ヘルスケア情報サイト「Hoitto! ヘルスケアビジネス」(ヘルスケアワークスデザイン株式会社)

【太陽化学】グアーガム分解物の最新研究結果を学術誌で発表

認知機能、睡眠の質に加え「活気・活力・気分」への有効性を確認

太陽化学と、京都府立医科大学寄附講座「生体免疫栄養学講座」の内藤裕二教授らによる研究グループは、健常高齢者の認知機能および睡眠の質に対するグアーガム分解物の有効性について検証し、学術誌「Nutrients」に発表した。検証の結果、グアーガム分解物の摂取は認知機能(視覚記憶力)、睡眠の質(起床時の眠気)への有効性が明らかになり、さらに気分にも好影響を与える可能性が示された

1. 研究背景

近年、世界中で高齢化が進行しており、高齢化に伴う認知機能の低下が深刻な社会問題となっている。
認知機能の低下に関する詳細なメカニズムはまだ完全には解明されていないが、脳の酸化ストレス、炎症、神経伝達物質の変化、脳内の変異タンパク質の蓄積などが関与するとされている。
脳と腸の相互作用も注目されており、腸内細菌は短鎖脂肪酸※1、アミノ酸代謝物、神経伝達物質など、さまざまな物質を介して脳機能に影響を及ぼすことから、認知機能にも影響する可能性が示されている。
このため、腸内細菌叢※2を健全に保つプロバイオティクス※3プレバイオティクス※4による認知機能への有効性が期待されている。

グアーガム分解物(PHGG:Partially Hydrolyzed Guar Gum)は、グァー豆から作られた水溶性食物繊維。
これまでにさまざまな研究で優れた腸内環境改善作用が示されており、健常成人を対象とした臨床試験において、睡眠の質や意欲など、メンタルヘルスへの有効性も明らかになっている。
そこで、研究グループは健常高齢者に対するPHGGの認知機能やメンタルヘルスへの有効性について検証を行った。
(参考記事:クローズアップ企業「太陽化学」③「最新腸活トピックス2024」レポート

2. 研究方法

66名の健常な高齢者をプラセボ※5群(PHGG非摂取群)、PHGG 5g/日摂取群(PHGG群)に分け、ランダム化二重盲検プラセボ対照並行群間試験※6を実施した。
被験者にはプラセボもしくはPHGGを12週間毎日摂取させ、摂取前、8週間後、12週間後に、認知機能検査、メンタルヘルス(睡眠の質および気分)に関する主観的評価を実施した。

3. 主な研究結果

PHGG摂取群ではプラセボ摂取群と比較して、認知機能検査における視覚記憶力スコアと、メンタルヘルスに関する主観的評価のうち、睡眠の質の評価における起床時の眠気スコアが有意に改善した。
気分に関しては群間有意差は見られなかったが、PHGG群では摂取前と比べて摂取後は活気や活力のスコアが有意に向上し、混乱と当惑のスコアが有意に低下。一方、プラセボ群では摂取による有意な変化はみられなかった。

4. 考察と今後の展望

本研究ではPHGGの摂取により健常な高齢者の認知機能、特に視覚記憶力が良好に維持される可能性が示された。
記憶力は日常生活や社会的交流において重要な役割を果たし、高齢者が自立した生活を維持する上で欠かせない機能といえる。加えて、本研究ではPHGGの摂取による睡眠の質や気分への有効性も示され、PHGGが高齢者の活動的で質の高い生活に寄与することが期待される。
今後は、より大規模で、詳細なメカニズムの解明を含む、さらに包括的な研究が望まれる。

内藤裕二教授

■発表雑誌
雑誌名:「Nutrients」
論文名:Effectiveness of Partially Hydrolyzed Guar Gum on Cognitive Function and Sleep Efficiency in Healthy Elderly Subjects in a Randomized, Double-Blind, Placebo-Controlled, and Parallel-Group Study
著者:Aya Abe, Mahendra P. Kapoor, So Morishima, Makoto Ozeki, Norio Sato, Tsuyoshi Takara, Yuji Naito,

<URL>https://www.mdpi.com/2072-6643/16/8/1211


用語説明

食物繊維やオリゴ糖などを腸内細菌が発酵してつくる酢酸・プロピオン酸・酪酸などの有機酸。消化管のエネルギー源となり、バリア機能を強化し、消化管の運動を調節するなど、腸内環境の維持に重要な役割を果たす。また、全身のエネルギーとして使われたり、免疫を調節したりとさまざまな機能を有する。

ヒトの腸内に存在する細菌の集合体をあらわす。数百種類にもおよぶ多種多様な細菌が共存し、あたかも1つの生態系のように相互作用しあう様子を自然界の花畑にたとえ、腸内フローラと呼ばれることもある。

腸内細菌叢のバランスを改善することによって宿主に好影響を与える生きた微生物、いわゆる善玉菌。

食物繊維やオリゴ糖など、善玉菌のエサとなり、それらを増殖させることにより宿主に有益に働く食品成分。

見た目や味などは試験食品と区別がつかないが、機能性成分を含まない食品。「試験食品を摂取した」という行為が精神的に作用し、効果をもたらすことがあり、これをプラセボ効果という。この影響を排除するため、試験食品の有効性検証には、プラセボとの比較が一般的とされている。

被験者をランダムに異なる群に割りつけ、各群にプラセボか試験食品を一定期間摂取させ、各群の有効性や安全性を比較する試験。被験者、評価者の両方が、プラセボと試験食品がどの群に割りつけられているかを知らない状態で実施する。被験者および評価者の思い込みや先入観の影響を排除することが出来る、質の高い試験とされている。