録を徹底します。
・ 事業主においては、職場を通じて従業員と家族にマイナ保険証の利用を呼びかけ、また、新規資格取得者が速やかにマイナ保険証を利用できるよう、マイナンバーの提出や資格取得から5日以内の届出を徹底します。

令和6年4月25日
日本健康会議


内藤剛志さんと武見厚労大臣が〝マイナ保険証強化月間〟をアピール

宣言後、強化月間に行われるマイナ保険証利用促進PR動画の上映とトークセッションが行われた。トークセッションにはPR動画に出演した俳優の内藤剛志氏と武見厚労大臣が登壇し、PR動画の収録秘話から、内藤氏が実際にマイナ保険証を使った体験について話が繰り広げられた。

(左より)内藤さん、武見厚労大臣

武見厚労大臣が「ドラマの刑事役などで、こわもて的な役割をされている内藤さんが、動画ではなじみやすい存在として分かりやすくお伝えしてもらいました」と感想を話し、「内藤さんはマイナ保険証をすでにお持ちだと聞きました。今は医療機関の顔認証付きカードリーダーでも保険証利用の登録ができますが、どのように登録されたのですか」と問うと、内藤さんは「私はスマホのマイナポータルアプリから登録しました。医療機関での登録は時間がかかるのでは、というイメージがあったので、そんなに簡単に登録できることに驚きました」とマイナ保険証登録のスムーズさを紹介。

また、内藤さんは「私は俳優なので、喉の調子が悪い時に病院と薬局でマイナ保険証を使いました。病院窓口の受付もスピーディでしたし、薬局では薬の飲み合わせについてすぐ把握できました。今まではお薬手帳を持っていきましたが、マイナ保険証になればいずれ必要なくなるということですね」と話し、武見厚労大臣は「そのとおりです。本人はもちろん病院や薬局にとっても便利になる、医療をパワーアップするシステムです」と説明した。

武見厚労大臣は「来年には病院・クリニックでの電子カルテが全国標準化されたアプリが配布され始めます。そうすると例えば旅先で調子が悪い場合、今までかかったことのない医療機関でも、既往歴といった医療データを基に適切な医療が受けられるようになります。薬の飲み合わせなど、これまで状況把握に時間がかかっていたものを、デジタル化のパスポートとして運用できます。さらに今後は全国的にデータを集約し、新薬の開発や、先のコロナ流行時のPCR検査の例のように、陽性・陰性の動向や感染症流行の傾向といったデータベース化が劇的な速度できるようになり、治療の効果が可視化できます」とマイナ保険証導入で得られる国益について述べ、「これは日本の医療を先に進めるためだけでなく、世界の健康にも役立てることができるでしょう」と話した。

トークショーを終えた内藤氏は「医療DXと聞くと壮大な話に感じましたが、実際に使ってみるとその便利さに驚きました。マイナ保険証は新しい医療のパスポートになるのですね」と納得の表情を浮かべていた。


日本健康会議とは
日本健康会議は国民一人ひとりの健康寿命延伸と適正な医療について、民間組織が連携し行政の全面的な支援のもと、実効的な活動を行う組織。