――施設在宅の拡大は、薬局にとって成長機会である一方で、患者紹介と経済的便益が結び付けば、保険調剤の公平性は揺らぐ。
厚生労働省保険局医療課が6月23日付で出した事務連絡は、高齢者施設等を対象とする保険調剤の営業慣行に対し、行政が改めて線を引いたものだった。
通知は、介護老人福祉施設、介護老人保健施設、介護医療院、サービス付き高齢者向け住宅、有料老人ホームなどを「高齢者施設等」と整理。その上で、これらの施設に入所・入居する患者の保険調剤を応需する見返りとして、一部事業者が保険薬局に金品等の提供を要求した事例が報告されているとした。
厚労省は、保険薬局が施設側からの要求に応じたり、施設側に金品等を提供したりする行為について、患者紹介の対価であることを否定できない場合は、患者を紹介する対価としての「経済上の利益の提供」に該当すると明確化した。問題は、薬局側の過剰営業だけではない。施設側が入居者の処方箋をまとめて扱う立場を背景に、薬局へ負担を求める構図も生じ得る。今回の通知は、その関係性に対する警告でもある。
具体例として、金銭の供与に加え、服薬管理指導業務と明らかに関係のない物品やサービスを、保険薬局の負担で無償または安価に提供・貸与する行為を挙げた。6月23日以降、保険薬局が新たに費用負担したり、継続的に費用負担したりする場合に該当するものとして、配薬カートや調剤棚など施設に備え付ける什器、施設職員による配薬支援システム、入居者見守りシステム等の導入・利用を示した。
一方で、患者個別に用意する服薬カレンダーや服薬ボックス等については、薬剤師が服薬管理指導業務の一環として必要と判断した場合、経済上の利益提供には該当しないとした。線引きは、患者個別の薬学的管理に必要なものか、施設運営や施設職員の業務を支えるものかにある。
高齢者施設調剤は、薬局チェーンにとって重要な成長領域である。外来処方箋枚数の伸びが限られる中で、在宅対応や施設対応を強化する動きは今後も続く。ドラッグストア各社も調剤併設を進め、地域包括ケアや在宅医療への関与を広げている。
だからこそ、営業上の便益提供が常態化すれば、薬局選択の基準が薬学的管理の質から外れていく危うさがある。施設側にとって都合の良い設備やシステムを負担してくれる薬局が選ばれるようになれば、患者本位の薬局選択という保険調剤の原則は揺らぐ。今回の通知は、薬局と施設の関係を「営業取引」ではなく「医療提供」の枠内に戻すための再整理である。