皆さんこんにちは。帝京平成大学の小原道子です。
今回より「放課後講座」と題して「臨床介護の近未来」をテーマに様々な視点から、地域の現状と課題の共有、そして近未来へのタネの蒔き方についてお伝えしていきたいと思います。よろしくお願い申し上げます。
さて、「臨床介護学」という単語はご存じでしょうか。実はこのような学問は未だに存在しません。その「臨床介護学」という響きは、在宅訪問薬剤師を行ってきた私の経験の中から生まれた言葉です。
薬や治療などの医療支援ではないけれど、「患者さんが疾病を抱えながら暮らすときに役に立つ知識や視点、実際の手技、製品または情報を学修すること」であると思っています。
私が思う「臨床介護」の事例として一つご紹介したいと思います。
先日患者さんを訪問している歯科衛生士の方と話をする機会がありました。彼女が座るテーブルにスナック菓子を出したところ、「これを見るとお菓子とは思えないのよね」と言いだしました。
ご存じの方も多いと思いますが、口腔機能のリハビリを行う際には、スナック菓子やするめなどのお菓子を用いるケースもあります。テーブルに出したスナック菓子が、まさにちょうどよい硬さと大きさで、咀嚼の練習には欠かせないと話していました。確かに噛んでみるとサクサクッと良い音が響きます。
そのスナック菓子はとても馴染みのある味で、経済的にも優しく、製品が誕生してすでに数十年がたちます。当時の開発者は、口腔機能を改善するためのリハビリでこの製品が使用されることになるとは、夢にも思わなかったと思います。
私が訪問薬剤師を始めた時代から数えると、すでに4半世紀以上が経過しました。
当時は(あと何十年仕事をするのだろう)と先が見えない不安を感じたこともありましたが、いつの間にかやめられない、止まらない日々を過ごしております。
本連載では、地域で暮らす、自宅で暮らすためのサポートについて、様々な角度から応援するためのノウハウを掲載したいと考えています。
小原 道子さん プロフィール
<主な学歴>
1989 東北薬科大学薬学部薬学科卒業
2020 岐阜薬科大学 博士「薬学」取得
<主な職歴>
1989~仙台赤十字病院入局
1995~宮城県栗原地区にて在宅訪問薬剤師業務を開始
2009~ウエルシア関東(現ウエルシア薬局)株式会社入社
2017~岐阜薬科大学地域医療薬学寄付講座 特任教授
2019~日本ヘルスケア協会理事(現任)
2021~帝京平成大学薬学部 社会薬学教育研究センター 実践地域連携ユニット教授
帝京平成大学大学院 薬学研究科薬学専攻教授(何れも現任)
2021~日本臨床栄養協会 評議員(現任)
2022~日本口腔ケア学会 評議員(現任)
2022~日本老年薬学会 評議員(現任)
著書:地域包括ケア タネの撒き方・育て方
専門分野:在宅医療、地域包括ケア、臨床介護学
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