一般社団法人日本チェーンドラッグストア協会(JACDS)は2月22日(金)に都内で定例合同記者会を開催し、2024年元旦に起きた能登半島地震の被災地支援活動を報告した。JACDSが行った支援は「物資支援」「人材派遣支援」「金銭的支援」の3つに及んだことを明らかにした。特に「人材派遣支援」では一週間で延べ77人が参加し、薬剤師、医薬品登録販売者といった「ドラッグストアの専門家」が現地に赴き支援の前線に立った。(記事・写真=中西陽治)
記者会冒頭でJACDS会長の池野隆光氏は能登半島地震をひとまず振り返り「災害時はいつもそうだが、起こる土地、人、環境が常に違い、特に今回は立地的な障害もあり、人的・物資的な支援に時間がかかった。その中においても今回は人的・物資的な支援にJACDSが関われたことは大きい。被災地支援が一巡したが、厚労省とともに次なる支援にあたる」と話した。
「物資支援」は厚労省、日本薬剤師会のサポートを受けた石川県薬剤師会と連携し、1月2日にはOTC 医薬品仕分け拠点へのOTC医薬品・衛生用品など必要物資の手配、搬送がスタート。拠点でウエルシア薬局、クスリのアオキ、協力メーカーのスタッフによる「薬箱」が作成され、1月10日に避難所364か所に2箱ずつ、延べ728箱が搬送された。(参考:JACDS加盟の薬剤師、登販が避難所にOTC医薬品を供給)
JACDS事務総長の田中浩幸氏は「災害発生が元日ということもあり、JACDS事務所ではなく協会加盟の各個人の携帯に厚労省から医薬品・衛生用品の提供依頼があった。発生当時の避難所の把握ができない状況にありながら、仕分け拠点の倉庫で夜中まで『薬箱』を梱包しつつ、次第に明らかになった364か所の避難所にどう送るかを検討した」と現地の混乱とその中での支援スタッフの努力を振り返った。
「物資支援」が始まると同時に、「人材派遣支援」が始まる。ポイントは、厚労省、JACDS、石川県薬剤師(日薬のサポート)で医薬品・衛生用品の供給と情報提供をどのようにチーム編成するかのスキームを作成。薬剤師と医薬品登録販売者がグループとなり配給し、現地で相談を受ける体制を整えた。災害時に医薬品登録販売者が薬剤師とともに相談応需するマニュアルで活動を共にするのは初めてのこと。
「人材派遣支援」1月13日~24日の7日間で、薬剤師46名、医薬品登録販売者31名の延べ77人が参加。JACDSから加盟企業にボランティア活動として呼びかけ、個人の手上げ申請で参加を把握した。
【人材派遣支援】の状況
第1弾
日程:1月13日(土)、1月14日(日)
参加:38名(薬剤師28名、医薬品登録販売者10名)
訪問先:輪島、珠洲、能登、穴水の各市町の避難所
支援内容:OTC配送、避難所管理者確認、相談応需、医療ニーズ確認
第2弾
日程:1月19日(金)、20日(土)、21日(日)
参加:31名(薬剤師12名、医薬品登録販売者19名)
訪問先:輪島、珠洲、能登、穴水の各市町の避難所
支援内容:避難所管理者確認、医薬品情報提供、相談応需、医療ニーズ確認
第3弾
日程:1月23日(火)、24日(水)
参加:8名(薬剤師6名、医薬品登録販売者2名)
訪問先:志賀、七尾、中能登、羽咋の各市町の避難所
支援内容:OTC配送、避難所管理者確認、医薬品情報提供、相談応需、医療ニーズ確認
なお第4弾(1月25日~28日)の「人材派遣支援」は中止・延期となったが、ボランティア活動に手を挙げた薬剤師と医薬品登録販売者は延べ24人にも上り、実現していれば100人を超えるドラッグストアの専門家が被災地支援に手を挙げたことになる。
「人材派遣支援」では364か所の避難所全てに赴くことが出来なかったが、その際に「薬箱」にQRコードを添付し情報提供を行い、その後の相談応需には石川県のドラッグストアであるコメヤ薬局の相談窓口を記載し、電話応需できる体制を整えている。
なお「金銭的支援」はJACDS会員企業に呼びかけ、被災地支援募金を3月30日まで実施中で、集まった浄財は日本赤十字社に寄付し、被災地に送られる。JACDSでは4月以降に目録を日本赤十字社に持参する予定。
(取材メモ)
道路が細い地理的要因、降雪という環境的要因もあり、これまでの災害支援とは違った対策が求められた能登半島地震。
その中でドラッグストア薬剤師、医薬品登録販売者から100人を超えるボランティアの手が挙がった。医薬品登録販売者が、OTC医薬品の情報提供および相談に応じる立場として被災地に立ったことは画期的なことであり、セルフメディケーションの担い手として、ドラッグストアに欠かせない専門家であることを示した出来事だ。